自宅に積もった“雪”「道路に出す」はNG? “やってはいけない”「雪かき」のルール

昨年末にはクリスマス寒波が襲った日本列島。日本海側を中心に、愛知県や高知県などでも積雪が観測された。
“雪”のイメージは居住エリアにより大きく異なるが、消防白書(2020年版)によれば、過去10年間(2010年11月~2020年3月)の雪による犠牲者は803人にも上り 、積雪量の多い地域にとって雪は、命にかかわる問題といえるだろう。
雪崩や落雪、雪の重みによる家屋倒壊など、雪が原因の被害は「雪害(せつがい)」と呼ばれる。雪害の中でも特に被害が多いのは、雪下ろしのために登った屋根から転落する事故や、除雪機を使用した際の事故など「除雪作業中の事故」だ。2018年11月から2019年5月の雪害による死者40人は、全員が「除雪作業中の事故」によって命を落とし たというデータもある。
スマホは必ず携帯して!
「除雪作業中の事故」の多発を受けて国土交通省では、「雪下ろし安全10箇条」 を提唱している。

「除雪作業は必ず2人以上で行う」、「携帯電話を“携帯”する」、「屋根など高所に登る際には安全な装備やはしごの固定を徹底する」こと、さらには屋根から落ちてしまった時に備え、「周囲に雪を残しておく」ことなどが挙げられている。
これらは、主に豪雪地帯で安全に除雪作業を行うための注意事項だが、都市部の降雪時にも共通するルールがある。
雪かき中に「やってはいけない」こと…
たとえば、「自宅の敷地に積もった雪を道路に出す行為」は禁止されている。

道路交通法及び施行細則で、「みだりに交通の妨害となるように道路にどろ土、雪、ごみ、ガラス片その他これらに類する物をまき、または捨てる」行為はしてはならないと定められているためだ。
北海道出身で、現在も札幌の法律事務所に勤める村田涼弁護士は、雪を道路に捨てる行為は道路交通法だけではなく、道路法に違反する可能性もあると指摘する。
「道路法では『みだりに道路に土石、竹木などの物件をたい積し、その他道路の構造または交通に支障を及ぼす虞(おそれ)のある行為をすること』をしてはならないと定められています。条文に『雪』という文言はありませんが、道路に雪を捨てる行為は、『交通に支障を及ぼす虞のある行為』に該当する可能性があります」(村田弁護士)
また、マンホールや河川に雪を捨てることも「やってはいけない」。
村田弁護士によれば、「そもそもマンホールを勝手に操作すること自体にも問題が生じる」が、万一、マンホールを開けて雪を捨てた場合には「下水道法の『下水の排除を妨害した者』に該当し罰則を受ける可能性がある」という。同様に河川に雪を捨てた場合は、河川法施行令違反となる可能性がある。

「道路交通法、下水道法、河川法施行令に はそれぞれ罰則も定められています。また、他人の土地に勝手に雪を捨てることも、当然トラブルの原因となりますので、かいた雪は、自宅の敷地内に置いておき、雪がとけず減らない場合などは『排雪業者などに依頼して雪を運んでもらう方法』が、紛争や罰則を回避できるため望ましい手段と考えます。
豪雪地帯にある私の親戚の家では、移動式融雪機を使用し、雪を捨てる場所という問題を回避しています」(村田弁護士)
都市部での雪かきは?
都市部では、晴れの日が続けば雪はとけてなくなるため、わざわざ融雪機を準備したり、排雪業者に依頼したりする必要はないだろう。しかし、とけるまでの間、かいた雪はどうしておくべきなのか。
東京都小平市の道路課では、雪かきの方法として下記3点を挙げる。
- かいた雪は、できるかぎり歩行者や車の通行の支障にならない場所へ置いてください。
- 消火栓や横断歩道には雪を置かないでください。
- 路肩の集水ますのふたが見えるようにしておくと、流れができてとけやすくなります。
その上で、雪かきで生じた雪がどうしても市道の通行を妨げてしまう場合などには、市で対応しているという。「駅前や坂道など、人の往来が多いところや危険な箇所については、除雪するなどの対応をしています」(小平市道路課の担当者)。
雪かき中にケガをしないために…
都市部に住む人たちにとっては、1年に一度行うかどうかという「雪かき」。雪かきに精を出した結果、翌日は筋肉痛で動けないといった経験をしたことがある人もいるのではないだろうか。また、昨年のクリスマス寒波のように、めったに雪が降らない地域では、そもそも「雪かきのやり方がわからない」という人も多いだろう。
実際に、クリスマス寒波が訪れ記録的な積雪となった高知県の住民が、人気アニメ映画『もののけ姫』のシーンをなぞって「雪かきの知恵を借りたい!」というツイートを投稿し、12万件を超えるいいねがついた例もある。
我らは高知県民!雪など積もらぬ土地に生きる民。雪を知らぬ民。雪かきを知らぬ民なのだ!
— 土蛇尚 (@tutihebi_nao) December 23, 2022
雪降る地の民に教えを請いたい。雪かきとは如何にするものか!
我らは高知県民。できれば急ぎである!
雪かきの知恵を借りたい! pic.twitter.com/yOrZWk1d3y
「雪みちでの転倒防止活動等に関する普及啓発および調査研究」を行うウインターライフ推進協議会では、雪下ろしなどの作業に比べれば危険の少ない“雪かき”についても、「重労働で、ケガも伴う」として「雪かき10箇条」を紹介している。

例年、雪かき作業をしているという村田弁護士も、雪かきは「体力勝負」だという。
「雪の状況にもよりますが、湿った雪だと重さもあり、豪雪地帯となれば除雪作業には特に時間がかかります。体を守るため、体の一部に継続的に負担がかかってしまうことを避けましょう。
たとえば、雪を少量ずつ運ぶようにしたり、腕だけではなく全身を使って、腕に負担を集中させないようにしたり、腰への負担を避けるために前傾姿勢での作業を続けないようにするといった方法が有効だと思います。また、休憩を挟みながら作業を行うことも重要です」
「寒の入り」を迎え、これからが冬本番となる日本列島。気象庁は今年1月から3月の気温について、北海道・東北地方は“例年並み”、それ以外の地方は“例年より寒い”と予測している(2022年12月20日発表)。普段雪が降らないからと油断せず、雪かきの心構えをしておきたい。
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