新時代の「お墓」事情。2人に1人が「樹木葬」を選ぶ理由とは

弁護士JP編集部

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新時代の「お墓」事情。2人に1人が「樹木葬」を選ぶ理由とは
一口に「樹木葬」と言っても様々なタイプがある(mitu03 / PIXTA)

今、墓石の代わりに樹木を目印とする「樹木葬」が人気だ。

3月に公表された「第13回 お墓の消費者全国実態調査(2022年)」によると、2021年に購入されたお墓の種類は「樹木葬」が41.5%、「一般墓(※1)」が25.8%、「納骨堂」が23.4%と、樹木葬が主流となっていることが分かった。

調査を実施した「鎌倉新書(※2)」によると、2018年には約半数の46.7%が一般墓を購入していたというが、徐々に減少し、代わって樹木葬の需要が高まったという。

(※1)墓石を目印とするお墓

(※2)終活にまつわる様々なサービスを提供。日本最大級のお墓の情報サイト「いいお墓」も運営している

承継不要、低費用…樹木葬が人気の理由

樹木葬は、1999年に岩手県一関市の「知勝院」が里山の斜面に遺骨を埋葬し、花木を植えたのが始まりとされている。

樹木を目印にする以外に明確な定義があるわけではなく、知勝院のように山林の土に埋葬するものもあれば、公園のように整備された霊園に埋葬されるもの、お寺の一角を樹木葬のスペースにしているものなど、そのスタイルは多岐に渡る。樹木も、1人につき1本植えるケースもあれば、1本の樹木の周りに複数の遺骨を埋葬するケースもある。

樹木葬が増加した背景について、鎌倉新書の白井夢乃さんは「少子高齢化、核家族化、生涯未婚率の上昇といった社会的背景が大きく影響していると考えられます」と指摘する。

樹木葬は基本的に一代限りのもので、埋葬して一定期間(年忌法要に合わせて13年、17年など)が経過した後は合祀墓(他人と共同のお墓)に移されるため、承継者を必要としない。

また、墓石を建てるとなれば平均で100万円以上もの費用が必要になる一方、樹木葬の場合は石材に費用がかからないため、経済的負担が少ないこともメリットの一つとなっているようだ。

なお、樹木葬にかかる主な費用の内訳は以下。

  • 永代使用料:遺骨を埋葬する土地を使用するための料金
  • 埋葬料:納骨してもらうための手数料。納骨代
  • 管理費:お墓を管理してもらうための料金。樹木葬ではかからないところも多いが、かかる場合は合祀墓に移すまでの期間支払う必要がある
  • 銘板彫刻代:樹木だけでは誰のお墓か分かりづらいため、遺骨を埋葬した場所のそばにネームプレートを設置できるサービス。オプションとしている霊園が多い
  • その他:仏教式の場合は「お布施」など、埋葬のスタイルによって費用がかかる場合がある

「私有地だから」と勝手に樹木葬するのは違法

ところで「自然に還る」というイメージが強い樹木葬だが、どこにでも遺骨を埋めていいわけではない。「墓地、埋葬等に関する法律(以下、墓地埋葬法)」は、お墓を「墓地」と認められた場所にしか作ってはならず、埋葬する際には市町村長(特別区の区長を含む)の許可が必要と規定している。

  • 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない(第4条第1項)
  • 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む)の許可を受けなければならない(第5条第1項)

生前愛していた樹木が私有地にあるからといって、そこへ勝手に埋葬して「樹木葬」とすることは墓地埋葬法違反となるため、注意が必要だ。

お墓の“ニューウェーブ”は樹木葬以外も

従来のかたちに捉われないお墓は、樹木葬以外にも選択肢が増えてきている。

  • 散骨・海洋散骨
    遺灰(パウダー状にした遺骨)を海や山にまく埋葬方法。墓地埋葬法が想定していない埋葬方法のため、厚生労働省が2020年度にガイドラインを取りまとめた。専門の事業者も複数あり、海洋散骨の場合はクルーザーを貸し切りにできるプラン、他の遺族と相乗りで散骨するプラン、散骨を代行委託できるプランなどがある。
  • 宇宙葬
    散骨の一種。遺骨や遺灰の一部をカプセルに入れて、バルーンやロケットに乗せて宇宙空間に打ち上げる。成層圏で散骨するもの、月面に遺骨を置くものなど事業者によって多彩なプランがある。
  • バーチャル墓地
    東京藝術大学発のベンチャー企業が実施しているサービスで、「虹彩」(瞳)を使ったアート作品をバーチャルギャラリーに展示する埋葬方法。アート作品はブロックチェーン(NFT)に守られているため、劣化や改ざんから守られながら未来へと受け継がれる。
  • ガーデニング霊園
    お墓の周りに芝生、タイル、レンガなどが敷き詰められていたり、噴水や池、ベンチがあるなど庭園のような雰囲気の霊園。造園家がプロデュースしていることもある。
  • レンタル墓 / サブスク墓
    期間購入できるお墓で、レンタル終了後は名前や戒名を刻印する部分を取り替える。転勤が多く定住先が決まらない人などにニーズがあるという。
  • 自宅墓(手元供養)
    墓地埋葬法には「遺骨をいつまでに納骨しなければならない」という規定はないため、遺骨を納骨せずに自宅で保管する方法もある。最近では骨壺を納めておけるスペースを備えた仏壇も。

個性的なお墓が続々と登場しているが、今後、お墓のあり方はどのように変化していくのだろうか。

「飲食業界の『タピオカブーム』のようなスパンでトレンドが動くことはないと思います。実際に当社調査でも樹木葬を選んだ方の割合は、ここ3年で見ると横ばいです(2020年は41.5%、2021年は46.5%、2022年は41.5%)。

しかし、少子高齢化や承継者不足といった問題はすぐに解決するものではありません。今後も徐々にではありますが、社会的背景に合わせた新しい発想のお墓が出てくるのではないでしょうか」(鎌倉新書・白井さん)

自身や家族にどのようなお墓がマッチするのか、お盆の機会に考えてみるのもいいかもしれない。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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