「動物扱いされた」東京出入国在留管理局で暴言・暴行を受けたハイチ系米国人男性3000万円の損害賠償請求

弁護士JP編集部

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「動物扱いされた」東京出入国在留管理局で暴言・暴行を受けたハイチ系米国人男性3000万円の損害賠償請求
取り押さえられるゴードンさんが写っている東京入管が開示した静止画像(写真:笹本弁護士提供)

6~8人の収容所職員に抑えつけられた

昨年6月、東京出入国在留管理局(東京入管)で収監中、職員から受けた暴行で重症を負ったとして、11月24日国を相手取り、ハイチ系米国人のマーク・ゴードンさん(52)が3000万円の損害賠償請求を東京地裁に起こした。

訴状などによれば、2018年、ゴードンさんはアメリカから日本へ入国する際、再入国ビザの期限が切れていることを理由に羽田空港で上陸拒否を受け、東京入管(品川)に収容された。

収容中の2020年6月2日午後6時過ぎ、コロナウイルス対策用に配布された石けんの香りが、持病のぜんそくによって受け付けることができずに返却した。職員からそのことに関する別室での話合いの提案があったが、ゴードンさんがそれを拒否。その途端に、6~8人の収容所職員によってその部屋から出され、最終的には保護室に連れていかれた。その際に、職員に首を膝で押さえつけられ、大人しくさせるために、腕を手錠で搾り上げられるように、後ろ手でしめられた。

会見を行ったマーク・ゴードンさん(11月24日霞が関/弁護士JP編集部)

腰の痛みで平均2~3時間しか寝ることができない

その後、腰痛が続いたゴードンさんは、「痛いから検査してほしい」と何度も要求したが、あたえられるのは痛み止めの薬だけ。ようやく2021年4月に外部の病院で受診することのできたMRI検査では、尾骨部近くの腰骨が損傷を受けていることが判明。

この件に関しては、職員が職務を行うにあたり違法にゴードンさんに損害を与えたといえ、国には国家賠償責任法1条の責任が成立するとして国家賠償請求を提起した。

コロナウイルスの感染者が所内に発生したこともあり、この5月に約2年半ぶりに仮放免許可を受け釈放されたというゴードンさんだが、現在でも、腰の痛みで平均2~3時間しか寝ることができず、心的外傷後ストレス障害にも悩まされているという。

MRI検査をした際の腰骨画像(11月24日霞が関/弁護士JP編集部)

東京入管は保安上を理由に防犯カメラ映像開示を拒否

ゴードンさんは個人情報として、当時の防犯カメラ映像の開示を要求。当初東京入管は、保護室の固定カメラとハンディカメラ、エレベーター内のカメラの5つの存在は認めたものの、保安上を理由に開示を拒んだ。しかし、暴力を理由とした証拠保全手続きを行い、静止画243枚は用意されたという。

この日会見を行った ゴードンさんの代理人の笹本潤弁護士は「静止画からは暴力のシーンは抜かれている。今回に関しては、映像を公開することによって、保安上困るような合理的な理由はないはず。暴力が行われているシーンが世に出ることを避けるためではないか」と指摘、今後も映像の提出を求めていくとした。

職員に囲まれたゴードンさんが写った東京入管開示の静止画像(写真:笹本弁護士提供)

「金を払え」と言われ続けた

収容中、日常的にも差別的扱いや嫌がらせを受け、「(アメリカに)帰れ、帰れ」、「お金を払わないと暴行するぞ」、「金を払え」とも言われ続けたというゴードンさん。

会見では「職員には動物のような扱いをされた。今でも日に4、5回痛み止めを飲んでいる状態で、腰、肩が常に痛い」と長い時間の歩行が困難だという現在も続く体の不調も訴え、「日本人はそんなこと(暴行・暴言)はしないと知っているが、品川には悪魔がいた。日本が好きで長く住みたいと思っているから頑張っていきたい」と語った。

提訴に関して東京出入国在留管理局は「個別の事案には答えられない」としている。

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