VS文春裁判、霜月さんの証言は「超重要」? 米山隆一氏が考える松本氏側“証人”の条件

弁護士JP編集部

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VS文春裁判、霜月さんの証言は「超重要」? 米山隆一氏が考える松本氏側“証人”の条件
松本氏の飲み会は「むっちゃ楽しい」と証言した霜月るな氏(本人のYouTube【しもるなTV】「しもるなが遂に...」より)

お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志氏が、自身の性的行為をめぐる『週刊文春』(以下、文春)の記事で名誉を毀損(きそん)されたとして、発行元の文芸春秋に損害賠償と謝罪広告を求めた訴訟の第1回口頭弁論が28日、東京地方裁判所で開かれた。

松本氏側は、文春の記事について、「客観的証拠は存在しないのに(女性2人の)一方的な供述だけを取り上げた、極めてずさんな取材活動に基づいている」と主張。テレビ出演を休止せざるを得なくなるなど「筆舌に尽くしがたい精神的損害を受けた」と訴えた。

一方の文春側は、「取材を重ね、証言の具体性や裏付けは慎重に検討した」と反論。松本氏本人への取材も含めて「女性の証言は真実と確信した」と述べた。

今後、裁判所が必要と認めた場合、証人や本人の尋問が行われることもあり、引き続き注目を集めることは間違いなさそうだ。

松本氏側、霜月るな氏が“重要”証人か?

もし、証人尋問が行われる場合、文春側の有力な証人は何と言っても告発を行った女性2人(Aさん、Bさん)だろう。一方、松本氏側の証人として「松本人志さんを救えるなら」と自ら立候補するのが、セクシー女優の霜月るな氏だ。

霜月氏は、文春がJ子さんへの取材をもとに公表した記事(2024年2月15日号掲載)に登場する「ギャルっぽいAV女優」は自分だとした上で、この記事で紹介されている飲み会が「普通にむっちゃ楽しい飲み」だったと証言。文春の記事は「嘘だらけ」と断言した。

この霜月氏の投稿に対して、元大阪府知事の橋本徹弁護士が「重要な証言」とX上で取り上げたほか、元宮崎県知事の東国原英夫氏も「霜月るな氏の証言、これは重要です。」とタイトルをつけてYouTube動画を公開した。

しかし一方で、弁護士資格を持ち、衆議院議員を務める米山隆一氏はX上で「霜月さんの事は場合によっては参考事情程度に考慮される事は有り得ても、本論にはなりません」と反論した。

弁護士同士でも意見が割れているが、今回、霜月氏の証言が裁判の“本論にならない”と言い切る米山氏にその真意を聞いた。

「霜月氏の証言“重要”」意見に、米山氏「理解困難」

米山隆一氏

橋本徹弁護士は「霜月さんの証言も一緒に載せるべきだったと評価されれば文春の負け」とX上で投稿されていますが、米山議員は霜月さんの証言は本論にならないと反論されています。なぜ本論にならないのか、教えてください。

米山氏:松本氏が今回起こした民事訴訟では、2015年冬に「グランドハイアット東京」で行われたそれぞれ別の飲み会について、女性(A子さん、B子さん)の証言に基づく『週刊文春』の報道が名誉毀損に当たるか否かを争っているとのことなので、それと別件である2016年夏の「リッツカールトン大阪」での飲み会の事情についての証言(J子さん、霜月氏)は、基本的に無関係です。これはほとんどの弁護士が同意する基本的な所だと思います。橋下氏や東国原氏がこれらの証言を「重要」としている事に合理的理由は見いだせず、理解困難です。

霜月さんは証人として出廷しても良いと発言していますが、仮に霜月さんが法廷で訴えた場合でも、重要な証言とはいえないのでしょうか。

米山氏:先にお答えした通り、霜月さんの証言は、報道されている通りなら、本件訴訟の争点と直接関わりません。やはり重要な証言とはならないと思います。それ以前に、争点と直接関わりのない霜月さんの証人尋問を裁判所が認める可能性は低く、霜月さんが証言する機会はまずないと言ってよいでしょう。

松本氏を救う「証人」の条件

では今後の裁判で、松本氏側がどのような証人を用意できれば、文春側の主張を崩せる可能性があるのでしょうか。

米山氏:松本氏側の弁護士は、「A子さん、B子さんの証言が真実ではない」との心証を裁判官に抱かせなければなりません。

そのためには、その時の録音・録画の様な客観的証拠があればいいのですが、ないのであれば、“その場にいた”証人の証言を提出する必要があります。

つまり、2015年冬にグランドハイアット東京で行われた飲み会に臨席し、A子さん、B子さんと異なる証言をする証人です。その人を仮にX子さんとしましょう。

X子さんが現れた場合、仮にA子さん、B子さんの証言とX子さんの証言が矛盾して真偽不明となったとしても、松本氏側は、「適切に取材をすれば、その場にX子さんが居たことは分かったはずである。当然X子さんにも取材をすべきで、取材していれば、A子さん、B子さんの証言とは異なる証言をしていること、すなわちA子さん、B子さんの証言は真実と信ずるに足りないことが分かったはずである。その様な十分な取材を尽くしていない以上、真実相当性は認められない」と主張することができるようになります。

しかし松本氏側に客観的証拠も、A子さんB子さんの証言を少なくとも真偽不明にできる程度の証人(X子さん)もいない場合は、私は松本氏側は相当に困難な訴訟追行(手続き)を強いられることになると思います。

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