大阪王将“ナメクジ炎上”店舗が閉店… 法改正で「衛生管理強化」も“すり抜け”が発生したワケ

弁護士JP編集部

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2022年09月01日 09:52

大阪王将“ナメクジ炎上”店舗が閉店…  法改正で「衛生管理強化」も“すり抜け”が発生したワケ “ナメクジ騒動”が起きた「大阪王将 仙台中田店」(8月17日/弁護士JP編集部)

「厨房にナメクジがいる」などのツイートがきっかけで大炎上した「大阪王将 仙台中田店」が、フランチャイズ契約解除により8月26日をもって閉店した。

この騒動を巡っては、保健所の立ち入り検査が行われたものの、告発にあったようなナメクジの発生などは確認されなかった。しかし、食中毒の約40%は飲食店で発生しており(※1)、飲食店がずさんな衛生管理をしていれば、利用客にとって大きな不安要素となることは間違いない。

(※1)厚労省「令和3年食中毒発生状況」より。新型コロナ流行以前は約60%が飲食店で発生していた年度も

ナメクジ騒動「刑事上の責任まで問われる可能性も」

「食中毒事件」といえば、2011年に5人が亡くなった「焼肉酒家えびすユッケ集団食中毒事件」を思い浮かべる人も少なくないのではないだろうか。この事件では、牛肉ユッケを食べた客が相次いで腸管出血性大腸菌(O-111)による食中毒で死亡・重症化。遺族らが起こした民事訴訟では、2018年に運営会社へ1億7000万円の損害賠償命令が出されたものの、刑事事件としては「事件当時、原因の大腸菌は知られておらず事件を予見できなかった」として不起訴処分となっている。

これについて、食中毒事件に詳しい徳永慎一弁護士は「衛生管理について、飲食店に刑事上の法的責任が生じるには『結果を予見することができたのにもかかわらず、それを回避する義務に違反した』ことが必要になります」と指摘する。

飲食店のずさんな衛生管理によって食中毒が発生した場合、店側には刑事・民事ともに法的責任が発生し得る。

  • 刑事上の法的責任
    (店長等に対する)業務上過失致死傷の罪(刑法211条前段)
  • 民事上の法的責任
    慰謝料としての損害賠償責任(民法709条・415条)、PL法(製造物責任法)に基づく損害賠償責任

刑事上の法的責任である「業務上過失致死傷罪」は、「業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者」に対して成立する。

これを踏まえて、「焼肉酒家えびすユッケ集団食中毒事件」が不起訴処分となった理由について、徳永弁護士は以下のように話す。

「飲食店の『業務』には、『提供する食事によって食中毒を発生させ、危害を加えるおそれ』が含まれています。しかし、当該事件で食中毒の原因となった大腸菌(O-111)は事件当時知られていなかったため、店側は業務(=食事の提供)によって食中毒を発生させるという“結果”の予見ができませんでした。よって、それを回避するための“注意”をすることも不可能であったことから、刑事上の法的責任である『業務上過失致死傷罪』が成立せず、不起訴処分に至ったということでしょう」(徳永弁護士)

では、大阪王将の「ナメクジ騒動」店舗については、店長等に刑事上の法的責任が発生する可能性はあるのだろうか。

「厨房にナメクジがいる場合というのは、厨房内における清掃が十分に行き届いているとはいえないため、飲食店において果たすべき注意義務を怠っていたとされ、過失が認定されるケースも考えられます。その場合、民事上の責任のみならず、刑事上の責任まで問われることになるかもしれません」(徳永弁護士)

法改正で衛生管理強化も…“すり抜け”が発生したワケ

飲食店の衛生管理については、国際的な手法(※2)である「HACCP(ハサップ)」に沿って実施することが、食品衛生法の改正によって2021年6月より原則すべての食品等事業者へ義務付けられている。

(※2)国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関「食品規格 (コーデックス) 委員会」が発表し、各国へ採用を推奨している

厚労省のホームページによると、HACCPとは、

  • 「食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法」

であり、導入することで、

  • 「従来の抜取検査による衛生管理に比べ、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能となるとともに、原因の追及を容易にすることが可能となる」

という。

大阪王将も、問題となった仙台中田店を含む全351店舗で、今年5月11日〜7月20日に「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に準拠した衛生監査を行っていた。しかし、Twitterの告発が事実だとすれば、結果的にHACCPに沿った衛生管理で“すり抜け”が起こってしまったということになる。

HACCPの課題について、徳永弁護士は以下のように指摘する。

「厚労省によると、HACCPに沿った衛生管理では、食品等事業者自らがガイドラインに沿って衛生管理計画や手順書を作成することになっています。つまり、自分たちの都合の良い観点・評価を記載することもできてしまうのです。

それだけでなく、HACCPは最近義務付けられたもので、その重要性や知識を習得している食品等事業者が十分にいるとは思えません。そのため、衛生管理計画や手順書等に適切な記載がなされているとは限りません。

また、厚労省が公表しているガイドラインの内容が複雑であり、かつ衛生管理におけるすべての危険を予測するのは困難であるため、細心の注意が必要です。

このような問題により、いわゆる“すり抜け”が起こってしまう可能性があるかと思われます。そのため、HACCPの重要性や内容をそれぞれの食品等事業者が熟知することが、HACCPの課題の一つではないのかと考えます」(徳永弁護士)

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