箱根駅伝3年ぶり沿道観戦“解禁” 観客が「やってはいけない」応援方法とは?

弁護士JP編集部

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箱根駅伝3年ぶり沿道観戦“解禁”  観客が「やってはいけない」応援方法とは?
3年ぶりに沿道観戦が解禁された2023年。どんなドラマが生まれるのか…(RewSite/PIXTA)

いよいよ第99回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が、2023年1月2日から3日にかけて開催される。

現地に足を運ぶファン、家族と一緒にテレビの前、SNSでみんなと盛り上がりながら…駅伝の応援スタイルはさまざまだが、“やってはいけない”応援方法があることは知っているだろうか。

コース乱入で逮捕者も…箱根駅伝のヒヤリ場面

たとえば、駅伝のコースを横切るなどの行為は道路交通法で禁止されている。車なら『3か月以下の懲役または5万円以下の罰金』、歩行者でも、『2万円以下の罰金または科料』に処せられる可能性がある。

35年前の第63回大会(1987年)では、コースに男性が乱入し、9区をトップで走っていた順天堂大学の選手と並走するという珍事も起きた。しかもこの男性、あろうことか警察官から逃げる際、選手に接触し転倒させてしまったのだ。暴行の現行犯で逮捕された男は「興奮して目立とうと思い、並走してしまった」として謝罪した。幸い、選手は無事に走り切れたが、危険極まりない行為である。

また、第86回大会(2010年)では、山下りの6区で他校とデッドヒートを繰り広げていた中央大学の選手が、カーブを曲がる際にバランスを崩し転倒するというアクシデントも発生。選手は沿道から身を乗り出すファンか、応援の旗を避けようとしていたと言われている。こちらも“たすき”はつながったが、ファンの応援が選手の怪我を招いては元も子もない。

公共物に“のぼり”をくくりつけたらNG

選手に危険が及ばないよう、箱根駅伝では、「応援に関するお願い」をホームページ上で公開している。

箱根駅伝HP「交通規制・沿道での応援に関するお願い」(https://www.hakone-ekiden.jp/regulation/)より

最新(2023年版)のものには、『脚立を使っての応援・車両による応援の禁止』や、『ペットに関する注意』などが書かれている。中でも、太字に波線がひかれ、強調されているのは「横断幕、旗、のぼり等をガードレールや橋などの沿道公共物へくくりつける行為は道路交通法等に違反します」の部分だ。

出身校の“稲門”早稲田大学を応援する横井浩平弁護士によれば、駅伝コースのある東京都と神奈川県の交通規則では、それぞれ下記のように禁止事項が定められており、横断幕やのぼり等をくくりつけることで道路交通法などの法律に違反してしまう可能性があるのだという。


道路における電柱、変圧塔その他の工作物に、信号機もしくは道路標識の効用を妨げ、または車両等の運転者の安全な運転を妨げるおそれのあるような方法で広告の類いを表示すること
(東京都道路交通規則17条)
信号機または道路標識の設けられた場所の付近にこれらの識別を困難にするような広告物または印刷物をみだりに掲出すること
(神奈川県道路交通法施行細則16条)

大会側がことさら強調して注意を呼び掛けているのは、応援のための横断幕やのぼりを公共物にくくりつける人が多いという表れでもあるだろう。道路交通法違反が認められた場合は、「5万円以下の罰金が科される」(横井弁護士)といい、安易な気持ちで“やってはいけない”応援方法だ。

手を差し伸べてもNG!

また、チラシには「法律に違反する」とまでは書かれていないが、ドローン・ラジコン・自撮り棒の使用などでも、法律に抵触すると横井弁護士は続ける。

「東京都でも神奈川県でも、〈みだりに物件(※)を道路に突き出す〉ことを交通規則で禁じていますので、やはりドローン・ラジコン・自撮り棒の使用でも、道路交通法に違反するおそれがあります。

(※)この場合、ドローン・ラジコン・自撮り棒などを指す。

他にも、応援がエスカレートしてタオル・ドリンクなどを投げ込んだ場合も罰金が科される可能性がありますし、SNSなどに選手の誹謗中傷を書き込んだ場合は、侮辱罪や名誉毀損罪に問われる可能性もあります」(横井弁護士)

さらに、目の前で選手が転倒した場合についてもNG行動がある。駅伝ファンには有名な話だが、ズバリ「助けてはいけない」のだ。

目の前で選手が転倒すれば、思わず手を差し伸べたくなる気持ちもあるだろう。怪我などをしていればなおさらだ。

しかし、箱根駅伝の実施について定める「東京箱根間往復大学駅伝競走に関する内規」には、「競技者は理由のいかんを問わず、競技中いかなる人の手助けを受けても失格となる。ただし、本大会医務員が触診のために競技者の身体にふれても、手助けとはならない」(第5章第15条)と書かれている。

日本陸連も「日本陸上競技連盟競技規則」の「駅伝競走規準」において、「競技者が走行不能となった場合、すなわち、歩いたり、立ち止まったり、倒れた状態になったときは、役員、チーム関係者等によって、道路の左端に移動させなければならない」(第5条)と定めており、いずれもコース上の選手の身体に触れていい人が決められているのだ。観客は倒れた選手が心配でも、ぐっと堪えるしかない。

声を出す応援も今年はNG

沿道に掲示されている注意看板(イシテツ/PIXTA)

3年ぶりに沿道での応援が解禁された今年。関東学生陸上連盟は沿道の観客に向けて「マスクを着用し、周囲との距離を確保してください。声を出しての応援はお控えください」と要請している。

沿道には「歩道橋上での観覧」を禁ずる看板が、警察から掲示されている場所もある。その場のルールに従って、観客自らが事故なく安全に観戦することも、箱根駅伝のスムーズな実施には重要だ。

選手たちがベストを尽くせるよう、法律やルールを守って駅伝を楽しみたい。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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