子どもがコロナ感染「欠勤中は無給」でも泣き寝入り!? 「小学校休業等対応助成金」の利用が進まない理由とは

弁護士JP編集部

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子どもがコロナ感染「欠勤中は無給」でも泣き寝入り!?  「小学校休業等対応助成金」の利用が進まない理由とは
助成金が使えず大幅な収入減に悩む人も少なくない(mits / PIXTA)

「小学校休業等対応助成金」が9月末まで延長されることとなった。子どもが新型コロナウイルスに感染した場合などに、働く親の休業・収入減をサポートするために作られたこの制度。しかし創設当初より、スムーズに申請できないなど使いづらさが指摘されており、予算執行率も4割程度(2020年度)と、十分に活用されていない実態が明らかになっている。

制度の活用に「消極的」な企業が多い理由

首都圏青年ユニオンが実施した「コロナ禍での子育て・働き方アンケート2022」によると、新型コロナウイルスの影響で子どもを預けられなくなり、休暇・時短を取得した人のうち、その期間の給与について「賃金は出ていない」と回答した人は53%だった。

「小学校休業等対応助成金」は企業が主体となって申請する仕組みだ。従業員の子どもが新型コロナウイルスに感染して小学校や保育園を休まざるを得なくなったり、新型コロナウイルスを理由に小学校や保育園が休業した場合、年次有給休暇とは別に有給休暇を取得させれば、事業主が助成金を受け取ることができる。

ところが、事業主負担なしで活用することができるのにもかかわらず、創設当初から制度の活用に消極的な企業が後を絶たなかった。首都圏青年ユニオンで「小学校休業等対応助成金」の団体交渉を担当する増田麻衣子さんは「子どもを理由に休むのは自己責任だとする企業がまだまだ多い」と指摘する。

企業が助成金を活用しない場合は、従業員が個人申請することもできる。ところが個人申請の場合にも、雇用主である企業の協力を得られなければ制度を利用できない仕組みになっているのだ。

  • 個人申請の流れ
    ①勤務先の事業所がある都道府県の労働局「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」に電話(平日8時30分~17時15分)
    ②労働局から事業主に、小学校休業等対応助成金を活用するよう働きかけを行う
    ③②で事業主が助成金の活用に応じない場合、労働者が個人申請できるよう、労働局から事業主に「個人申請」へ協力するよう働きかけを行う

「小学校休業等対応助成金」には強制力がないため、労働局は企業へ「働きかけ」を行うことしかできない。前述の首都圏青年ユニオンの調査によると、仕事を休んでいる期間中に「賃金は出ていない」と回答した人のうち、「個人申請を活用して給付を受給した」人はわずか8%に過ぎなかった。

個人申請は「欠勤扱い」になる

個人申請の受給が進まない背景として、首都圏青年ユニオンの増田さんは「当事者が申請をためらうケースも少なくない」と指摘する。

「企業が申請を行う場合は『有給扱い』となりますが、個人申請の場合は『欠勤扱い』となってしまいます。給与査定に影響する懸念から、年次有給休暇を切り崩したり、無理して仕事とお子さんのケアを両立させる方も少なくありません」(増田さん)

欠勤・無給が個人申請の条件となっている(厚生労働省「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口について」より)※赤線部分加工

そもそも個人申請ではなく、初めから企業が「小学校休業等対応助成金」を活用していれば、働く親たちは安心して子どものケアに専念することができる。しかし冒頭で紹介したように、現実には子どものケアのために仕事を休み、その期間に給料が発生することに消極的な企業も少なくない。

「社会的に認識が広まっていないからこそ、国が主体となって企業へ周知する必要があると思います。国には、使う側にとってわかりやすく、スムーズに申請できるようにするところまでを“周知”と捉えて、制度を運用していただきたいです」(増田さん)

増田さんら首都圏青年ユニオンは制度の改善を求めて、7月中にも厚労省へ要請を行う予定だ。

「周知のことはもちろんですが、実は大企業に雇用されている方の場合、シフト制で働いている方以外は制度の対象外とされているため個人申請すらできず、泣き寝入りせざるを得ない状況となっています。一般的に『大企業』と聞くと、正社員で待遇がよくて…とイメージしがちですが、例えば大手飲食チェーンなどには非正規社員として、曜日固定で勤務している方も大勢いらっしゃいます。7月の要請ではそういった方たちの声を直接届けて、制度改善について訴えられたらと思っています」(増田さん)

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