政党の会合で高級焼き肉店内に「大」放置騒動。飲食店での“粗相”責任はどうなる?

中原 慶一

中原 慶一

政党の会合で高級焼き肉店内に「大」放置騒動。飲食店での“粗相”責任はどうなる?
いったい誰が何の目的で?(freeangle/PIXTA)

前代未聞の珍事件が発生した。

立憲民主党の愛知県議らの会食が行われた名古屋市内の高級焼き肉店で、退出後に人のものと見られる「大便」が発見されるという事件を「文春オンライン」が報じているもの。

記事によれば、この店の常連で県議会議員のA氏は5月8日、某市の市議やその秘書などと18時頃に8人で来店。個室でひとり8000円で飲み放題付きのコースを頼み、ビール、ウイスキー、ワイン、焼酎などをかなり飲んでいたという。

店が異変に気付いたのは、A氏による一本締めで20時30分頃に会がお開きとなり、A氏らが退出した約10分後。アルバイトの女性が部屋に入ると、異様な臭気が漂っており、部屋の奥、上座のテーブル付近の床に、明らかに人間のものと思われる、こぶし大ぐらいの丸々とした「汚物」があったという。汚物は周りにティッシュがあるわけでもなく放置されていたという。

店はすぐにそれを片付け、翌日にはプロの清掃業者を呼び、A県議やB市議にこのことを伝えた。写真をラインで送ると、翌日に2人は謝罪に訪れたという。しかし、ふたりとも「原因は分からない」と言うばかり。店を出た後、同席していた年配の議員がトイレに戻ったというが〝空白の10分間〟に一体、何があったのか。オーナーは警察に被害届を出したが、捜査は難航しているという。

文春は渦中のA氏も直撃しているが、A氏は、店を出る段階ではそうした異変はなかったこと、年配の議員がそうした行為に及ぶとは考えられず、その付近に座っていた4人に聞き取り調査をしたが、『絶対に身に覚えがない』と回答があったと答えている。しかし、激怒する店側に、説明に行く機会も受け入れてもらえない状態だという。

「脱ぷん行為等を分かってやっていたのか」

ところで一般的に飲食店で、酒を飲みすぎて泥酔し、嘔吐(おうと)や脱ぷん、失禁などの粗相をしてしまった場合、どのような罪に問われる可能性があるのか。犯罪や刑事事件の対応も多い、杉山大介弁護士が解説する。

「そもそも、犯罪というのは、原則、故意に行うから責任が発生するものです。仮に犯罪として立証する場合、『脱ぷん行為等を分かってやっていたのか』ということが前提になります。そのため、〝酔った上での過失〟ではなく、酔って気持ちに変化があったとしても、『自分のやっていることを分かってやっていた』という事実を立証できることが前提となります。その上で、本当に利用者が脱ぷんなどをしたのであれば、威力業務妨害や器物損壊という犯罪になります」

さらに、脱ぷんや嘔吐といった極端な例ではなくとも、店で泥酔し、高級な皿を割ってしまったり、店にあったオブジェを壊してしまったりした場合などはどうなるか。

「これは、酒に酔っていようが、故意が認められることになると思います。物を持ち上げて落としたりするなどのアクションは、生理作用よりもずっと自己コントロールしやすいものです。そのため、『分かっていてやった』という前提で考える方が自然です。罪としては威力業務妨害や器物損壊で同じですが、こうした事例は、犯罪や刑法の議論により乗りやすくなります」(杉山弁護士)

店側と示談の場合の「相場」は?

翻ってこの事件、くだんのA氏は、「何者かが、僕らかお店を陥れるためにやったのではないか…。僕らが部屋を出てから片付けまでの空白の時間のことをいろいろ考えてしまいます」とまで取材に対して答えているが、店側は、謝罪よりも何が起こったのか説明を求めている。これが仮にやったことは間違いないという事案であった場合、示談はどのようになるのか。

「示談になった場合は、お店なので清掃に要した費用や営業で部屋を利用できなくなったことにより失われた利益、そして汚物がまかれたといったことによるレピュテーションリスクを踏まえた慰謝料などが組み込まれるだろうと思います。そうすると、一般的な業務妨害や器物損壊事件で払われる数十万円よりは、かなり高値になるのではないでしょうか」

事件は続報がないことから、警察の広報文の発表はなく、いまだ犯人の逮捕には至っていないと予想されるが、なんともクサい話ではある。

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