静岡新聞の逮捕記事、ブラジル人夫婦の住所掲載は「法的にOK」。東京高裁が判決

弁護士JP編集部

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静岡新聞の逮捕記事、ブラジル人夫婦の住所掲載は「法的にOK」。東京高裁が判決
判決後、記者会見に臨むブラジル人の男性(11月18日 霞が関/弁護士JP編集部)

静岡新聞の逮捕記事、ブラジル人夫婦の住所掲載は「法的にOK」。東京高裁が判決

「知らない人が自宅まできて、嫌がらせをされる。その悔しさ、悲しみを裁判官にわかってほしかった」

絞り出すようにそう言ったのは、静岡県に住むブラジル国籍の男性だ。

2018年6月、男性とその妻は覚醒剤取締法違反などの疑いで静岡県警に逮捕された。その際、静岡新聞は夫婦の住所を市町村名や町名だけでなく、地番まで報道。その後、夫婦は嫌疑不十分で不起訴処分となったものの、住所が広く知れ渡ってしまったことで、自宅に見知らぬ人が訪れ、嫌がらせをされるようになった。「子どもたちもおびえて暮らしている。自宅で営む自営業も風評被害を受けている」と男性は言う。

プライバシーの侵害で静岡新聞を提訴

夫婦は、地番の報道によりプライバシーを侵害されたとして静岡新聞を提訴。今年5月の一審で静岡地裁は、夫婦の名誉や信用に関わる「逮捕報道」という性質も踏まえ、「プライバシー保護の観点から住所が秘匿される必要性が高い」との判決を下した。

一方の静岡新聞は、これに不服を唱え上訴。11月18日の二審で東京高裁は「当該の報道はプライバシー侵害にあたらない」として一審の判決を取り消した。同日、静岡新聞は文書で「当社の主張が認められた判決と受け止めています。引き続き、公平、公正でプライバシーに配慮した報道を続けてまいります」とコメントしている。

夫婦は最高裁まで争う意向

判決後に開かれた記者会見で夫婦の代理人弁護士は「報道の自由と個人のプライバシーは非常に難しい問題」としながらも、「インターネットが普及した今、一昔前のように地番まで報道するのはいかがなものか。裁判官の古い体質が露呈した」と憤りを露わにした。

また、会見に同席したブラジル国籍の男性は「約30年前に来日して以来、日本語を覚え、日本の文化に馴染みながら積み上げてきた人生が、報道によってゼロになってしまった。見知らぬ人に嫌がらせをされる悔しさ、悲しみを裁判官にわかってほしかった。裁判がこんな結果になるとは思いもしなかった」と振り絞るように語った。

二審の判決を受け、夫婦は最高裁に上訴する意向を示している。

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