価格「据え置き」でも内容量「減」の“不意打ち”… ステルス値上げに「違法性」はない?

弁護士JP編集部

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価格「据え置き」でも内容量「減」の“不意打ち”…  ステルス値上げに「違法性」はない?
8月だけで飲食料品2431品目が値上げした…(sasaki106/PIXTA)

値上げラッシュが止まらない。

原材料費の高騰や原油高、円安も影響して、食品や電気・ガスといった生活に必要不可欠な商品、サービスなどの値上げが続き、家計は大きな負担を強いられている。

帝国データバンクの調査によると、主要飲食料品メーカーの値上げは8月だけで2431品目に上り、9月以降、年内に8043品目がさらに値上がりすると見られている。

帝国データバンク「『食品主要105社』価格改定動向調査(8月)」レポートより

さらに年初に比べて食品各社の価格改定への抵抗感が低下していることで、コスト高を背景に価格改定を行うケースは引き続き増加していくとみられ、再値上げ・再再値上げといった動きもあるようだ。

このような値上げの中で、商品の「価格」自体は据え置きだが、「内容量」が減らされている、いわゆる「ステルス値上げ」(シュリンクフレーション)が話題に上ることも多い。知らぬ間に、いつも買っているお菓子や食品の量が減っていることで、「ダマされた」ような感覚に陥る消費者も少なくないだろう。

告知なく商品の容量が減らされる「ステルス値上げ」。消費者にとってはどうにも腑に落ちない気持ちになるとはいえ、何らかの“罪”に問うことは現実的なのだろうか。

ステルス値上げに“違法性”はあるのか

消費者問題に詳しい永井麻里江弁護士は、「結論として、違法性はないと思います」と語る。

「食品表示の内容量については計量法で規定されており、計量法に則った表示がされていれば、違法ではありません。また、企業は食品の内容量を自由に変更することができます」(永井弁護士)

しかし、たとえば定番商品を買う際に容量を気にせず、「この牛乳なら1ℓ」と購入し、帰宅後900mlへの変更に気づくこともあるだろう。

永井弁護士は、消費者は「ステルス値上げの可能性」を認識しておくことが大事だといい、「内容量を確認してから」の購入を呼びかける。

「企業がパッケージや商品につけるシールなどで明示すれば誠実だと思いますが、明示しなければ違法なのかと問われれば、違法ではありません。

ホームページなどで減量を明示してくれたらとも思いますが、消費者としても、商品を買う前にわざわざホームページを確認することもありませんので難しいですね…」(永井弁護士)

消費者が「許してくれた」値上げの背景

値上げの告知により「消費者離れ」を懸念する企業が多いことは想像できる。しかし、あえて「値上げ」を伝え、消費者に陳謝して売上を維持した企業がある。

夏の定番アイス「ガリガリ君」などを製造する赤城乳業だ。

赤城乳業は「ガリガリ君」を60円から70円にする値上げに踏み切った2016年、会長をはじめとする社員100人以上が頭を下げるという前代未聞のテレビCM、新聞広告を打ち出した。

ガリガリ君の販売価格を10円値上げした際の企業広告(提供:赤城乳業)

このような姿勢に対しSNSなどでは「誠意を感じる」「許さざるを得ない」と好意的な意見が続出した。さらには「”食べやすいサイズになって新登場”と言わずに、正直に言って値上げした方が好印象だってアカギ乳業から学んでほしい」と他の企業のステルス値上げに対する苦言も見受けられた。

赤城乳業の売上高を見ても、値上げに踏み切った2016年の売り上げは前年に比べてガリガリ君の”頭”ふたつ分も伸びている。

赤城乳業「売上高の推移」より

値上げに対する謝罪広告だけが売り上げに影響した訳ではないとしても、消費者の心を掴んだ施策のひとつであったことは間違いないだろう。

いまや企業の”定番手法”ともいえるステルス値上げ。一種の「騙し打ち」のようなやり方に対する反動は企業が想像する以上に大きい。消費者が社会情勢から「値上げ」自体はある程度許容しつつある土壌を鑑みれば、企業にはより一層の誠実さやコミュニケーション能力が求められているのかもしれない。

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