「袴田事件」再審の三者協議 「証拠」の鑑定・実験に関わった法医学者らの証人尋問へ

弁護士JP編集部

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「袴田事件」再審の三者協議  「証拠」の鑑定・実験に関わった法医学者らの証人尋問へ
オンラインで会見に参加した袴田巖さんの姉ヒデ子さん(5月23日 霞が関/弁護士JP編集部)

5月24日東京高裁で、いわゆる「袴田事件」の6回目となる差し戻し審(※)の三者協議(弁護団、検察、裁判所)が開かれ、これまで証拠の鑑定や実証実験に関わった法医学者ら専門家5人の証人尋問を行う方針が決まった。

※上級審が元裁判の判決の取り消し、破棄の判断したものを第一審、控訴審が再び審理すること。袴田事件では、2020年、最高裁が東京高裁に差し戻しを命じている。

争点は血痕の「赤み」

今から56年前の1966年(昭和41年)、静岡市清水区(旧:静岡県清水市)で一家4人が殺害された事件が発生。犯人とされた袴田巌さん(86)は死刑が確定した後、2014年に静岡地裁の再審決定を受けて釈放された「袴田事件」。

裁判のやり直しをめぐり争点となっているのが、事件発生から約1年2か月後に現場近くのみそタンクから見つけられた、犯人のもの(証拠)とされる5点の衣類に付いた血痕の「赤み」に関するもの。弁護側、検察側がそれぞれ独自に専門家へ依頼し、鑑定や実験を行っていた。

これまで鑑定結果をもとに弁護側は「短期間で血痕は黒く(黒褐色)なる(赤みは残らない)」とねつ造の疑いも併せて主張。一方、検察側は「5か月みそにつけた血痕に『赤み』が残っていたケースもある」との実証実験の結果を提出し、両者の意見は対立している。

「立証に意を強くした」(小川弁護士)

今回、裁判所からは7月から8月上旬にかけて、弁護側の鑑定をした3人(法医学2人、理化学1人)、検察側の2人(いずれも法医学)に対する証人尋問の日程が示されことで、三者協議は大きなヤマ場を迎える。

袴田事件弁護団事務局長の小川秀世弁護士(5月23日 霞が関/弁護士JP編集部)

この日行われた会見で、弁護団の小川弁護士は「(弁護側の)鑑定書に対する意見は非常に抽象的なものしか出てこない。そういう意味では勝手に推測してはいけないが、検察官の反証の仕方としてはもうこれが限界だということで、立証に意を強くした」とコメント。

オンラインで会見に参加していた袴田さんの姉ひで子さん(89)は、「裁判所の決定が出ないことには分かりませんが、(再審開始決定に向け)大いに期待しています」と語った。

次回の三者協議は6月27日、詳細の調整などが行われる予定。

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