逮捕された教師は児童ポルノ画像1000点所持も…後絶たぬ被害「わいせつ教員対策新法」は子どもを守れるか?

中原 慶一

中原 慶一

2022年05月10日 10:31

逮捕された教師は児童ポルノ画像1000点所持も…後絶たぬ被害「わいせつ教員対策新法」は子どもを守れるか? 一部の〝わいせつ教師〟による卑劣な行為の「再発」に防ぐには(写真:taka/PIXTA)

卑劣なわいせつ教師は根絶できるかーー。

4月1日、「教員による児童生徒性暴力防止法(「わいせつ教員対策新法」)」が施行された。これまでは、子どもへの性暴力で懲戒免職や解雇となり教員免許を失効しても、3年たてば免許を再取得できた。新法では、再交付の可否は、各都道府県教委が設置する「免許状再授与審査会」が判断することになった。

審査会のメンバーには法律や医療の専門家も含まれ、性暴力を再び行う可能性が少しでも認められる場合は、再取得を認めない方針だ。

具体的には、更生プログラムの受講歴や復職を求める保護者からの嘆願書、被害者への謝罪や損害賠償などの書類などを提出するなどして、性暴力を二度と行わない〝未来の身の潔白〟を自ら証明し、審査会の全会一致を得なければ教員免許の再取得はできない。

同時に性暴力で免許を失効した元教員の氏名や処分内容のデータベース化を進める。改名によるすり抜けを防ぐため、大学の卒業証書の名前でも審査会が検索できるようにするという。

性的暴行の罪の時効である10年の1か月前での逮捕

再取得厳格化の背景には教師による児童、生徒への性犯罪が常態化していることがある。わいせつ・セクハラ行為で処分された公立小中高などの教員は20年度まで8年連続で200人台に上っている。新法施行のまさに翌日にも、その必要性を強く感じさせる事件が起きていた。

4月2日、江東区の元公立小学校教諭A(46)が性的暴行容疑で警視庁捜査1課に再逮捕された。Aは、勤務先の小学校で担当クラスの小学3年児童の着替えを盗撮したとして、2月に児童買春・ポルノ禁止法違反で逮捕されていた。捜査で押収したパソコンやスマホに2012年5月1日、元教え子を毒牙にかけるおぞましい動画が残されていたことから容疑が発覚。性的暴行の罪の時効である10年の1か月前での逮捕となった。

「Aは2017年にも、前任の板橋区の小学校で児童の体に抱きつくなどして停職処分を受けています。押収したパソコンやスマホからは、女児を盗撮した写真や動画約20点の他にも、ネットからダウンロードした児童ポルノ画像が1000点ほど保存されていた」(夕刊紙記者)

性犯罪の再犯率は高い

いたいけな女子児童を何度となく毒牙にかけていたとんでもない教師がいたものだが、確かに「性犯罪者の再犯率」は高い。「平成27年版 犯罪白書 ~性犯罪者の実態と再犯防止~」では、丸々1編(第6編)を割いて、性犯罪について特集しているが、こう記述がある。

「再犯調査対象者の総数1484人のうち、全再犯ありの者は307人であり,全再犯率(全再犯を行った者の比率をいう。以下この節において同じ。)は20.7%であった。そのうち、性犯罪再犯ありの者は207人で,性犯罪再犯率(性犯罪再犯を行った者の比率をいう。以下この節において同じ。)は13.9%であり,全再犯ありの者のうちの67.4%を占めていた」(第6編/第4章/第4節/2)。

つまり、全再犯者のうちの7割近くが性犯罪再犯者ということだ。さらにその内訳は以下の通り。再犯率は、痴漢、盗撮、小児わいせつ、強制わいせつの順で高いことが分かる。

再犯調査対象者 再犯率(図表:「平成27年版 犯罪白書 ~性犯罪者の実態と再犯防止~」より)

教員免許の再交付可否の判断は教育委員会に丸投げ!?

新法制定を巡っては、文科省は当初、免許の再交付が無期限に受けられないようにする教育職員免許法の改正を検討していたが、憲法の「職業選択の自由」と整合性が取れないとして改正を断念していた経緯がある。

この点が新法制定の論点となっていたが、結局、交付する/しないの判断は、各県教育委員会の審査会に事実上丸投げということになった。性加害教師の弁護を行ったこともあり、労働問題への対応も多い横井浩平弁護士は新法についてこう評価する。

「各審査会がどういう基準で再交付の認定をするか基準があいまいな点は否めないと思います。審査会メンバーには、弁護士も入るということですが、個々の弁護士によって判断に偏りが出てしまうことはあり得るかも知れません。国は、交付用件の一定の基準を定めると思いますが、すべてに介入するわけではありませんから、それらも含めて抑止につながるか否かは、今後の運用次第という面はあるでしょう」

ワイセツ教師による性暴力の「根絶」は?

わいせつ教師の逮捕が後を絶たない中、新法は再犯防止という観点からは前進であることは間違いない。前出の夕刊紙記者が付け加える。

「性暴力を犯して逮捕された教師の周辺を取材すると、生徒たちは意外と敏感で、その先生にもともと違和感を持っていることは少なくない。〝どんな先生でした?〟と聞いてみると、『優しくて教え方もうまかったけど、小さな女の子が大好きで、男子には厳しいけど、女子には甘かった』(小学3年男子)、『ロリコンといううわさがあって、キモかった』(女子中学生)などと、うすうす感づいていることも多い。さらにペドフィリア(小児性愛障害)など、自分の性的嗜好(しこう)を満たすために、教師という職業を選ぶ不届き者が一定数いることも否定できません」

つまり新法は、再犯防止には効果があっても、ワイセツ教師たちが元々胸の奥底に秘めている邪(よこしま)な欲望を完全に規制することは不可能と言えるだろう。

横井弁護士も、「ワイセツ教師による性暴力に対する対応について、「教師が相互に監視することや保護者側も、(性被害の)話を聞いたら学校や教育委員会にすぐ連絡するなどすることで早期の対応はできるはず」としながら、〝完全な予防〟(つまり根絶)となると、それは決して容易ではないとしてこう続ける。

「通り一遍な言い方になってしまいますが、『性加害は決して許されない』ということを学校や自治体で啓発して、各教員に強く意識を持ってもらうということぐらいしか、抑止に関しては難しいのかなと思います…」

ともあれ、今回の新法の施行が〝抑止〟にも一石を投じることを願うばかりだ。

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