ピエール瀧の逮捕と国家の芸術介入。映画『宮本から君へ』助成金訴訟

弁護士JP編集部

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ピエール瀧の逮捕と国家の芸術介入。映画『宮本から君へ』助成金訴訟
(C)2019「宮本から君へ」製作委員会

10月26日(火)、東京・霞が関の高等裁判所で映画『宮本から君へ』(主演:池松壮亮、蒼井優)への助成金不交付をめぐる控訴審が開かれました。

出演者の一人・ピエール瀧が麻薬取締法違反で有罪判決を受けた後、文部科学省が所轄する「日本芸術文化振興会」が助成金の交付を取り消したことを発端とするこの裁判。

2021年6月21日、東京地方裁判所は「助成金不交付は違法」との判決を出しましたが、日本芸術文化振興会はこれを不服とし、東京高等裁判所へ控訴。先日、第1回控訴審が開かれたことを受け、映画製作会社・スターサンズの代理人弁護士らが記者会見を行いました。

控訴審後に記者会見をする代理人弁護士ら控訴審後に記者会見をする代理人弁護士ら(2021年10月26日 東京・霞が関/弁護士JP編集部撮影)

代理人の一人・四宮隆史弁護士は、日本芸術文化振興会が不交付の理由を「公益性の観点」としていることに対し、「曖昧な基準であり、文化芸術が権力によって統制されていた歴史を踏まえれば、国家介入の糸口になりかねない」と言います。

また、憲法に詳しい伊藤真弁護士は、「“公益性”というマジックワードが根拠としてまかり通ってしまえば、憲法第21条で保障された表現の自由をも脅かしかねない」と危機感をつのらせます。

同じく代理人を務める平裕介弁護士は、「文化芸術基本法、補助金適正化法には『薬物』に関する記述は一切出てこない。本来、薬物は刑事に関する領域であり、これでは行政府が縦割りで公益性を保持している意味がない」との見解を述べました。

映画製作会社・スターサンズと代理人弁護士らは今後、控訴審で争うにあたり「日本芸術文化振興会の存在意義」を明らかにしていきたい考えです。

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