沖縄で少年と警官が「職務質問」巡りトラブル…「やってはいけない」“職質”のNG対応とは?

中原 慶一

中原 慶一

沖縄で少年と警官が「職務質問」巡りトラブル…「やってはいけない」“職質”のNG対応とは?
「やましいこと」がなければ職務質問に応じるという姿勢が適切だが…(※写真はイメージです hamahiro / PIXTA)

街中で警官に呼び止められ、「免許証を拝見」、「カバンの中を見せてください」などと言われた経験のある人は少なくないだろう。やましい気持ちがない一般人ならば、忙しい中、あらぬ疑いをかけられ、気分が悪くなる人がほとんどのはず。何かとトラブルが多いのが、警察官による「職務質問(職質)」だ。

7月には、沖縄県警宮古島署に勤務する30代男性警部補が宮古島市内で職務質問した10代の少年の態度が悪かったことに腹を立て、少年のすねを蹴り、内出血のけがをさせていた。報道によれば、市内のホテル従業員が「部屋の中が騒がしい」と通報があり、警部補を含む警察官2人が駆けつけた。しかし、宿泊していた少年らの態度に「職務質問への反応が鈍いことにイラ立って衝動的に蹴ってしまった」と話しているという。その後、署は保護者に経緯を説明したという。

職務質問の「権限」は“無限”ではない

そもそも警察官はどのような権限で職務質問をするのか。刑事弁護などの対応も多いべリーベスト法律事務所・鹿児島オフィスの野村茂雄弁護士はこう話す。

「職務質問は『警察官職務執行法』によって定められています。その2条1項には、『警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、もしくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる』と規定されています。

これらに基づいて警察官に権限が付与され、職務を遂行しているという訳です。つまり、何らかの犯罪をした、もしくは犯罪をしそうだと思われる人物に対して行われるのが職質ということです」

通常、職務質問は、指名手配中の犯人と年齢、容姿、服装などが似ていたり、警察官から見て挙動不審な言動をしていると思われる人物に対して行われる。

「ただし、職務質問の権限は無限ではなく、膨大な判例などの知識を共有し『このようなことはやってはいけない』というようなことが警察内で事細かに決められています。質問だけでは捜査の実効性が保てない場合は、状況によっては『カバンを開けさせて所持品検査をする』ことも許されるケースがあります」(野村弁護士)

職務質問を「拒否」することはできるが…

それでは、職務質問された時の正しい対処法はどのようなものなのか?

「なんらかの『不審事由』、つまり“やましいこと”がなければ、職務質問に応じるという姿勢が適切ではないでしょうか。それが一番早いので、基本的には『どうぞ』という態度をおすすめします。職務質問自体は任意捜査なので、拒否することはできる。

しかし、先ほども申した通り、警察官は、警察官職務執行法に基づいて『捜査の必要がある』と判断したから職質をしてきているのです。“信念”などで拒否する場合は、その分、何も関係ないのに長引いてしまうということは認識しておくべきでしょう」(野村弁護士)

「どうしても応じたくない」場合はどうする?

やましさがなければ素直に応じて、世間話のひとつでもしながら、サッサと疑いを晴らしたほうがいいようだが、現実的には高圧的で態度の悪い警官がいるのもまた事実。さる夕刊紙記者はこう話す。

「ユーチューバーの『神戸のわかおじ』が6月28日に自身のユーチューブチャンネルにアップした「【大阪府警】警察官のあり得ない職務質問(?)」と題した動画が炎上しています。大阪府警の警察官が、免許をすぐに提示しなかった撮影者に対し、『ガタガタさっきから文句いうなやコラ! オイ!免許持ってへんのやろ?』、『はよ出せや』、『なにがしたいねん、さっきから!』などと怒気迫る口調で迫る様子が収められています。

府警は、東京スポーツの取材に対し、『動画がアップされていることは把握している』とした上で、『薬物容疑の車・不審者を発見して追随していた』として、処分などについては、『現在も調査中で、相手さまともやりとりを継続させていただいている。(処分などは)今後の話になる。今後、しっかり調査し、不適切と思われる点についてはしっかり指導していく』と答えています。しかしこういう事例は氷山の一角でしょうね」

こうした場合の対処法について、前出の野村弁護士は続ける。

「繰り返しになりますが、やましさがなければ素直に応じる方が精神衛生上ラクです。しかし、その警察官があまりにも横暴で、どうしても応じたくないと思った場合などは、『これは任意ですよね? 念のために撮らせていただきます』とことわった上で録音や録画をする、あるいは『私を職務質問する理由は何ですか?』と丁寧な口調で聞くといいでしょう。そうした対応は、違法にはならないと思います」

前出の夕刊紙記者もこう続ける。

「一番、やってはいけないことは、警官の挑発に乗って感情的になり、体当たりして走って逃げたり、顔を近づけて来た警官を手で押し返したりすることでしょうね。場合によっては『公務執行妨害』で現行犯逮捕になるケースもある。気分は害されますが、やましさがないのであれば、警官も仕事をしているのだと割り切って、協力しておくのが、確かに無難でしょう」

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