「雇い止めは違法」非常勤講師が東海大学を集団提訴 “争点”を弁護士が解説

林 孝匡

林 孝匡

2022年11月22日 12:04

「雇い止めは違法」非常勤講師が東海大学を集団提訴  “争点”を弁護士が解説 訴えを起こした原告の河合さん(中央)、田渕弁護士ら(11月21日 霞が関/弁護士JP編集部))

東海大学に非常勤講師として勤務していた8人が、大学によって通知された「雇い止め」が違法だとして、地位の確認と来期以降の賃金の支払いを求め東京地裁に提訴、11月21日会見を開いた。

原告の非常勤講師たちは、東海大学との間で契約期間1年の「有期労働契約」を締結し、毎年更新を行ってきた。契約の通算期間が5年を超えたことから、大学に対し「無期労働契約への転換」への申込権(労働契約法18条)を行使。

しかし、大学側は、「科学技術・イノベーション法」、「任期法」の特例を理由に、講師も研究者に該当、無期労働契約への転換には10年の通算期間を必要とすると主張、申し込みを認めなかった。その後、8人の原告全員に対し、「講座数を減らす」などとして、2022年度(2023年3月)限りの「雇い止め」を通告したことから提訴に至ったという。

「こんな形で終わるのは残念」

代理人の田渕大輔弁護士は、この裁判について、「任期法が最大の争点となるが、非常勤講師との関係で正面から判断した判決はない。特例の適用対象(労働契約法4条1項1号)にあたるのか。ただ、言い方が悪いが、大量に雇用し、多くの授業を回し、交代の要員が多くいるということであれば(専門分野の研究者の)要件にあたらないのではないか」と説明。できるだけ早く結論を出し、時間をかけないように進めたいと話した。

原告のひとり、河合紀子さん(非常勤講師・外国語)は、「全体の講座数が少なくなるので、4月に外国語の科目が選ばれなくなると告げられました。それは事情であって、理由ではないし、少しずつではなく、まったくなくなるということに納得できませんでした」と雇い止めに至る経緯を語った。

さらに、8月25日には「主体者が分からない」まま、来年の契約はないという通知を受けたという。「10年、20年以上働いている人にもメール1通。こんな形で終わるのは残念です。この大学で働く権利があると思いますし、正常な形で自分の科目に集中できる、無期雇用を認めていただきたい」(河合さん)

今回の原告は8人であるが、今後その人数も増やしていくという。提訴について、東海大学は、「訴状が届いていないので、コメントは差し控えさせていただく」としている。

「研究者」に“あたる”か“あたらない”か?

今回、「科学技術・イノベーション法」、「任期法」の特例など、やや耳なじみがないキーワードも多く、特殊な労働事件との印象も持ってしまう。しかし、普通の働く人たちにも関わる、軽視できない裁判と語るのは、労働問題の情報発信に注力している林孝匡弁護士。今回の裁判について、分かりやすく解説してもらった。(以上弁護士JP編集部)

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東海大から雇い止め通知を受けた非常勤講師8人が、東京地裁に提訴しました。提訴する理由は「無期転換を認めないことは違法だ」というものです。裁判では雇用継続を主張する模様です。

講師の8人は有期の雇用契約を繰り返し、通算で5年を超えていました。その後も繰り返し契約が更新されていたところ、今年の春ごろ、大学から「来年3月での打ち切る」と通知されたというもの。

裁判では、両者は以下のとおり主張を行うと考えられます。

■ 講師らの主張
契約期間が通算5年を超えているので無期転換を申し入れることができる。よって、雇用継続を求める。

■ 大学側の主張
この講師らは“研究者”にあたる。よって、5年ではなく、特例により10年である。10年を経過するのは、来年の4月以降だ。

【研究者】にあたらなければ
もし“研究者”にあたらなければ、講師らは俄然優勢になるでしょう。

なぜなら、契約期間の通算が5年を越えていれば、無期転換への申し込みが認められているからです。

労働契約法 第18条
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が 5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす

これを「無期転換ルール」と言います。

目的は、「有期契約という不安定な契約」から、「安定度の高い無期契約」への転換させようというものです(無期契約になれば雇い止めの心配はなく、解雇されるケースも相当制限されます)

【研究者】にあたれば
もし“研究者”にあたれば、上記の5年は適用されません。

なぜなら、下記法律によって、上記の5年ルールが【10年】に伸長されているからです。

  • 科学技術イノベーション創出の活性化に関する法15条の2第1号
  • 任期法7条1項

10年に伸長されていれば、論点は、雇い止めは合法か?に移ります。

講師らの契約がどれくらい繰り返されていたかなど、内容によりますが、大学の雇い止めが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないものかどうかが争われることになるでしょう。

過去にもあった大学の“雇い止め”裁判

裁判所が「雇い止めは、社会通念上、相当ではない」と判断すれば、同じ条件での雇用継続が認められることになります。

労働契約法 第19条
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

1 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

2 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

過去には、専修大学で類似の雇い止めの事件がありました。語学を教えていた非常勤講師が雇い止めの通知を受け、訴訟を提起したものです。

結果、講師は勝訴しました。〈学校法人専修大学(無期転換)事件:東京高裁 R4.7.20〉

大学側は「この講師は“研究者”にあたる」と主張したのですが、裁判所は「研究者にはあたらない」と判断し、契約期間が通算5年を超えている講師の無期転換を認めました。

裁判所が「研究者にあたらない」と判断した理由の骨子としては、この講師は語学の授業、試験その他の関連業務に従事してはいるが ”研究業務には従事していない” と言うものです。

今回の東海大の訴訟でも、この専修大の事件の【研究者】の定義を参考にして攻防が繰り広げられると考えられます。

雇い止めの空気を感じたら…

ちまたでは「直前のハシゴ外し」が横行しています。5年になる直前で雇い止めをしてくるケースが増えているんです。

企業は、

「5年を超えると、さらに同じ条件で雇わないとダメだからな〜」
「5年を超える前に雇い止めしちゃえ!」

と考え、近年、雇い止めしてくるケースが増えているということです。雇い止めの空気を感じたら、社外の労働組合や弁護士に相談しましょう。

労働組合は「あなたが住んでいる地名 ユニオン」でググれば出てきます。労働者の味方となって熱心に活動されているグループが多いので、一度相談してみましょう。

弁護士は、労働問題をウリにしている事務所が良いと思います。HPで判断しましょう。最近は、初回相談無料の事務所も多くなってきてます。

一度、突撃してみて相性が合わなかったら「また考えてみます」で退散してOKです。相性の合う弁護士さんを探してみてください。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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