“先着順”ゲットも「他人の子ども」に譲った女性 「おかしくないですか?」憤りの落としどころ

弁護士JP編集部

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“先着順”ゲットも「他人の子ども」に譲った女性  「おかしくないですか?」憤りの落としどころ
先着イベントは“並び順”が大前提だが…(viola/PIXTA)

動物の生態を知ることができ、直接触れ合えるケースもある動物園や水族館のイベントは、子どものみならず大人も十分に楽しむことができる人気のアクティビティだ。

「子ども限定イベント」もあるが、多くは年齢などの制限を設けておらず、どのような属性の人でも楽しむことができる。

そんな水族館のイベントに並んだ40代女性が、自分の身に降りかかった”理不尽な出来事”をインターネット掲示板へ投稿して注目をあつめた。

「子どもがいるので変わってください」

投稿によれば、”子なし夫婦”である女性は水族館が大好きで、夫との旅行中に訪れた水族館で先着30組限定の有料体験「ペンギンとの撮影会」に並んだという。

遅く着いたがなんとか最後の1組として整理券をゲットでき、ほっとしていた時に31組目の親子から「子どもがいるので(順番を)かわってください」と頼まれたと綴る。

女性は「旅行で遠くから来ている」「イベントを楽しみにしていた」ことを伝え断ったが、子どもが泣いたことなどから水族館の担当者にも「できたら変わってあげてください」とお願いされ、「泣く泣く」変わることになった顛末を報告。

その場では順番を変わってあげた女性だが、納得がいかず「おかしくないですか!?」と最後に訴えたもの。

断り続けてもよかったの?

記事に寄せられた200件近いコメントは、「子持ちだけど水族館の対応は変だと思う」「親は子どものワガママを他人に押し付けてはいけない」「そういう状況になったら私も断れないけど、ずっと親子を恨んじゃうかも」といった共感の声が多数寄せられた。一方、「子ども向けとは書いてなくても、実際は子ども向けなんだと思います」「子どもと同じレベル」という意見もあった。

また、中には「自分ならそれが水族館の方針なのかを確認した上で、後日損害賠償請求を行う」 といった”過激”な意見も飛び出した。

自身も動物カフェ巡りが趣味という青沼貴之弁護士は理不尽な出来事に理解を示しつつも、「どのような行為が違法な行為に当たるのか、その行為によって何か損害が発生しているのか、その損害を水族館に問うことができる根拠について立証することは困難であるため、現実的ではない」と語る。

では”先着順”であってもイベントの主催者からの「お願い」を断ることはできないのだろうか。青沼弁護士に聞いた。

施設内で行われる先着順の有料体験イベントは、法的にはどのような位置付けなのでしょうか?

青沼弁護士:先着順によってサービスを提供するという意味では景品表示法上の「総付景品」(※)と認められる場合があるかもしれませんが、今回のようなケースでは「総付景品」と認められるにはかなりハードルが高いと思います。

※総付景品…一般消費者に対し、懸賞によらずに提供される景品類

先着順にもかかわらず、あとから来た人に譲ってほしいとイベントのスタッフから言われた場合、あくまでも「先着順」を主張していいのでしょうか? それともイベントを主催している(今回のケースであれば水族館)スタッフの言うことを聞くべきでしょうか?

青沼弁護士:「先着順なので譲れません」というご主張は正当なものだと考えられます。

それでも、その場の雰囲気等からスタッフの意見を聞かざるを得ない場合もあるでしょうし、激高してスタッフに暴力等を振るってしまうと刑事罰が科されるおそれもあるので、その場に応じた柔軟な言動が求められるかと思います。

もしすでにお金を払っている場合であり、順番を変わったことによりそのサービスを受けられなくなってしまった場合には、返金手続きを求めるようにしましょう。

どのような理由があるにせよ……

今回のケースは、おそらくスタッフが”子ども連れ”のお客さんに気を利かせたのだと思いますが、子ども優先と告知していないイベントにおいて、子どもを優先するという意図で順番を変えられるのは法的に不当とされませんか?

青沼弁護士:法的には不当とまでは言い切れず、あくまでマナーの問題かと思います。

今回、水族館はどのような対応をとればよかったのでしょうか?

青沼弁護士:前もって「先着順」であることを宣伝していたのであれば、どのような理由があるにせよ、お客さんの属性に関係なく先着順を優先すべきだったと思います。

後ろのお客さんも「早く並べなかった自分たちが悪い」「今度は早く来て並ぼう」と考えるに至ったでしょうし、水族館としてもまた来館してもらえたのではないかと思います。

もし先生が先着順の最後のひとりで、後ろの人から「順番を変わってくれ」と言われた際はどのように対応されますか?

青沼弁護士:せっかく来て並んだからサービスを受けたいなと思いますが、後ろに並んでいる人が必死にお願いしてきた場合には代わってあげるかもしれません…。必死にお願いされているのにむげにお願いを断って嫌な気持ちになるよりは、譲ってあげてその1日を楽しく過ごした方が幸せかなとは思います。

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