文化庁「京都」へ移転の理由。中央省庁の「東京離れ」は進む?

弁護士JP編集部

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文化庁「京都」へ移転の理由。中央省庁の「東京離れ」は進む?
文化庁京都移転準備実行委員会公式サイト・文化庁京都へ「文化庁京都移転について」より(https://bunka-iten.kyoto/status/)

6月15日に発足54年となった文化庁が、京都へ全面移転する。

岸田総理は5月21日、新庁舎となる旧京都府警察本部本館(京都市上京区)の改修工事現場を視察。移転時期について「来年3月27日に、文化庁長官を始め京都の新しい文化庁での業務を開始する」「大型連休明けの5月15日に、職員の大半が移転することを目指す」と発言した。

文化庁によると、京都へ移る職員は約7割。国会対応、法案策定手続き、著作権担当など一部の機能は東京に残るという。

観光庁、気象庁…移転が幻となった省庁も

このプロジェクトは、第二次安倍晋三政権のもとで始まった。「地方創生」に力を入れる政府は、目玉政策の一つとして中央省庁の地方移転を推し進めるべく、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)以外の道府県から誘致提案を募集。2015年3月、7つの機関に8つの道府県から移転提案が提出された。応募一覧は以下。

  • 文化庁 → 京都府
  • 消費者庁 → 徳島県
  • 総務省統計局 → 和歌山県
  • 特許庁 → 大阪府、長野県
  • 中小企業庁 → 大阪府
  • 観光庁 → 北海道、兵庫県
  • 気象庁 → 三重県

このうち全面移転が実現したのは文化庁のみ。消費者庁と総務省統計局は応募した各県に新たな「拠点」が整備されるに留まった。

中央省庁の地方移転は前代未聞のこと。誘致に期待を寄せる自治体に対し、検討の段階で官僚や有識者らから消極的な意見が出た省庁も少なくなかったという。

文化庁、消費者庁、総務省統計局以外の移転や拠点開設が実現しなかった理由を、現在地方創生を担当する「内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局」に聞くと、以下の回答が得られた。

「特許庁、中小企業庁、観光庁、気象庁については、地元自治体等との調整の結果、本庁ではなく地方支分部局等で体制強化を完了しております。

なお、平成28年9月1日の第12回まち・ひと・しごと創生本部会合において決定された、『政府関係機関の地方移転にかかる今後の取組について』において、当該時点の今後の取組の方向性が示されています。

また、『政府関係機関移転に関する有識者懇談会』において、取組のフォローアップを実施しています」

文化庁の移転で何が変わる?

冒頭で紹介したように、文化庁は来年5月にかけて京都へ全面移転する。具体的にはどのような変化があるのだろうか。

「文化庁を誘致した京都府・京都市では、『地元の文化力の向上、交流人口の拡大、地域経済の活性化等が図られることが見込まれる』としております(『文化庁の全面的な移転に向けた地元の協力について(平成30年8月7日 京都府・京都市)』より)」(内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局)

移転先となるのは、京都市上京区にある「旧京都府警察本部本館」。京都御所のほど近くに立つこの建物は、昭和天皇の即位の礼に際して昭和3年(1928)に設計された、京都が誇る近代化遺産だ。

6月10日に撮影された旧京都府警察本部本館。外壁補修などを経て足場が解体されたところ(京都府「新行政棟・文化庁移転施設整備工事」より)

京都府のホームページでは随時、施設整備工事の様子を紹介しており、建設当時に施されたロマネスク様式の美しい装飾をできる限り復元・保存しようとする様子が伺える。

竣工時のものと考えられている室内装飾(京都府「新行政棟・文化庁移転施設整備工事」より)

当初、文化庁の移転時期は「遅くとも2021年度中」とされていたが、旧京都府警察本部本館の改修を巡る追加工事などの影響を受け、これまで二度延期されている。京都府によると、6月10日には足場の解体が始まったとのことで、三度目の正直となることに期待したい。

今回の移転は、東京一極集中が顕著な日本において、地方創生の起爆剤となるだろうか。内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局は「今後、政府関係機関の地方移転にかかる取組について総括的な評価を行うこととしており、その結果を踏まえて対応を検討する予定です」とコメントしている。

東京・霞が関の文化庁(写真:弁護士JP編集部)
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