「花火」遊びで"想定外”の道交法違反も…"夏の風物詩”近隣トラブル回避術

弁護士JP編集部

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「花火」遊びで"想定外”の道交法違反も…"夏の風物詩”近隣トラブル回避術
花火を安心して楽しめる場所とは…?(coco / PIXTA)

夏本番の今、スーパーやコンビニの店頭で花火を見かける機会も多くなった。

しかし、公園でのボール遊びや、ベランダでの喫煙などにも厳しい目が向けられる昨今、「どこで花火をすればいいのか分からない」という人も少なくないのではないだろうか。

道路や公園で花火をしてもいい?

「たとえ車通りが少なくても、路上で花火をすれば道路交通法に違反する可能性があります」

そう指摘するのは、2児の母であり、自身も外遊びのマナーについて考える機会が多いという品川菜津美弁護士。

道路交通法第76条第4項では「何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない」として、

  • 道路で、交通の妨害となるような方法でしゃがんだり、立ち止まることなど(第2号)
  • 人や車両を損傷するおそれのある物を投げたり発射したりすること(第4号。火のついたタバコのポイ捨てはこれにあたる)
  • そのほか、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為(第7号)

などを禁止し、5万円以下の罰金を科すとしている。

一定の世代以上で「昔は自宅前の道路で花火をした」という記憶を持つ人もいるかもしれない。しかし、昨今は花火のみならず道路で遊ぶ子どもたちを「道路族」と呼びトラブルに発展するケースも少なくない。道路交通法を守ることは大前提として、「少しだけなら…」と気軽な気持ちで花火をすれば、思わぬトラブルを引き起こす可能性があることも、肝に銘じておくべきであろう。

また公園で花火をすることについて、品川弁護士は「事前のルール確認の徹底」を呼びかける。

「手持ち花火はよいがロケット花火が禁止、そもそも花火自体が禁止されているなど、自治体、公園によってもルールは様々です。花火を禁止する時間帯やエリアなどを条例で定めている自治体もあります。

最低限の準備として、これから遊ぼうとしている場所にどのようなルールが設けられているのかは、事前にしっかり確認するようにしてください」(品川弁護士)

近隣トラブルにならない“ボーダーライン”とは

私有地である自宅の庭などで花火する場合は、どのようなことに気を付ければよいのだろうか。

「もちろん、私有地だからといって好き勝手に遊んでいいわけではありません。煙や騒音を理由に近隣トラブルに発展し、場合によっては損害賠償請求される可能性もあります。

近隣トラブルにおいて損害賠償が認められるケースでは「受忍限度」(一般的に、社会生活上、我慢しなければならない限度を超えているか)がポイントとなります。分かりやすく言えば、『ご近所付き合いだからお互いに迷惑を掛けることもあるけれど、これ以上は我慢できませんよ』というボーダーラインのようなものです。

どのような場合に受忍限度を超えるのかは、やってしまった行為の内容、頻度、期間、発生した被害の内容など様々な事情から総合的に判断されることになります。条例や集合住宅の管理規約に違反しているかなども判断材料になると思われるため、そういったルールに違反している場合には、受忍限度を超えていると認められる可能性も高くなると考えていいでしょう。

いずれにしろ、万が一花火による騒音や煙が近隣トラブルに発展しそうになった際には、素直に謝罪して、今後は迷惑がかからないような場所や時間帯に花火を楽しむようにするのがよいのではないでしょうか」(品川弁護士)

ほとんど見なくなった「ロケット花火」

スーパーやコンビニで販売されている花火は「おもちゃ花火」と呼ばれており、「火薬類取締法施行規則」によって薬量、形状、構造上の基準などが定められている。法律上は「回転することを主とするもの」「走行することを主とするもの」のように8種類に分類されるが、メーカーや機能別に見れば、その数は何百種類にも及ぶという。

花火を安全に楽しむための周知活動などをする「日本煙火協会」の専務理事・河野晴行さんは、昨今のおもちゃ花火の消費について「『ロケット花火』『ねずみ花火』など飛んだり走ったりする花火はかなり減っており、ほとんどが手持ち花火になっています」と言う。

「おもちゃ花火は、本来であれば遊びながら火の扱い方や、回転・光の変化といった様々な事象を学べるものです。しかし最近では、『危ないから』と子どもに花火をさせたがらない親が多かったり、花火ができる場所も減ったりしています。だからこそ、花火の正しい使い方やマナーをきちんと知っていただくことが大切なのではないでしょうか」(日本煙火協会・河野さん)

花火の遊び方とマナーのポイント

たとえ花火することが許された場所であったり、近隣の住民が花火で遊ぶことに寛容だったとしても、間違った使い方をすればトラブルに発展する可能性は高まる。また、場合によっては火傷や火災など、重大な事故に繫がりかねない。

日本煙火協会では、花火の正しい扱い方として、11のポイントを伝えている。

  • おもちゃ花火といっても花火の原料は火薬類。花火に書いてある遊び方、警告・注意書きをよく読んで、必ず守る。
  • 花火を人や家に向けたり、燃えやすい物のある場所で遊ばない。衣服に火が付かないように注意する。
  • 手持ちの筒もの花火は、手の位置に注意する。
  • 風の強いときは、花火遊びはしない。
  • 水を用意する。
  • 大人と一緒に遊ぶ。
  • たくさんの花火に、一度に火を付けない。
  • 正しい位置に正しい方法で点火する。
  • 花火は、途中で消えても筒をのぞかない。点火するときも筒先に顔や手を出さない。
  • 花火をポケットに入れない。
  • 大変危険なので、花火は絶対に分解しない。

「マナーとしては、深夜に遊ばない、大人数で騒がない、風向きに注意する(まずは1本だけ火をつけて煙の流れを観察する)、きちんと後片付けをするといったことも重要です。

ロウソクを使う場合は、空き缶の底からクギを打って芯にすると、火が消えにくく、倒れて燃え広がるリスクも減らせます」(日本煙火協会・河野さん)

ルールやマナーを軽視することは、花火で遊べる場所を少なくすることにも繋がる。周囲への気遣いを忘れず、夏の風物詩を楽しんでほしい。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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