“虚偽情報”を拡散する人は“情弱”だった? 「フェイクニュース」が広まる意外な仕組みとは

弁護士JP編集部

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2022年11月10日 09:55

“虚偽情報”を拡散する人は“情弱”だった? 「フェイクニュース」が広まる意外な仕組みとは 真実よりフェイクニュースの方が拡散スピードが速い…?(Graphs / PIXTA)

猛威をふるった台風15号について、9月26日頃、静岡県内で住宅が水没したとするドローンの画像がSNS上で大量に拡散。しかし、その画像はAIが作成した“偽”の画像だったことが後に発覚した。

このように真偽の判別のしにくさから、人々を惑わせる巧妙な“フェイクニュース”がSNS上では、数多く拡散されている。その一方で、一読しただけでもすぐに「おかしい」と感じ、真偽を疑いたくなる情報も多い。

たとえばTwitter上では、「『殺人・傷害』で収監されている日本刑務所の囚人 特亜(※1)が65%!」という画像や、新型コロナウイルスのワクチンを開発する製薬会社ファイザー社のホームページが、一時閲覧できなくなったことから「計画倒産した」といった情報が拡散されていた。

いずれの情報も、国際ファクトチェック・ネットワーク(※2)の綱領をもとにインターネット上の情報の真偽を確かめる「日本ファクトチェックセンター(JFC)」や「BuzzFeed Japan」などが、正確なデータをもとにこれらのツイートを「誤り」と断定している。

これらの情報は、ファクトチェックの結果を待たずとも「おかしい」と感じる人のほうが多いだろう。しかし、明らかに「おかしい」情報であっても、賛同を得て拡散されてしまうのはなぜだろうか。

(※1)中国・韓国・北朝鮮を指すネットスラング

(※2)国際ファクトチェックネットワーク(International Fact-Checking Network、IFCN)は、ファクトチェックの基本原則を定める、ファクトチェック団体の国際的な連合組織。日本からは未加盟。日本ではNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)がIFCNの基本原則を踏まえたファクトチェック・ガイドラインを策定している。

どんな人がフェイクニュースにだまされるのか

フェイクニュースに詳しい国際大学GLOCOM准教授の山口真一氏(計量経済学)は、フェイクニュースを拡散する人の特徴を次のように説明する。

山口真一氏

「メディアリテラシーや情報リテラシーが低い人は、フェイクニュースを拡散しやすいことがわかっています。具体的に言えば、メディアやネット上にある情報について批判的にそれを見ることをしない、あるいはその情報を伝えるメディアや人自体に偏りがあるかどうかといった知識がない人です。もう一つ、情報の“事実”と“意見”の区別がつかない人が多いことも特徴と言えると思います」(山口氏)

年齢や性別の偏りはほとんどなく、山口氏は「どの年代でも信じてしまう可能性がある」と話す。その上で、特定の国へのヘイトともいえる偏見や反ワクチン派の主張が、「誤り」であるにもかかわらず多く拡散された背景には、「確証バイアス」があると続ける。

確証バイアスとは、人が自分の信じている事柄を肯定してくれる“心地よい情報”、つまり“信じたい”情報ばかりを集めて信じてしまう傾向だ。

「“確証バイアス”は、その人の知的レベルや年齢に限らず、誰にでも生じうるということが、さまざまな実例を通しても示されています」(山口氏)

なぜフェイクニュースは拡散されるのか

マサチューセッツ工科大学助教のソローシュ・ヴォソゥギ氏らは、「フェイクニュースの方が真実より拡散スピードが速く、拡散範囲が広い」という研究結果を発表したが、真実よりもフェイクニュースの方が注目されてしまう理由について山口氏は「目新しさ」をあげる。

「フェイクニュースと事実を比較すると、フェイクニュースのほうが『目新しい』。そこから転じて考えると、目新しさ、センセーショナルな度合いが高い“刺激的”な情報が拡散されやすいという予測がつきます。

また、“怒りを誘発する”情報が拡散されやすいこともわかっています。ネット炎上に関する私の研究でも、炎上に参加している人の60~70%は『許せなかったから』『失望したから』といった正義感で攻撃を仕掛けているということがわかっています。ここでいう正義感とは、社会的正義ではなくて、その人の中だけの正義感です。“義憤に駆られて”拡散行動をしているという言い方もできると思います」(山口氏)

さらに、フェイクニュースの拡散には“発言力”を持つ「スーパースプレッダー」が大きく関与しているとも山口氏は指摘する。

「“スプレッダー”とは、感染症を何人もにうつしてしまう“ハブ”のような人のことを指します。コロナ禍でよく使われている言葉ですが、フェイクニュースでも実は同じで、インフルエンサーのような影響力のあるスーパースプレッダーが一部にいる。この人が誤った情報を流すと、大量の人が誤った情報を受け取ってしまう。

このスーパースプレッダーを止めることは非常に重要ですが、自分も“スプレッダー”になってしまう可能性があるということも認識しておいてほしいと思います。感染症に対してあまりに無防備な行動をとると、他人にうつしてしまう可能性がありますよね。フェイクニュースも同じで、あまりに気を付けない行動をとっていると、自分が誤った情報にだまされて、他の人にも拡散してしまうのです」(山口氏)

「フェイクニュース」を検索すると「見分け方」や「対策」といった言葉がサジェストされる

フェイクニュースを拡散しないために

では具体的に、フェイクニュースにだまされず、誤った情報を拡散しないためにできることとはなにか。山口氏は以下のように語った。

「SNS上の情報はもちろん、直接の会話、マスメディア、ネット記事、あらゆる情報について、ウソや偏りがあるというのを知ることがまず第1歩だと思います。

とりわけネット上にはフィルターバブル(※3)やエコーチェンバー(※4)というものがあって、自分に心地よい情報が届きやすい。自分の見ている情報には偏りがある、ウソもあるかもしれない、それを前提として情報に慎重に接することが大切です。

(※3)検索履歴などをアルゴリズムが分析・学習し、利用者の考え方や価値観に沿った情報が優先的に表示される情報環境。

(※4)SNS等で自分と似た興味関心をもつユーザーをフォローした結果、自分と似た意見が集まりやすくなる現象。

もうひとつが、他の情報源を確認するということです。大変そうに聞こえますが、SNSで他の人が何と言っているかを見る、あるいは検索エンジンで検索する、そういった簡単なことからでいいんです。

こういう話をすると、『いちいちそんなことできない』と言われます。でも、過去には誤った情報を拡散、あるいはそれをもとに他人を中傷したことによって、逮捕された人や賠償金を支払うことになった人もいます。拡散には責任が伴うわけです。『この情報を拡散しよう』と思ったときだけでも情報を検証してほしいと思います。

そして、検証してもわからないことは、世の中にいっぱいあります。特にワクチンのような専門性が高いもの、あるいはAI生成画像。今後AI生成画像はより高度になって、人間の力では本物か偽物か判別がつかないようなケースが出てくると思います。そういう『わからない』情報に出会ったとき、『わからなかったら拡散しない』ということを心がけてほしいです」

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