香川照之氏、巨人・坂本選手のスキャンダル報道 「示談」成立後の“情報流出”は問題ナシ?

中原 慶一

中原 慶一

香川照之氏、巨人・坂本選手のスキャンダル報道  「示談」成立後の“情報流出”は問題ナシ?
トラブルの内容を口外しないという契約があっても…(beauty-box/PIXTA)

最近、世間を騒がせたスキャンダルといえば、俳優の香川照之氏(56)の「性加害疑惑」とプロ野球読売ジャイアンツの坂本勇人選手(31)の「中絶トラブル」だろう。

俳優の香川照之氏は2019年7月、銀座のクラブでホステスの女性のブラジャーを剝ぎ取って胸を触るなどしたため、被害女性がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患ったと『週刊新潮』(2022年9月1日号)が報じた。

記事によれば、香川氏の暴走を止められなかったという理由でクラブのママは民事で訴えられたが、すでに東京地裁に提出された訴訟請求は取り下げられているという。その訴状には、〈訴外香川〉という表現で、香川氏の狼藉の一部始終が記されていたが、訴状を取り下げていることから、香川氏とも示談は成立していると見られているという。

しかし、香川氏はこれにより、朝の情報番組『THE TIME,』などのレギュラー番組や、『トヨタイムス』をはじめ5社以上あったCMを降板。瞬く間に人気俳優の座から転落してしまった。

一方、巨人の坂本選手は、2年以上前に知り合った20代のA子さんに対し、性行為のたびにアフターピルを飲ませていたが、妊娠させ、「おろすならおろすで早い方がいいやろ?」「おろしてくれるなら会うよ」などと迫り、自殺未遂に追い込んだと9月10日配信の『文春オンライン』が伝えた。

記事はA子さんの親友による告発を中心に構成されており、坂本選手とA子さんのLINE上での生々しいやりとりも掲載されている。同誌の取材に対し、球団側は、互いの代理人弁護士を通じて示談が成立していると回答している。

さらに坂本選手は、2018年、宮崎市内のキャバクラで知り合った女性をホテルに誘ったが断られたことに腹を立て、その女性にかみついてトラブルとなったと今年6月、『週刊新潮』が報じていた。その際は、球団の代理人弁護士を通じて示談金550万円を払ったという。

これらのスキャンダルに共通するのは、示談が成立して数年が経過した後に週刊誌に情報が持ち込まれ、世間に知れ渡ることになったということだ。夕刊紙記者はこう話す。

「今回のケースは分かりませんが、本人をおとしめようとしている別の勢力や、第三者を装った被害女性本人がネタ元になっている場合はままあります」

示談後にこうした醜聞を報じることの是非についてはSNS上で意見が分かれるところだが、それはいったん、置いておくとして、現実的に報道が出てしまう以上、こうしたトラブルは、示談が成立しても「一件落着」とはならないのが現実なのか。

「非公開特約」が万全ではない理由

一般的に「示談」とは、当事者間で何らかのトラブルが起こった場合、裁判手続きによらず、当事者間で話し合い、損害賠償責任の有無や金額などを合意し、民事上の解決とすることを指す。

具体的には双方の代理人弁護士を通して、合意文書を作成することになる。さらにトラブルになったことやその内容を口外しないという「非公開特約」やそれを破った場合の制裁金についても書き込まれることが多い。

「だからと言って万全という訳ではないのです」と言うのは、犯罪や刑事事件の対応も多い杉山大介弁護士だ。

「『示談』はあくまで当事者間の“契約”に過ぎません。契約なので、契約した双方の当事者だけを拘束することになります。違反金や措置を設定することはありますが、それを破ったからと言って、即座に誰かが制裁してくれる訳でもないです。違反の事実を立証して、契約違反を主張立証して、初めて法律上の効果が生じるところまで、一般的な契約と一緒です。ですから、“非公開特約”は書けば必ず目的が達せられるわけではありません」

“相手方”から情報がもれてしまっても…

となると、今回の香川や坂本のケースでネタ元が本人だったと仮定した場合、香川や坂本サイドのとりうる対抗策として、『契約違反』を訴えるということは考えられるのか。

「合意が違反されているということになると、『示談契約の解除』は可能となりますが、そうすると示談で得た効果も消えてしまいますからね。違反金を設定していたとしたら、契約に基づきそれを請求、後は名誉毀損などの問題にする方法はあるのでしょうが、これだけ騒がれた挙げ句に、問題を蒸し返してメリットがあるかというと、なかなか難しいかと思います。

示談の合意前に第三者に伝えたとしても違反ではないですし、示談相手当人に何か請求するにしても反論の余地は多数あります。その情報をマスコミに垂れ込んだ第三者に対し名誉毀損を問うという手もあるのでしょうが、実際、相手方を特定して情報を流したことを立証するのは容易ではありません」(杉山弁護士)

つまり、現実には、示談が成立していても、相手方から情報がもれてしまったら対抗措置をとるのも容易くはないのが実情のようだ。杉山弁護士が続ける。

「そもそも示談に応じるということは、被害者側も『その問題を終わりにしたい』という思いも大きいと思うので、そんなに恨んでいるならそもそも示談にはならないと思います。だからこそ、今回の記事のように当事者を無視して勝手にネタにするのは卑劣な行為だと思いますね。まあ、あくまで記事のとおり、友人などが流出させているという前提での話ですが…」

“もめ事”はいずれ世間にバレる!?

しかし、この手の話は、われわれ一般人でも注意が必要だというのは、前出の夕刊紙記者だ。

「特に男女関係のトラブルについては禍根を残しやすい。職場での不倫関係の解消や、中絶トラブル、セクハラなどで、相手女性ともめ事になり、弁護士を通して示談で解決した場合などでも、心理的な恨みが残っていると、同僚や友達に愚痴られてまたたく間にうわさが広がってしまうケースがあるようです。そうした下世話なゴシップほど広がりやすく、人の口に戸は立てられませんからね」

やはり“天網恢恢(てんもうかいかい)疎にして漏らさず”。たとえその場は示談で収まったとしても、悪事はいずれ世間にバレるということを、肝に銘じておいたほうがよさそうだ。

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