「芸能界デビューを約束」“オーディション商法”年500件超の被害…“悪質”手口の実態とは?

弁護士JP編集部

弁護士JP編集部

「芸能界デビューを約束」“オーディション商法”年500件超の被害…“悪質”手口の実態とは?
若者の「有名になりたい」憧れに“つけこむ”詐欺件数は少なくない(※写真はイメージです。 Graphs/PIXTA)

芸能界に憧れる人の心につけこみ、金銭をだまし取る「オーディション商法」をご存じだろうか。

映画などの出演者やエキストラ、雑誌のモデル、アイドルグループのメンバーを決めるなど“オーディション”をかたり呼び出した相手に対して、面接・選考の後で、高額なレッスンの契約や事務所への所属料などを持ちかける手口だ。

被害を訴える相談は、2010年代前半から国民生活センターに寄せられており、2018年には過去最高の894件となっている。コロナ禍においてやや減少したが、それでも相談件数は年500件超えという現状だ。

10月26日には、オーディション商法の手口による特定商取引法違反の容疑で愛知県の芸能プロダクションが摘発された。2018年11月から今年7月までの間に、全国の1000人以上と“契約”を結び、計2億円ほどを集めていたとみられている。

“夢をつかむため”のオーディションのはずが…

国民的ともいえるNHKの年末番組『2022年紅白歌合戦』に初出場が決まったJO1、BE:FIRSTは、それぞれオーディション番組から誕生。紅組のTWICE、NiziUもオーディション番組内でデビューメンバーが決定したグループである。さらに、関ジャニ∞などを有するジャニーズ事務所は、入所時にオーディションが行われることが有名で、これはLDHやハロー!プロジェクトなども同様だ。

また、綾瀬はるか、有村架純、長澤まさみ、菅田将暉、松坂桃李ら国民的人気を誇る俳優も、雑誌や事務所のオーディションからデビューを果たしており、『オーディション』を経て活躍する芸能人は枚挙にいとまがない。

「芸能人になりたい」「有名になりたい」と夢や憧れを持つ者にとっては、オーディションはその第一歩である。しかし、その思いを“利用”し、搾取しようとする一部の芸能プロダクションがある現状は前述の通りだ。

「演技力を高めるため」「デビューさせてあげるから」…

その具体的な手口も、国民生活センターや政府の報道資料で公開されている。

事例①: 芸能事務所のオーディションに応募して合格し、芸能事務所と契約した。契約の際、「歌手としてデビューさせてあげる」と言われたが、自分のCD180枚を約50万円で自ら買い取らなければならないという。不審なのでやめたい。(20代・女性)

事例② :求人サイトから声優のアルバイトに応募した。所属契約をした後、プロデューサーを名乗る人から「ボイスドラマの制作をしている」と言われ、スタジオでボイスサンプルを収録した。その後、担当者から「審査は落ちたが、やる気があるなら新人枠で推薦する」と電話があり、依頼すると、後日プロデューサーから「条件付きで新人枠に入れた」と連絡があった。条件は「演技力を高めるため、約8万円のレッスンを受講すること」だった。親に相談したら反対され、断ったが「大学生にもなって親に頼るのか」と罵倒された。契約を解除したい。(10代・男性)

国民生活センター「タレント・モデルなどの契約トラブル」より

若者の夢の実現につけこんだ卑劣な「オーディション商法」。被害に遭わないために、芸能関係などの志望者はどのような心づもりでオーディションに望めばよいのだろうか。

金銭トラブルを予防するには?

オーディション情報を多数掲載する『WEB Audition』編集部では、「原則的に応募者に金銭的負担のかからないもの」のみを掲載し、各種費用が発生する場合には、内容・金額を明示することを事業者に課しているという。

また、同編集部は、契約料や所属料などを持ちかけるオーディション商法の手口について、「モデル事務所は所属料を取るところが多いと言われていますが、所属料を取るか取らないかは、各社の方針によるところが大きく、一概に言えないのが実情です」と詐欺かどうかの判断の難しさも話す。

しかし、所属料を取らない事務所もあり、大きなオーディションであれば、逆に賞金が出るところもあるという。

その上で、「金銭に関するトラブルに巻き込まれないためには、レッスンの代金や所属料などの“名目”とその“金額”を曖昧にしないことが大切です。また、自分の感覚で『高い』と思ったら、無理に払わないようにしてください」(同編集部)と注意を呼びかける。

スカウトされたときは要注意

オーディションと並び、芸能界デビューの方法としてよく聞かれるのが、街中やイベント会場で声をかけられる「スカウト」だ。俳優の佐藤健や山田孝之、広瀬すず、永野芽衣らはスカウトをきっかけに芸能活動をスタートさせている。

ただ、これらスカウトについても、悪質な芸能プロダクションが若者に声をかけている実態があり、「そのまま事務所について行かない」(同編集部)といった慎重な対応が必要であるという。

「その場では名刺などの連絡先と、そのプロダクションの資料をもらい、ご両親や相談できる方とよく話し合って、後日連絡をとるようにしましょう」(同編集部)

「だまされた!」そんな時は?

注意をしていても、「オーディション商法」と思われる被害に遭ってしまう人もいるだろう。そんな時はどう対応すればいいのか。ベリーベスト岸和田オフィスの大久保拓哉弁護士に話を聞いた。

高額なレッスンへの勧誘や、事務所の所属料の支払いなどを求められて困っている場合、誰に相談をすればいいのでしょうか?

大久保弁護士:契約の申し入れを断っているのに業者が勧誘をやめないなど、しつこい勧誘にお悩みの場合は、国民生活センターや消費生活センターといった公的機関が相談を受け付けています。

明らかに詐欺といえる場合など、悪質性が高い場合には警察や弁護士に相談してもよいでしょう。

高額なレッスンなどの契約をすでに結んでしまった場合は、どうすればいいですか?

大久保弁護士:詐欺的な契約をすでに結んでしまった方や、すでにお金を支払ってしまった方は、支払金の回収や被害拡大防止のために早期着手の必要があります。クーリングオフによる契約解除を行う場合であれば、期間制限が存在するためです。迷わず、早期に弁護士に相談してください。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

編集部からのお願い

情報提供をお待ちしております

この記事をシェア