「死者が出てもおかしくない」アマゾンなどの宅配・軽貨物を扱う個人事業主が実態を訴え

弁護士JP編集部

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「死者が出てもおかしくない」アマゾンなどの宅配・軽貨物を扱う個人事業主が実態を訴え
労働環境の改善を求めた建交労軽貨物ユニオン高橋英晴代表(11月11日 霞が関/弁護士JP撮影)

労働環境の整備、適正な法規制などを求める

建交軽貨物ユニオンは、「軽貨物」をあつかう個人事業主の労働環境他の改善を求め、ヤマト運輸、佐川急便、アマゾンジャパン、国土交通省、通商産業省、厚生労働省それぞれに要請書を提出、11日会見を行った。

貨物自動車運送事業の車両数は、2016年には25万3592台が登録。20年には29万4312台(国土交通省)であったものが、コロナ禍以降の宅配需要の広がりによって、21年9月時点で31万8528台までと急増している(軽検査協会)(会見資料より)。

要請書では、個人軽貨物事業主(フリーランス)の急増に伴い、荷主・運送業者・中間業者による不払いや、一方的な運賃引き下げなどの問題が相次ぐ現状。そして、個人事業主が、安心、安全かつ雇用主と対等な関係の元で就労できるよう、労働環境の整備、適正な法規制などについて求めている。

会見で、建交労軽貨物ユニオンの高橋英晴代表は「個人事業主は昨今の燃料高騰でも、運賃据え置きのまま、配達のノルマをこなすために懸命に働いてる。これでは儲けの道具となっているに過ぎない。業界改善のために声を出し、国民のみなさまに届けたい」と話した。

「荷物が増え、業務量だけが上がり負担が重くなっている」

会見に出席した実際の現場で働く個人事業主で組合員のAさん(40代)は、「荷物がすごく増えているが、賃金は据え置かれたまま。コロナの影響もあり、「置き配※」というサービスが去年から本格的に始まっている。現場は人員の体制が組めずに新しいシステムに翻弄され、業務量だけが上がり負担が重くなっている。改善を訴えても「置き配で再配達は減った」という言い分。このままでは死者が出てもおかしくないという危機感を持っている」と現状を訴える。Aさんの現在の平均収入は月26日稼働で40万円位。ただし、個人軽貨物事業主のため経費は自分持ちとなり、ここから15万円程度引かれるという。

※ 注文者などの届け先が指定した場所に非対面で荷物を届けるサービス

個人事業主を廃業したという組合員のBさん(30代)は、「置き配の話でいえば、何かトラブルが発生した場合でも注文者であるお客さまの意見がすべてで、配送員の話に耳をかたむけない。労働時間も朝7時から夜9時過ぎは普通。会社と個人事業主とのパワーバランスが悪すぎて、出がらしになるまで使い倒されるというような経験をした」と廃業の理由を語った。

業務委託が増えているその背景としては、コロナ禍、働き方改革の推進、企業の経費削減などさまざまな要因が考えられるという。会見では、コストをできるだけ抑え利益を上げたい荷主、物流会社と、荷物量の増加やガソリン代の高騰の影響などをもろに受ける、個人事業主とのアンバランスな構造が広がりつつあるのではとも指摘。「個人事業主が増えているとはいえ、激増する荷物量がそれを上回り、業務をこなす台数が足りなくなっているのではないか」(高橋英晴代表)と早急な行政のチェック体制の整備を求めた。

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