新海誠『すずめの戸締まり』公式がファンに「マナー」求める “聖地巡礼”絶対NG行為は?

弁護士JP編集部

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新海誠『すずめの戸締まり』公式がファンに「マナー」求める  “聖地巡礼”絶対NG行為は?
JR御茶ノ水駅「お茶の水橋口」に掲出されているフォトスポット(弁護士JP編集部)

11月11日に公開された新海誠監督の最新映画『すずめの戸締まり』は、週末観客動員数(興行通信社調べ)が2週連続で1位を獲得し、興行収入は公開10日間で41億5400万円を突破するなど、大ヒットしている。

新海誠作品といえば、実在する風景の美しい描写も醍醐味であることから、新作が公開されるたびに「聖地巡礼」をするファンが多いことでも知られている。過去作『君の名は。』(2016)公開時には“聖地”の近隣住民から苦情が寄せられたこともあってか、今作の公開前には製作委員会が公式サイトやTwitterで「聖地巡礼時のマナー」に関する注意喚起をしていた。

『すずめの戸締まり』、そして過去作『君の名は。』『天気の子』の“聖地”は今、どうなっているのか。都内に点在する現地へ向かった。

①すずめの戸締まり(御茶ノ水駅周辺)

『すずめの戸締まり』は、主人公の女子高生・岩戸鈴芽(すずめ。演:原菜乃華)が、“災いのもと”になる扉「後ろ戸」を閉めるために、宮崎~愛媛~神戸~東京~宮城の廃墟を旅するロードムービーだ。

東京編の重要スポットとなるのが、御茶ノ水駅周辺。お茶の水橋口を出ると、早速フォトスポットが出迎えてくれる(掲出期間: 2023年1月上旬頃まで ※予定)。

JR御茶ノ水駅「お茶の水橋口」にあるフォトスポット(弁護士JP編集部)

・聖橋(ひじりばし)

予告編でも、鈴芽が橋の上から飛び降りる様子が描かれている。

東京編のキーポイントとなる東京メトロ・丸ノ内線のトンネル。聖橋から東側を臨むと見える(弁護士JP編集部)
湯島方面から見た聖橋。鈴芽が飛び降りるシーンで登場(弁護士JP編集部)
鈴芽の目線で橋の上から風景を眺めてみる。工事中のクレーンやプレハブは映画には描かれていない(弁護士JP編集部)

訪れたのは平日の午前中だったが、聖橋付近には映画を見て訪れたと思われる人たちも何組かいた。スマホと風景を見比べながら「すげー!」と盛り上がっていた男子高校生5人組のひとりは、「歩いていたら偶然見つけたんです。映画と同じでびっくりしました」と興奮気味に語ってくれた。

・草太のアパート近くの坂

鈴芽と一緒に旅をする“閉じ師”の青年・宗像草太(演:松村北斗/SixTONES)のアパート付近のシーンで登場する坂は、外堀通りから昭和第一高校と文京区立元町公園(工事のため臨時休業中)の間に入ったところにある。

坂の上から外堀通り方面を臨む(弁護士JP編集部)
ファンとおぼしきカップルが写真を撮っていた(弁護士JP編集部)

坂自体がさほど広くないため、写真を撮る際には車両の通行を妨げないよう、周囲に十分な注意が必要だ。また坂の上には閑静な住宅街が広がっているため、長居はせず、会話のボリュームにも配慮したい。

②君の名は。(須賀神社周辺)

ラストシーンでふたりの主人公、立花瀧と宮水三葉が再会するのが、四谷三丁目・須賀神社前の印象的な階段だ。

住宅街の入り組んだところに突然階段が現れる(弁護士JP編集部)
瀧と三葉がすれ違った場所(弁護士JP編集部)
階段の上から(弁護士JP編集部)

須賀神社の周辺は住宅街となっており、カメラのシャッター音を鳴らすのもはばかられるほど静か。映画公開から6年がたった今、聖地巡礼をしている人には出会わなかったが、「もし自分がこのあたりに住んでいて、見知らぬ人のシャッター音や会話が四六時中聞こえてきたとしたら、きっとストレスを感じるに違いない…」と強く思い、そろりそろりと現地を後にした。

階段には須賀神社による注意喚起の看板も掲げられていた(弁護士JP編集部)

③天気の子(田端駅周辺)

ヒロイン・天野陽菜が暮らしている田端。主人公・森嶋帆高が陽菜の家に向かうシーンや、ラストシーンでふたりが再会する場所として描かれている。

帆高が陽菜の家を訪れる際、背景には田端駅南口が描かれている(弁護士JP編集部)
田端駅南口から延びる道(弁護士JP編集部)
田端駅南口から延びる道の左手にはJR山手線や京浜東北線、新幹線の線路が並行して走っている。その奥には、映画にも描かれている「あみ印」の看板が(弁護士JP編集部)

田端駅南口は、ロータリーや飲食店でにぎわう北口に比べてかなり静かな場所だ。住宅が多く立ち並ぶエリアなので、少し大きな声を出しただけでも近所迷惑となるだろう。私有地からでないと同じ構図で見ることが難しい風景もあるため、くれぐれも無理のない範囲で楽しんでほしい。

「映画のシーンを再現」は難しい

今回、聖地をめぐって実感したのは、映画と同じ構図で写真を撮ることは「結構難しい」ということだ。たとえば『すずめの戸締まり』に登場する「聖橋」周辺は現在工事中であり、映画には描かれていないクレーンやプレハブなどがどうしてもフレームインしてくる。また、現実には私有地や立ち入り禁止の場所からでしか見えない景色が描かれることもあるだろうし、人や車の往来が激しい場所であれば、それらを写さずに写真を撮ることは難しいだろう。

観光地のマナー問題に詳しい齊田貴士弁護士は、聖地巡礼のマナー違反がエスカレートする「法的リスク」について、以下のように指摘する。

「映画と同じ構図で写真が撮りたいからといって、他人の家の敷地や土地に無断で正当な理由なく立ち入れば『建造物侵入罪』が成立する可能性や、“立入禁止区域”に侵入すれば『軽犯罪法』に違反するおそれがあります。また、敷地内の花や枝が邪魔だからと折るなどした場合、そのものに財産的価値が認められれば、器物損壊罪の成立が考えられます。

さらには、万が一、人同士のトラブルに発展した場合、暴言を吐きながら相手方にある行為を強制する場合は強要罪、相手方の身体や財産に危害を加える旨を告知して暴言を吐いた場合には、脅迫罪が成立する可能性もあります」(齊田弁護士)

せっかくの“聖地”をファンがけがすようなことがあっては、作品自体にも暗い影を落としかねなねない。映画と同じ風景に感動する気持ちはよく分かるが、くれぐれもマナーは守って“巡礼”するのが賢明だ。

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