「外国人技能実習制度」“問題化”の元凶は? 「報道されない」現場の切実な声

弁護士JP編集部

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2022年11月16日 09:58

「外国人技能実習制度」“問題化”の元凶は? 「報道されない」現場の切実な声 現場で技能を習得する技能実習生ら。日本が好きで来日する人が多いという(写真提供:コンクリートポンプ株式会社)

群馬県内で外国人技能実習生を受け入れる事業場のうち、法令違反の疑いがあるとして実習生などから相談や通報を受けた県内197の事業場に、労働基準監督署による立ち入り調査が行われた。その結果、県内145の事業場で労働基準法などの違反が確認されたことが、10月17日の群馬労働局のまとめで分かった。

全国においても、受け入れ事業場の7割以上で、残業代未払いや安全配慮義務違反などの法令違反が起きていたことを、厚生労働省が取りまとめて公表している(7月27日)。

「技能実習制度」は誰のための制度か

「外国人技能実習制度」は、日本の技能・技術・知識の開発途上国などへの移転を図るとともに、開発途上国などの経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とし、1993年に創設された。しかし、一部の企業による法令違反が常態化し、制度に対して、国内のみならず、国際社会からも多くの批判を浴びることとなる。

「技能実習法」が施行される以前の、技能実習生をめぐる主な事件

これらを受けて国は、2016年に技能実習の適正な実施を図るとともに、技能実習生の保護も目的とした「外国人の技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する法律」(以下「技能実習法」)を創設。

しかし、2017年に施行されて5年がたった今でも、技能実習生をとりまく環境が改善されたとは言いがたい現状のようだ。

悪質な“技能実習生いじめ”が今年も発覚

今年1月には、岡山県の建設会社で働いていた技能実習生のベトナム人男性が、日本人従業員から約2年間にわたり暴行を受け、骨折などのけがをしていたことが発覚した。

本来であれば事業場を監督し、実習生を支援する立場である「監理団体」も会社と結託し、男性に対して口止めを行っていた悪質なケースで、男性が知り合いを通じて労働組合に保護されたことで事実が明るみに出たという。

この監理団体は「技能実習法」に基づき許可が取り消され、今後5年間実習生受け入れに関する業務ができなくなった。また、暴行を働いていた従業員4名も書類送検された。2017年の「技能実習法」の施行後、監理団体の許可取り消しは、2022年10月末までで、本件を含めて35件にのぼる。

技能実習制度と特定技能制度「労使双方のメリット」を活用する企業

「制度を守っていない企業のイメージが強く、良い事例がなかなか一般の方の目に触れられない」と嘆くのは、技能実習生を多く受け入れるコンクリートポンプ株式会社(岐阜県)の副社長・加納岳人氏だ。

同社はこれまで約40名の技能実習生を受け入れ、そのうち約30名を満了帰国させた。現在同社に在籍する約10名には、1級技能士(※)の称号を持つ外国人が3名いるほか、10年以上在籍している外国人もいる。

(※)各分野の技能検定に合格した者に与えられる国家資格。

同社では技能実習生が働きやすい環境を作るため、待遇改善にも力を入れている。背景には「この20年間、日本人若年層の入社がほぼなく、技術者を育成できなかった」(加納氏)という建設業がかかえる人手不足の問題があった。

技能実習生は最長でも5年すると母国に帰ってしまうため、本質的な人手不足の解消にはならない。しかし、加納氏は、希望する技能実習生に対して「特定技能制度」を活用することで、優秀な技術者の長期雇用を実現できるのではないかと考えたという。

特定技能制度への“エスカレーター”は「他国にはない取り組み」

人手不足が深刻化している産業分野において、専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする「特定技能制度」。2018年の「改正出入国管理法」(入管法)成立に伴い、在留資格「特定技能」が創設され、2019年4月から受入れが開始された。

特定分野の技能試験と、日本語能力試験に合格した外国人に「特定技能ビザ」が発行される仕組みだが、日本で3年間良好に技能実習を終えた元技能実習生は試験が免除される。一方で、企業が特定技能制度を活用するためには、福利厚生を充実させるなど、特定技能の制度で定められた労働条件で雇用契約を結ぶことが求められる。

「技能実習と特定技能、2つの制度の関連性は、とても繊細ですが、他国にはない取り組みです」(加納氏)

技能実習制度と特定技能制度の関係(編集部作成)

同社では、技能実習を終えて帰国していた外国人に再来日を打診したケースも含め、4名が特定技能制度を利用。今年4月に1名が、9月には2名が更新上限年数のない就労ビザを取得した。全国で初めての「特定技能2号」認定者だった。

過去には同社でも実習生が失踪するケースなどがあったというが、現在では「給与や住環境の整備はもちろん、日頃からコミュニケーションを取り、彼らの要望や相談には最優先で取り組んでいます」(加納氏)とお互いの信頼関係を築いている。

食卓を囲む加納氏と技能実習生ら。特定技能制度を利用している人もいる。(写真提供:コンクリートポンプ株式会社)

「日本の労働問題の顕著な表れ」

技能実習と特定技能の制度を組み合わせ、受け入れ企業と働く外国人の双方が満足する結果を得られるケースもある。

しかし、先に述べたように悪質な受け入れ企業による労働問題が明るみに出ることが多く、制度に対する批判や、制度廃止を求める声さえもある。

これに対して、国際機関で労働関係の業務にも携わったことのある佐々木智仁弁護士は、技能実習制度をめぐる問題は「日本の労働問題が顕著に表れている」と指摘する。

「言語や交渉力の面でことさらに不利な状況にある」「習慣や法制度など日本と異なる部分があり職場になじめない」など、外国人労働者ならではの苦労があることも理解しておく必要があるとした上で、次のように話す。

「ハラスメント被害や、残業代未払いは日本人にも起きている問題です。そういった日本のさまざまな労働問題が、とりわけ立場の弱い技能実習生に対しては顕著に表れているのだと思います。これらは技能実習制度の問題であると同時に、日本の労働環境全体の問題であるとも思います」

これらに加えて技能実習生は「原則として転職が認められていないこと」や「制度を利用するために借金をして日本に来ている場合があること」などがネックとなっているケースが少なくない。彼ら彼女らが会社を解雇・強制帰国させられることを恐れ、監理団体などに被害を訴えないことが問題を根深くしている。

「技能実習生には日本の労働法全てが適用され、日本人と同様の保護が本来はされています。日本の法律では、少しミスをしただけで解雇することはできませんし、妊娠を理由にした解雇・強制帰国も当然禁止されています。技能実習制度の問題ももちろんありますが、そもそもそういった法律を知らなかったり、外国人だったら法律違反をしてもごまかせるだろうと考えているような受け入れ企業にも大きな問題があると思います」(佐々木弁護士)

技能実習制度のこれから

以前から存在していた技能実習生を取り巻く問題が広く認知されはじめたのは、入管法が改正された2018年と最近だ。佐々木弁護士は、受け入れ企業への監視の目は厳しくなってきたと見ている。

「今は技能実習生の存在が広く知られるようになり、労働組合や非政府組織(NGO)などの相談先へのアクセスが以前と比べると容易になってきました。報道も増え、問題意識を持つ人も増えています。 監理団体だけではなく、国の機関、市民団体など、実習生が相談できるような場所がさらに充実してほしいと思っています。実習生の受け入れ先での法令違反を見聞きした場合に、国の機関である外国人技能実習機構(OTIT)に通報できる窓口もあります。

技能実習生の労働環境については、改善しなければならない部分はたくさんあります。一方で、技能実習生として来日し、技術と日本語を習得してお金を稼ぎ、自分の目標を達成する若者もいます。難しい問題ではありますが、単純に廃止すればすべてが解決するということでもないと思います。私も含めてですが、より多くの人が、技能実習生や技能実習の経験者の実際の声に多く触れて、これからどのようにして改善していけるかを考えていけるようになれば良いと思います」(佐々木弁護士)

前出の加納氏も「賃金だけではなく、日本が好きで来日する外国人も多いです。技能実習制度が“お互いにとって”良い形で残ってほしいです」と今後に期待をこめている。

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