「危険自転車」10年で検挙数5倍。それでも警察が”取り締まり強化”を止めないワケ

弁護士JP編集部

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2022年06月22日 09:50

「危険自転車」10年で検挙数5倍。それでも警察が”取り締まり強化”を止めないワケ 自転車取り締まりの様子(写真提供:警察庁)

自転車を運転しながらイヤホンで音楽を聴く、傘をさす……これらはれっきとした交通違反だ。

これら違反に対して、前科がつくこともある「赤切符」が切られることは意外と知られていないのではないだろうか。

今年1月、警察庁の交通局長が各都道府県警察に対し、今後は赤切符を積極的に活用して違反者を取り締まるように通達(※1)を出した。通達によって何が変わり、今後検挙される人はどれほど増えるのか。

※1「良好な自転車交通秩序の実現のための総合対策の更なる推進について」(通達)

なぜ今、取り締まり強化?

昨年、自転車の危険な運転者を取り締まった検挙件数は約2万2000件にのぼった。口頭・書面での注意(指導警告票交付)の件数は約131万件。10年前と比べて注意喚起の件数は半減しているが、検挙数はなんと5倍以上に増えている。

それでも警察は、さらなる取り締まりの強化に踏み切った。

その背景には、交通事故件数が減少傾向にあるにもかかわらず、交通事故に占める「自転車事故」の割合が減らないことがあるだろう。

昨年起きた全交通事故のうち約2割に自転車が絡んでいたほか、自転車事故のうち約4割が歩道上で発生、死亡・重傷事故の約7割で自転車側に何らかの法令違反があることもわかった。

全交通事故に占める自転車関連事故の件数はH29から微増を続けている。(警察庁HP「自転車は車のなかま~自転車はルールを守って安全運転~」より)

さらに警察庁交通局の担当者が「交通ルールを無視する自転車利用者への批判や、取り締まりの強化を求める意見が警察に数多く寄せられている」と語るほど、自転車利用者に対する世間の目が厳しいものになっており、取り締まりに力を入れることが社会的にも求められている。

検挙数が増えても自転車の危険運転が減らない理由

検挙件数が増えても、自転車の事故率は減らない。そんな現状に、警察庁交通局長は前述の各都道府県警察にあてた通達の中で「(自転車の利用者に)どうせ取り締まられることはないとの認識を持たれている」のではないかと指摘した。

自転車の取り締まりには、車やバイクと異なり「青切符(※2)」の制度がない。そのため、現場の警察官が違反者に交付できるのは、「注意のみで処罰のない指導警告票」か「略式起訴が前提の赤切符」となっている。

※2 自動車運転などで比較的軽い違反に対して切られるもの。前科がつかない代わりに反則金を納付する必要がある。

これに対し、警察庁の有識者検討会は報告書(令和3年12月)で「自転車の違反に対する刑罰的な責任追及が著しく不十分なものにとどまっている」と、違反した人に違反金を課すなどの「実効性のある方法の検討」を提言している。しかし、違反金実現に向けた具体的な話はまだ聞こえてこない。

今回の通達による取り締まり強化も、警察の対応はこれまで通り「交通指導」か「赤切符」になると見られる。

自転車で赤切符を切られたらどうなる?

では、どのような「危険な行為」が「赤切符」の対象になるのか。警察庁のホームページに掲載された図表がわかりやすい。車の違反と似ているが、「歩道通行時の運行方法違反」など自転車ならではの違反もある。

実際に検挙された原因として、一番多いものは信号無視、次いで警報音が鳴っている踏切への立ち入りだ。

2020年6月からは”あおり運転”にあたる「妨害運転」への罰則も規定された。

赤切符が交付された人は、裁判所や検察庁に出頭し司法の判断を仰ぐことになる。検察に悪質と判断された場合は略式起訴され主に罰金を科せられるが、初めての検挙で反省しているとみなされれば不起訴になるケースが多いとされている。

今回の通達で検挙される人が増えることになるのか、あるいは起訴される人が増えるのか。警察庁交通局の担当者は「自転車通行空間の整備や交通安全教育・啓発活動も同時に推進しておりますので、一概にはお答えできません」としている。

いずれにせよ、自転車利用者は「どうせ取り締まられることはない」とあなどり、危険な運転を続けていると、突然”前科持ち”になるリスクがあることを充分認識する必要があるだろう。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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