6月に祝日がない理由とは? 国の答えは…

弁護士JP編集部

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6月に祝日がない理由とは? 国の答えは…
次の祝日は7月18日

最大10連休となった2022年のゴールデンウイーク。十分な休息が取れた一方、連休明けに「7月まで祝日がない…」と悲嘆した人も少なくないのではないだろうか。

日本は諸外国に比べて祝日が多いと言われており、土日以外が休みになる日がほぼ毎月ある。ところが、梅雨真っただ中で気がめいりがちな6月だけが(年末休暇のある12月を除けば)、祝日のない月となっているのだ。

なぜ6月に祝日がないのか。政府の回答は…

日本では「国民の祝日に関する法律(以下、祝日法)」という法律によって年間16日の祝日が定められている。祝日法の第1条には、その目的について以下のように述べられている。

  • 第1条 自由と平和を求めてやまない日本国民は、美しい風習を育てつつ、よりよき社会、より豊かな生活を築きあげるために、ここに国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける。

上図のように、年末休暇のある12月を除けば、6月だけが祝日のない月となっている。その理由を、国民の祝日を管轄する内閣府に聞いた。

「『国民の祝日』の根拠となる祝日法は、昭和23年(1948)に議員立法で制定されました。そのとき設けられた祝日は1月、3月、4月、5月、9月、11月に合計9日あり、祝日のある月とない月は半分ずつでした。

祝日法を作る際、選定基準のひとつとして『できるだけ季節と配分に注意すること』という留意がなされたようですが、それぞれの祝日の趣旨も踏まえた結果、昭和23年(1948)当時も1月、5月、11月には2日ずつ祝日が設けられています。

その後、現在に至るまで議員立法を中心に6日の祝日が追加されていますが、その都度、それぞれの趣旨を踏まえた適切な日付が検討されてきました。

結果的に、現在は祝日のある月のほうが多く、6月と、令和に入って天皇誕生日が2月に移動した12月だけが、祝日のない月となっています」(内閣府担当者)

6割が「祝日化」支持

祝日に縁遠い6月だが、これまで何度か「祝日設立」の機運が高まったこともある。過労死問題に取り組む弁護士らの団体「過労死弁護団全国連絡会議」が2001年、不快指数が高まる6月の働きづめは負担が大きいと、厚生労働省に祝日新設を要請したケースなどもあった。

また、インターネットなどでたびたび“祝日候補”として名前が挙がるのが「時の記念日」(6月10日)だ。やや古いデータではあるが、シチズン時計が2006年、全国のビジネスパーソン400人を対象に行った調査では「『時の記念日』を祝日にした方がよいでしょうか、現状でよいでしょうか」という質問に61.5%が賛成している。

シチズン時計株式会社「『時の記念日』 認知度調査」より

鉄道が時間通りに来るのは「時の記念日」のおかげ!?

「時の記念日」とはどのような記念日なのだろうか。東経135度日本標準時子午線上に立ち、「時の記念日」の調査もする明石市立天文科学館・井上毅(たけし)館長に話を聞いた。

明石市立天文科学館・井上毅館長(Zoom取材画面より)

なぜ6月10日が「時の記念日」なのでしょうか。

井上館長:その由来は671年6月10日にさかのぼります。日本書紀によると、この日、天智天皇は「漏刻」という水時計で時を計り、人々に時刻を知らせました。これは、日本最古の時報システムとされています。

その後、大正9年(1920)5〜6月に「東京教育博物館」(現・国立科学博物館)で「『時』展覧会」が開催されます。この展覧会は、珍しい時計や、生活の中の「時」を紹介する展示、時間をテーマにした映画の上映など、「時」に関する興味深い展示物を通して人々に時間の大切さを意識してもらおうというものでした。約7週間の会期中に22万人を動員するなど、大変な盛り上がりだったそうです。

展覧会の一環で、時間尊重を宣伝するための無形展示物として制定されたのが「時の記念日」でした。初めての「時の記念日」には、正午の大砲が鳴り、東京中の工場・事務所の汽笛や、寺社・教会の鐘が鳴り響き、風船を空に舞い上げるセレモニーも行われました。これは、日本初の「カウントダウンイベント」と言えるでしょう。

天智天皇が時を計った「漏刻」のイメージ(明石市立天文科学館「時の記念日」より)

「時の記念日」の制定によって時間尊重を宣伝したということですが、当時の日本で「時間」はあまり重要視されていなかったのでしょうか。

井上館長:近代的な社会の仕組みが整うに従い「時間」の重要性が高まってきたのだと思います。当時は、いわゆる「大正デモクラシー」が起きるなど、政治や労働などさまざまな分野で社会運動が活発になっていました。たとえば労使交渉で「労働時間」が重要な基準となるように、すべての人に平等に与えられた「時間」は、交渉にあたって共通認識として重要視されたのではないでしょうか。

一部では、「6月に祝日を作るならば『時の記念日』を!」という声が上がっています。それについてはどのようにお考えですか。

井上館長:6月の祝日候補は他にもあると聞いていますが、ぜひとも「時の記念日」から検討してほしいと思います。

というのも「時の記念日」には、制定されて100年以上、その由来は1300年以上前にさかのぼるという長い歴史があります。また鉄道が時間通りに運行されるなど、現在の日本人は世界でもトップクラスの時間意識を誇っています。

そういった意味でも、日本人の時間感覚を変えるきっかけとなった「時の記念日」は非常に興味深い記念日であり、祝日に名乗りを上げるのにふさわしいと思っています。

井上さんが館長を務める「明石市立天文科学館」では、毎年「時の記念日」にまつわるイベントを開催しています。今年はどのような催しが行われるのでしょうか。

井上館長:当館は東経135度日本標準時子午線上にあり、昭和35年(1960)6月10日に開館するなど、「時の記念日」と深い関わりを持っています。

今年注目していただきたいのは、「時の記念日」翌日の6月11日(土)にYouTube配信するオンラインイベント。全国の天文台を中継し、南中時刻を観測することで日本国内の「時差」を体感できる「全国天文台子午線リレー」など、さまざまなプログラムをご用意しています。

「時」について、改めて実感する機会にしていただけたらうれしいです。

■ オンラインイベント「時のまち明石・オンライン・フェスタ〜ほっトケイないDAY〜」
日時:2022年6月11日(土) 11:00~17:00
配信方法:明石市立天文科学館YouTubeチャンネルでライブ配信(手話付き)
※詳細は明石市立天文科学館ホームページにて

明石市のシンボルである明石市立天文科学館。建物は国の登録有形文化財(kazukiatuko / PIXTA)
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