高校バスケ部顧問「シュートするな」の“理不尽” 女生徒が訴えた「パワハラ」指導とは?

林 孝匡

林 孝匡

高校バスケ部顧問「シュートするな」の“理不尽”  女生徒が訴えた「パワハラ」指導とは? 女子生徒には精神的なショックによる「自律神経失調症」の診断も(YsPhoto/PIXTA)

安西先生!
バスケ部で事件発生です!

今回は高校のバスケットボール部で起きたトラブルです。
部所属の女子高生が、県を訴えました。

女子高生の言い分は、バスケ部のコーチから「コートの中で動くな」「シュートするな」という理不尽な指導を受けたというもの。身長が低いとの理由でこのような指導を受けたようです。安西先生からは絶対に出てこない言葉ですね。

ニュースの内容と、過去の部活パワハラ裁判例(70万円の慰謝料)などもお届けします(弁護士・林 孝匡)。

提訴の内容

女子高生は山形の県立高校のバスケ部に所属していました。

提訴した理由は、外部コーチからパワーハラスメント行為によって精神的な苦痛を受けたというもの。具体的には、コーチから「コートの中で動くな」「シュートするな」という理不尽な指導を受けたと主張。身長が低いとの理由でこのような指導を受けたようです。

女子高生は精神的なショックを受け、昨年11月に自律神経失調症と診断されたようです。

報道によると女子高生は、昨年の11月30日、県を相手取り慰謝料など330万円の損害賠償を求めて提訴しました。

ポイントになりそうなところ

裁判でポイントになりそうなところは、その指導やりすぎじゃねーか?ってところです。
裁判で使われる表現を用いれば、

  • その指導に客観的な合理性・相当性があるか?
  • 指導者としての裁量の範囲を逸脱していないか?

が審理されると思います。

過去の裁判例

過去に部活顧問の指導がアウトとなった事件があるので紹介します(大阪地裁 H29.6.13〈判例タイムズ1451号 p.223〉)。

高校の空手道部で起きた事件です。その高校は空手道の強豪校でした。
部活の顧問は空手道界で絶大な影響力を持っていた人物でした。経歴としては、元世界王者で、ナショナルチームのコーチを長く務め、高校の監督としても全国制覇の実績がありました。おいおい、こんな人物が顧問とか怖すぎです。もはや旧日本軍のトップレベル。誰も口答えできないような絶望的状況だった思います。

裁判所が「この指導アウトね」と判断したものは以下のとおりです。

  • 練習参加の禁止
  • インターハイ予選・本戦での差別的取り扱い
  • 退部届の強要

など。

裁判所は「これらの行為は客観的な合理性・相当性を欠くものであって、部活動の顧問(監督)としての裁量の範囲を逸脱する違法な行為に当たると評価せざるを得ないから、不法行為に当たる」と判断しました。そして顧問と学校に対して、70万円の損害賠償を支払えと命じました。

この裁判に照らしてみてれば、今回のバスケ部の事件も「その指導やりすぎじゃねーか?」が審理されると思います。「コートの中で動くな」「シュートするな」との指導はコーチの戦略に基づいたもので客観的な合理性・相当性があったのか? 指導者としての裁量の範囲内といえるのか? それとも・・・ただの嫌がらせだったのか? などについて攻防が繰り広げられると思います。

学校の対応

さらに女子高生は、学校の不適正な対応も問題にしているようです。

報道によると「学校側が適切に調査、対応しなかったことで他の部員の誤解を招き、部内のいじめにも発展した」とも主張しています。

学校はキチンと対応する必要があります。具体的には、生徒や保護者から被害の申告を受けた場合、コーチや部員に聞き取るなどして当該指導の有無を調査し、その正当性を吟味した上で、生徒らに報告するともに再発を防止する一般的な義務を負っています。

なので、今回の事件で、学校が何ら対応をとっていなかったり、対応したとしてもずさんであったとすれば安全配慮義務違反が認定されるかもしれません。

スポーツなどで暴力・暴言を受けていたら

昭和の頃は「練習中は水を飲むな」とか当たり前でしたよね。今は完全にアウトローな指導です。元プロ野球選手の清原さんが話してたと思うんですが、PL高校時代、水を飲みたすぎて、わざと球場外にボールを探しに行って地面の「泥水」を飲んでいたらしいです・・・。

顧問のパワハラ指導を立証するには録音が最強なんですが、練習中にスマホを持てないですよね。なので、部員に証言してもらう・・・ことも難しいかもしれませんね。鬼軍曹(顧問) からの報復を恐れて。方法としては、学校に申し出る、OB・OGなどに連絡をとるなどがあります。行きすぎた指導を問題視している方もいらっしゃるので探してみるのも方法です。

あとは、JSPO(公益財団法人日本スポーツ協会)へ相談してみましょう(webからでも相談できます)。スポーツなどで暴力や暴言を受けている方が相談できる窓口です。昔とは時代が変わっているので「この厳しい指導は当たり前だよね・・・」というものがパワハラと認定される可能性もあります。一度、相談してみてください。



【筆者プロフィール】
林 孝匡(はやし たかまさ)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
HP:https://hayashi-jurist.jp Twitter:https://twitter.com/hayashitakamas1

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

この記事をシェア

ユーザーのコメント