“正規品”販売業者がアマゾンを提訴 「プラットホームの責任を果たしていない」 “偽造品”との価格競争で損害

弁護士JP編集部

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“正規品”販売業者がアマゾンを提訴 「プラットホームの責任を果たしていない」 “偽造品”との価格競争で損害
提訴後、記者会見を開いた原告藤井敬博さん、川上資人弁護士ら弁護団(9月28日 霞が関/弁護士JP編集部)

大手ショッピングサイトのアマゾンで、パルスオキシメーターを製造・販売していた企業(2社・いずれも神戸市)が、同製品の偽造品の「相乗り販売」を放置され、売り上げ減少による損害を受けたとして、9月28日にアマゾンジャパン合同会社に対して損害賠償(2億円)を求める訴えを東京地裁に起こした。

“偽造品”との価格競争に

訴状などによれば、訴えを起こした企業は、2011年5月からアマゾンと出品契約(Amazonサービスビジネスソリューション契約)を結び、指先に挿入して、血中酸素濃度を測定する医療機器であるパルスオキシメーターの出品を開始。

2020年のコロナ禍以降、同商品の売り上げが増加する中、2021年8月、中国企業による偽造品の「相乗り販売」が発覚。同企業はこれらの事態についてアマゾンに通報したが、相乗り販売業者の出品情報の削除・停止といった対応が講じられることはなかったという。

アマゾンの出品方法は原則「ひとつの商品=1商品ページ」というルールとなっており、自社で出品した商品に他社が「相乗り」すれば、値段の安さや販売数によって上位表示が代わり、おのずと価格競争になっていく。

しかし、今回は、パルスオキシメーターを日本国内で販売する際に必要な「高度管理医療機器等の販売許可(薬機法39条1項)」を取得してないと見られる”偽造品”と正規品の競争という想定外の事態だ。

10分の1程度で販売される安価な偽造品を「相乗り」出品する業者が増加し、原告企業の売り上げは激減した。さらに、2021年9月に「正規品」を販売しているにもかかわらず、「高額の価格設定がなされている」とシステム上で判断され、原告企業の出品は停止されてしまったという。

「中国の業者の違法行為を助長している」

この日会見を行った弁護団の福田健治弁護士は、「薬機法に違反している偽造品の販売は、事業者の登録の際に許可を得ているのか、許可書をアップロードしてもらい、(アマゾンが)それを精査すれば簡単に防げるはず。チェックを怠ることにより、中国の業者の違法行為を助長している。何らかの対応措置を要望したが、セラー(販売業者)に対して「注意喚起をしている」との回答のみ。それで十分と思っているアマゾンは、プラットホームの責任を果たしていない」と話した。

また、中国企業の偽造品を「ベストセラー」(安価のため上位表示)と表示して、消費者に適法なパルスオキシメーターとして誤認させる行為は、消費者基本法等で定められた、消費者の利益を著しく侵害している消費者法上の問題点についても指摘した。

監督官庁の“監視強化”を求める

原告企業の社長である藤井敬博さんは、実際に“他社商品”を購入し、「偽造品」であることを確認した。会見では、「アマゾンの販売ルートには脱法商品の抜け道があまりに大きく、監督官庁(厚労省、経産省)の取り締まりが十分行き届いていない」という現状を訴えた。

アマゾンのセラーセントラルについては、「脱法商品のぬけ抜け道を作る」(藤井さん)システムと指摘。 不備を指導した上で、 改善できない場合は営業を行わせないなどの「強い行政処分を課す」(藤井さん)よう監督官庁の監視強化も併せて求めた。

藤井さんは「多くの中小企業が不条理不利益に苦しんでいる」と訴える(9月28日 霞が関/弁護士JP編集部)
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