「生徒も保護者も“お客さま”」「1か月休みがないじゃん…」教育現場で疲弊する“20代教員”の憂うつ

弁護士JP編集部

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「生徒も保護者も“お客さま”」「1か月休みがないじゃん…」教育現場で疲弊する“20代教員”の憂うつ “教員=ブラックな職場環境”とのイメージも定着しつつあるが(Yasu / PIXTA)

20代教員に心の病が増加している――

そんな内容の記事が先日、読売オンラインで発信され話題となった。

文部科学省の調査によると、2020年度に精神疾患によって1か月以上休んだ公立学校教員は9452人。そのうち20代は1.43%(2140人)で、2016年度の0.91%(1286人)から1.5倍に増えているという。

背景には、教員不足、団塊の世代の大量退職、保護者対応の難しさ、部活動顧問の強制などがあると言われているが、現場では何が起きているのか。当事者に話を聞いた。

余裕がなく、若手をサポートできない

まず話を聞いたのはSさん(27歳男性)。教員歴4年で、公立小中学校で2年、私立高校で2年勤めた経験を持つ。

Sさんは、20代教員の心の病が増加している背景について、教育現場の「余裕のなさ」を指摘する。

「上の世代の教員もいっぱいいっぱいなので、自分の業務を抱えながら若手のサポートにまで手が回らないのが現状です。

たとえば最近は、成績管理もパソコンのツールで処理している学校が多いのですが、先輩教員も余裕がないために、そういった“新しい仕事”に消極的で、『できる人がやればいい』と若手に丸投げしがちです。また保護者対応にしても、『いい経験だから』と言って若手に押し付けてしまう方もいます。

正直、大学を出たばかりの新人教員がいきなり保護者対応をするのは難しいです。でも、ただでさえ忙しい先輩教員にはアドバイスを求めづらく、いざ聞いても『そんなことも分からないのか』と、サポートを受けられないことも珍しくはありません。

誰もが業務に追われて余裕がなく、『新しいことをしようとしてもできない』という状況に陥っていることが、教育現場の変化を嫌う体質や、『もっと良くしよう』『効率的に働こう』という意識の低さにもつながっているのではないでしょうか」(Sさん)

「こんなことを40年も続けたらおかしくなる」

さらにSさんが指摘するのは、教育現場の「先生の好意に甘える」風潮だ。

「教員の“部活問題”はよく問題視されていますが、土日に大会が重なれば『1か月休みがないじゃん…』なんていうこともあります。他にもテスト、学校説明会、入試、修学旅行の引率など、“プラスαの業務”は多く発生するんです。

結局はお金でしか解決できない問題なのに、それに対する対価がものすごく少ない。『こんなことをあと40年も続けていたらおかしくなってしまう』と思いました」(Sさん)

Sさんは疑問を持ちながらも、生徒の成長に大きなやりがいを感じ、教員を続けていた。しかしベテラン教員から「発言が生意気だ」と生徒の前で暴力を振るわれたことや、学校が暴力を隠ぺいしようとしたことに失望し、教員を辞する決断をしたという。

生徒150人をワンオペで…

一方、最近増えつつある通信制学校では、Sさんが指摘したような“プラスαの業務”は少ないものの、別の問題があるという。昨年まで通信制高校の教員だったHさん(25歳女性)に話を聞いた。

「私が勤めていた通信制高校では、生徒とも教員同士でもチャットツールでやり取りを行っていました。教員1人が150人ほどの生徒をワンオペで対応するので、授業に関する質問から保護者のクレームまで、あらゆるメッセージがひっきりなしにやってきます。

もちろん、勤務時間外や休日には返信をしなくて良いルールになっているのですが、150人の生徒と他の教員からの連絡を休み明けにさばくとなると、常に仕事のことが頭から離れず、気が休まらない状態でした。

結果的に、チャット通知音の幻聴が聞こえるようになり、プライベートでも楽しみだったはずの予定が『楽しい』と感じられなくなってしまったことから、限界を感じ、1年で教員を辞めることにしました。

私は、自分が学生だった頃に学校が楽しくなかったことから『かつての自分と同じような状況にある生徒の力になりたい』という思いで教員になりました。しかし、全日制の学校に移ったとしても、今度は“部活問題”などが出てくるため、今後再び教育現場に戻ろうとは考えていません」(Hさん)

生徒は“お客さま”

また今回、自身の経験を語ってくれたSさん、Hさんが共通で指摘していたのは「教員の立場の弱さ」だ。

最近は生徒一人ひとりの個性を重視する教育が中心になっていることから、教員が生徒を𠮟ったとしても、保護者が「そういう指導は求めていません」と反発してくるケースも珍しくないという。

Hさんは「生徒も保護者も“お客さま”という感覚」と回想し、Sさんは「かつてのような『学校のルールはこれだから』という指導が通用しなくなってきている」と当惑する。

SさんやHさんのように、労働環境の厳しさから教育現場を離れる人も少なくなく、人手不足がさらなる労働環境の悪化を呼んでいるのも問題だ。

「いかに早く相談できるか」が運命を左右する

私立学校で働く教員の労働組合「私学ユニオン」の佐藤学さんは「疑問を感じたら1人で抱え込まず、なるべく早い段階で誰かに相談することが大切です」と指摘する。

「“教員=ブラック”というイメージがこれだけ広まっていても、『教育現場で働きたい』という強い志を持った人はいます。しかし、そういった方たちがどんどんつぶされていくようなサイクルになってしまっているのは、とても残念です。

心を病んでしまったり、身体を壊して退職・休職に追い込まれてしまった人たちにも、もしかすると教員を続けられる道を探せたタイミングがあったかもしれません。

どんなささいなことでもいいので、少しでも違和感を覚えたら、相談窓口や身近な人など、誰かに話をしてほしいです」(佐藤さん)

私立学校の教員は「私学ユニオン」(https://shigaku-u.jp/soudan/)などの外部機関、公立学校の教員は都道府県または市町村の教育委員会に相談窓口が設けられている。

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