「焚き火やりっ放し、ゴミ放置…」に管理者も悲鳴!? キャンプ人気で増加する「マナー違反」の実情とは

弁護士JP編集部

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「焚き火やりっ放し、ゴミ放置…」に管理者も悲鳴!?  キャンプ人気で増加する「マナー違反」の実情とは
マナーを守り楽しむキャンパーがほとんどだが…(写真:alps/PIXTA)

身近なレジャーとしての「キャンプ」はブームを超え、すっかり定着しつつある。

3年ぶりに行動制限のない2022年のゴールデンウィーク(GW)もキャンプ場は混雑緩和とコロナ対策で入場制限などが施される施設もあるなど大盛況。早くも今年のお盆休みに向け、人気のキャンプ場に限っては、このGW明けから予約が埋まっていくケースもあるという。

これまでの自粛ムード、巣ごもりに対する反動か、家族や気の置けない友人同士で過ごす「非日常」へのニーズは依然として高い。その一方、GW期間中もSNSなどでは、キャンプ場のマナー低下を嘆く声も少なくなかった。

経験1年の「キャンプビギナー」の割合が増加

日本オートキャンプ協会が発行する「オートキャンプ白書2021」によれば、コロナ禍において、感染対策のためキャンプ場ではさまざまな制約が敷かれたものの、2020年のオートキャンプ参加人口は610万人と国内旅行者の前年(2019年)対比約50%と比較しても、3割減程度にとどまっている。

ソロキャンプが流行語トップ10に選出される(2020年)など、じわじわとブームが拡がる中、ここ数年、「キャンプビギナー」の増加も目立った動きだ。

2020年のキャンプ場利用者におけるキャンプ経験1年(以内)の割合は25.9%(前年比+3ポイント)、キャンプに行く回数は年平均4.6回となっている。さらに20代の占める割合は10.2%(前年比+2.7ポイント)と、2017年(6.3%)と比較して若年層の割合も明確に増えている。

「ゴミ増えすぎ」で一時閉鎖になったキャンプ場

前出の白書によれば、キャンプ場内での事故の件数自体は多くないものの、「ケガ」や「ヤケド」に関して、(初心者が扱い慣れない)焚き火に関する事故が目立つとの報告も少なくないという。また、キャンプ場側から見た「キャンパーのマナー」では、「悪くなった」が21.2%と前年(2019年12.8%)と比較して8.4ポイントも増加している。

マナー違反の例では、「無断キャンセル」「施設の破損」「ゴミの分別を守らない」「焚き火による被害」などがあげられている。

キャンプ情報の提供などを通して「安全で楽しいキャンプの普及」に務める、一般社団法人・日本オートキャンプ協会の事務局長・堺廣明さんも同様の報告を耳にする機会が増えたと語る。

「2年前に”ゆるキャン”でブームになったキャンプ場に人が殺到した例などがあります。ゴミ捨て禁止にも関わらず、あまりにもゴミが増えすぎて対応できず、一時閉鎖になったキャンプ場の例があります。また、キャンプ場の「焚き火」関連のトラブルも、2年位前に立て続けに報告がありました。「焚き火OK」はやりっぱなしで良いということではありませんので、それぞれキャンプ場のルールに従ってきちんと後片づけまですることが必須です。

コロナ禍に入ってからも団体利用に制限があるにも関わらず、騒いだりする人がいるという報告も一部のキャンプ場で出ています。新規キャンパーの増加に伴うものと考えていますが、キャンプ場の「自由」な印象をはき違えてしまっている人も出ているようです。静粛時間を守るなど、焚き火同様ルールを守ってキャンプを楽しんで頂ければと思います」

マナー違反の多発により直火禁止としているキャンプ場も増えている(写真:MITSU/PIXTA)

予約の無断キャンセルで損害賠償請求も!?

また、まれではあるものの、マナー違反が行き過ぎれば法律に抵触するケースもあり得る。

先ほどの「施設の破損」でいえば、たとえば購入した「薪」以外に、許可されていないにも関わらずキャンプ場に自生している樹木を切って使えば、故意(わざと、意図的に)に器物損壊行為をしたとして、刑法第261条が定める器物損壊罪(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料)に問われる可能性もゼロではない。

「焚き火による被害」では、焚き火の火が風に煽られ、周囲に燃え移るケースがそれにあたるだろう。他エリアのテントを損壊したり、大きくなれば山火事の原因にも繋がりかねない。キャンプ場に限定されたものではないが、山火事の原因別出火件数(平成27年~令和元年の平均)の内、「焚き火」の割合が30.2%と最も多いというデータもあるほど(林野庁発表)。

また、前述の通り、GWやお盆のシーズン前には、人気のキャンプ場は数か月前の段階で予約が埋まることも珍しくない。予約関連のトラブルとして、その際、「とりあえず」と予約を数カ所して、その中から選び、他所のキャンセルを忘れてしまうケースなどが代表的だ。ネット予約時に、キャンプ場の規定(キャンセル料他)などを確認の上(項目にチェックをつける)で手続き(仮契約)が完了する仕組みがほとんどだが、そのこと自体を忘れてしまえばトラブルの元となる。

予約の無断キャンセルは、契約に基づく義務を果たさない「債務不履行」に該当する可能性もあり得る。民法第415条では、債務不履行があった場合は相手方に賠償を求められると規定している。つまり、キャンプ場側に人件費や材料費などの損害が生じた場合、悪質な予約キャンセルをした側に賠償を請求できるということ(もっとも費用対効果を考慮すれば現実的ではないが)。

さらにキャンプ場内の事故で一番大きいのが、クルマに関するもの。2018年には、群馬県のキャンプ場敷地内の林道(幅員約5m)を歩いていた男性(当時49歳)と男児(当時8歳)が、後ろから進行してきた軽ワゴン車にはねられ、男性が死亡、男児は重症を負う痛ましい事故も発生。運転していた女性は自動車運転死傷行為処罰法違反(過失傷害)の現行犯で逮捕されている。小さい子どもも多いキャンプ場敷地内の運転には、充分過ぎる程の注意が必要なことはいうまでもない。

ルールやマナーは「お互いさまの世界」として守る

前出の堺さんは、動画やネット予約など、IT技術の進化により、市場の裾野が拡がったメリットはあるとしながら、「たとえばYouTubeでテントの立て方、準備の仕方、予約の仕方、すべて教えてもらう環境になりました。ただ、『何をしてはいけない』のような、初心者へのマナー向上を啓発するような動画は少ない印象もありますので、もっと増えてもらえれば」と新たなキャンプカルチャーへの要望も付け加える。

その上で、「マナーや注意事項はキャンプ場ですべて説明されるので、聞いて、きっちり理解していただく、ということがトラブル回避の最低限の第一歩かなと思います」と語る。

ルールやマナーは「お互いさまの世界」(堺さん)として守るという前提で、キャンプを楽しむ文化が拡がれば、より成熟したレジャーとして進化するのではないだろうか。

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