一般道194km“暴走”で男性死亡させた元少年「過失」から「危険運転」へ訴因変更…元検事「珍しいケース」

弁護士JP編集部

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一般道194km“暴走”で男性死亡させた元少年「過失」から「危険運転」へ訴因変更…元検事「珍しいケース」
事故発生から約2年、急展開が…(hirohiroo / PIXTA)

2021年2月9日の深夜、大分市内の一般道を時速194kmで走行中に死亡事故を起こし、「過失運転致死罪」で起訴されていた当時19歳の元少年について、大分地裁が「危険運転致死罪」への訴因変更を認めたと報じられた。

「危険」「過失」では罰則が大きく違う

事故当時、市内一般道の交差点を時速194kmで直進していた元少年は、右折してきた車と衝突し、運転していた当時50歳の会社員男性を死亡させた。

毎日新聞の報道によると、2021年4月、大分県警は元少年を「危険運転致死罪」の疑いで書類送検したものの、大分地検は今年7月、罰則がより軽い「過失運転致死罪」で在宅起訴。死亡した男性の遺族はこれに異議を唱え、「危険運転致死罪」の適用を要望する2万8406筆の署名を、10月に地検へ提出していたという。

それぞれの罰則(弁護士JP編集部)

これを受け、大分地検は今月1日、大分地裁に訴因変更を請求。20日に地裁が訴因変更を認めた。

元検事「過失から危険への変更は珍しい」

「危険運転致死傷罪」は、飲酒運転やあおり運転など、故意に危険な運転を行い、その結果人を死傷させた場合に適用される罪として、2001年に設立された。その背景には、幼い姉妹が犠牲になった「東名高速飲酒運転事故」(1999年)、大学生2人が犠牲になった「小池大橋飲酒運転事故」(2000年)の遺族らによる働きかけがある。

しかし、そうした背景がありながら、同罪の適用ハードルは高いと言われているのが現状だ。そんな中、今回「過失」から「危険」への訴因変更に至ったのは、異例と言えるのではないだろうか。

元検事で、交通事故の捜査経験も豊富な若佐一朗弁護士も「比較的珍しいと思います」と驚きを見せる。

「大分地検が訴因変更を求めた理由は明らかではありませんが、起訴後に新証拠が発見されたのならまだしも、そのような証拠がないのに、訴因変更を求めるのは珍しいと思います。起訴する時点で『危険運転』に該当するのではないか、十分検討していると思いますので」(若佐弁護士)

では今回、大分地検はなぜ、訴因変更の請求に動いたのだろうか。

「報道によれば、遺族が提出した署名の結果だと読めますが、もしかすると新証拠が発見されたからなのかもしれません。詳細が公表されていない以上、なんとも言えないのが現状です」(若佐弁護士)

「令和3年版犯罪白書」によれば、交通事件によって通常第一審で懲役または禁錮を言い渡された人の実刑率は「危険運転致死罪」が95.2%、「過失運転致死罪」が6.5%と大きく異なる。元少年が今後、どのような裁きを受けることになるのか、注目だ。

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