スシローのアルバイト学生「未払い賃金」を要求… “着替え”の準備は「労働時間」に入るのか?

林 孝匡

林 孝匡

スシローのアルバイト学生「未払い賃金」を要求… “着替え”の準備は「労働時間」に入るのか? 6月には景品表示に基づく「措置命令」の行政処分も下された(namako/PIXTA)

今年、何度目でしょうか、再びスシローが詰められています。

「アルバイトの手洗い着替えなどの時間分の給料を払っていない」との指摘です。アルバイトの加入する労働組合(首都圏青年ユニオン)が未払い分の支払いを求めており、11月に団体交渉を申し入れました。

スシローと言えば、6月にも「イクラ全然ねーじゃん!」事件で世間を騒がせましたね。ウニ、イクラなど高級ネタの「目玉商品」としてブチ上げたものの、十分にネタを用意しないままキャンペーンをスタートさせ、相次ぐ品切れで来店客をブチギレさせた事件です。

今回は、給料未払いトラブルです。

スシローのアルバイトの方と同様、「タイムカードを押す前に●●をしといてね」と言われている方が多いと思います。そのような方は、「その時間分の給与を請求できる可能性が高い」というのはご存じでしょうか(弁護士・林 孝匡)。

どんなトラブルだったのか

従業員は、タイムカードを打刻する前に、手洗いや着替えなどを済ますように指示されていました。特に、手洗いは、指をこする回数まで指定されていたようです。仕事を始めるまでの準備時間で合計10~15分かかるとのこと。

この準備時間については、スシローはお給料を支払っていませんでした。

15分も、チリツモで膨れ上がりますよね。

10日働いている人であれば、150分=2時間半。仮に時給1000円だとすれば、月に2500円。これをいただければ、毎月うまいランチが食べられます。

ユニオンは、今年8月、運用の変更と未払い分の支払いを要求しました。これに対して、会社は9月、タイムカードを押すタイミングは変えずに、たった3分を勤務時間に加えただけだといいます。

・・・いやいや、15分かかるっつー話です。

準備時間も「労働時間」なのか?

「へい、らっしゃい!」とスシを握ってる時間だけが労働時間じゃありません。仕事を始める前の【準備時間】も、会社から命令されているのであれば労働時間にあたります。厚生労働省のガイドラインで、そのように定められているんです。

ガイドラインによれば、下記の準備時間は労働時間になります。

使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

今回のスシローのケースは、手洗いや着替えなどが義務づけられていたので、私は労働時間に当たると考えます。

そのほか、よくトラブるケースは、待機時間と研修などの時間です。厚生労働省のガイドラインでは「以下は、労働時間だ!」と定められています。

■ 待機時間(いわゆる「手待時間」)

使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間

■ 研修などの時間

参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

上記のガイドラインが作成される契機となった最高裁判例があります(三菱重工業長崎造船所事件(最高裁 H12.3.9))。

長崎の造船所で起きた事件です。どんな事件かをザックリと解説します。

この造船所では、以下のような規則が定められていました。

  • 始業時刻に間に合うよう着替えを完了させよ(作業服や保護具などの装着)
  • その後、準備体操場に移動せよ
  • その後、資材を受け出し、散水せよ
  • 終業後は、作業場から更衣所まで移動して着替えよ

これを怠ると懲戒処分を受けたり、成績考課に反映されて減収にもつながる場合がありました。この造船所では、以下の時間について、給料を支払っていませんでした。

  • 着替え
  • 準備体操場までの移動時間
  • 資材を受け出し、散水した時間
  • 終業後は、作業場から更衣所まで移動して着替えた時間

そこで、従業員が「この時間分も給料を支払え!」と提訴しました。

最高裁の判断

最高裁は「以下は労働時間だ」と認定しました。

  • 着替え
  • 準備体操場までの移動時間
  • 資材を受け出し、散水した時間
  • 終業後は、作業場から更衣所まで移動して着替えた時間

その理由としては、以下のとおりです。

✔︎ 労働時間とは【労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間】をいう。
✔︎ 業務の準備行為などを義務付けられ、またはこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれていると言える。
✔︎ 上記4つの時間は、使用者の指揮命令下に置かれている。

要するに、使用者の指揮命令下に置かれているかどうかで、その時間分の給料を請求できるかどうかが決まります。

この最高裁に照らしてみても、今回のスシローのケースは、手洗いや着替えなどが義務づけられており、使用者の指揮命令下に置かれていると言えるので、私は労働時間に当たると考えます。

最後に

厚生労働省のガイドラインや最高裁判例に照らせば、今回のスシローのケースは、労働時間になる可能性が高い(=手洗い時間分などの給与を請求できる)と考えます。

おそらく、スシローのケースのように、無給で仕事に携わることを強いられているケースは相当多いと考えます。

「タイムカードを押す前に、いろいろとさせられる」
「タイムカードを押した後に、いろいろと後始末がある」

のに、

「その時間分の給料が支払われない...」
という方・・・労働局や弁護士に相談してみましょう。



【筆者プロフィール】林 孝匡(はやし たかまさ)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
HP:https://hayashi-jurist.jp Twitter:https://twitter.com/hayashitakamas1

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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