旧統一教会など被害者救済案「政府の法案は不十分」 全国霊感商法対策弁護士連絡会が提言

弁護士JP編集部

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2022年11月21日 17:40

旧統一教会など被害者救済案「政府の法案は不十分」  全国霊感商法対策弁護士連絡会が提言 全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士、川井康雄弁護士、山口広弁護士(11月21日 霞が関/弁護士JP編集部)

旧統一教会などの被害救済に向けて、現在与野党の間で法改正、新法制定に関する議論が続いている。11月17日には、政府が今臨時国会での成立を目指す、悪質な献金を規制する、新たな法案の概要が明らかになった。

「全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)」は11月21日に記者会見を開き、政府の新たな法案の内容に「不十分な点がみられる」と指摘。政府に対し、より実効性のある法案を求め提言を行った。

新法案の「取消権」による被害救済は限定的?

左から阿部克臣弁護士、紀藤正樹弁護士、川井康雄弁護士、山口広弁護士(11月21日 霞が関/弁護士JP編集部)

政府は、「悪質な勧誘行為」によって行われた献金を取り戻せる「取消権」を認める方針だ。献金者がいわゆるマインドコントロールにかかるなどして取り消しを求めない場合には、配偶者や扶養されている子どもなどにも、特例的に「取消権」を認める方向で調整している。

しかし、取り消しの対象となるのは生活費や教育費など、民法が定める「扶養を受ける権利」などの範囲内に限られる。かつ、扶養されている者が無資力であることが前提となっている。

これに対して阿部克臣弁護士は、「たとえば、妻が1億円の資産のうち8000万円を献金した場合、妻には2000万円が残っているとされ夫は取消権を行使できないことになる」と説明。

さらに、「未成年の子どもが取り消しを図ろうとする場合、親権者である親が献金者である以上、事実上裁判ができない。では、どのような救済が図られるのか。この政府案では明らかになっていない。未成年後見人や特別代理人などの制度を使うにしても、かなり(救済が)困難ではないか」と続け、政府の法案はいわゆる「宗教2世」の被害救済につながるものではないと指摘した。

禁止される勧誘行為にも疑問

政府の概要では、「法人が寄付の勧誘をする際に、〈一定の行為〉をして個人を困惑させてはならない」ことが規制対象とされ、〈一定の行為〉については、以下6点が挙げられている。

  • 不退去(退去を求めたのに退去しない)
  • 退去妨害(退去したいのに退去させない)
  • 勧誘することを告げずに退去困難な場所へ同行
  • 威迫する言動を交え相談の連絡を妨害
  • 好意に乗じ関係の破綻を告知
  • 霊感等による知見を用いた告知(※)

(※)霊感等による知見として、本人や親族の重要事項について、現在または将来の重大な不利益を回避できないとの〈不安をあおり〉、または不安を抱いていることに乗じて、当該不利益を回避するためには寄付をすることが必要〈不可欠〉であることを告げる。(※注釈は編集部)

これらの規制対象について、川井康雄弁護士は「消費者契約法の4条を元に策定されているが、なぜか4条にはある『健康不安商法』を規制する項が除外されており、承認しがたい。

また、霊感商法は不安をあおるだけでなく、契約終結により運が向上するといった良い結果を告知する『開運商法』と呼ぶべき例も多い。不安の告知のみならず、開運などの告知も規制に盛り込むべきだ」と主張した。

さらに山口広弁護士は、「なぜ必要〈不可欠〉という文言が入るのかわからない。被害者の方で実際に『必要不可欠』と勧誘された人はほとんどいないはずだ。また、実際の裁判の場においても、必要〈不可欠〉だと言ったか、言わなかったかという議論になるのが目に見えている」と実務的な問題点を挙げる。

前提となる「個人から法人への寄付」という点についても、「範囲が狭すぎる。カルト的な団体は法人格を持っていないもの、個人に近いものも存在する。信者が運営している会社が献金当事者ということも多いのが実態だ。少なくとも、団体や団体幹部個人への規制も行うべきだ」と指摘。

全国弁連所属弁護士らの思い

その上で「法改正が今臨時国会でなされようとしていること自体は評価している。ただ、せっかくの法改正が実態を踏まえない、役に立たないものになってしまうことは放置できない」と述べ、与野党での丁寧な協議を求めた。

紀藤正樹弁護士は、「被害実態を踏まえておらず、一度も使われない法律になりかねない。このような案が政府から出てきたことには、被害者の声を聴かずに消費者庁の検討会が終了したことが大きな影響を与えていると思う。今からでも、被害者がどういうところに苦しんでいるのかを国会で聞いてほしい。その上で、法案について正すべきところを正し、被害者の救済にとって、もっともいい形になるよう審議を尽くしていただきたい」と述べた。

左から阿部克臣弁護士、紀藤正樹弁護士、川井康雄弁護士、山口広弁護士(11月21日 霞が関/弁護士JP編集部)
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