袴田事件「血痕の赤みは消失する」弁護団が犯人性を否定する鑑定書・意見書を提出

弁護士JP編集部

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袴田事件「血痕の赤みは消失する」弁護団が犯人性を否定する鑑定書・意見書を提出
鑑定書・意見書提出後、会見を行った弁護団(11月5日 霞が関/弁護士JP編集部)

いわゆる「袴田事件」弁護団は、争点となっている「血痕の色の変化」について専門家に見解を聞いた意見書を1日東京高裁に提出、5日会見を行った。袴田事件は1966年(昭和41年)に静岡市清水区(旧:静岡県清水市)で一家4人が殺害された事件。死刑が確定した袴田巌さん(85)が求めている裁判のやり直しをめぐり、昨年12月に最高裁が東京高裁の決定を破棄して審理を差し戻したことを受け、8月に裁判所、検察と弁護側が意見を交わす三者協議が都内で行われていた。

争点は、袴田さんが逮捕された約1年2か月後に現場近くのみそタンクから見つかった、重要な証拠となる犯人のものとされる5点の衣類に付いた「血痕の変化」に関するもの。

弁護団は、「どのような条件でも(メイラード反応により)短期間で血痕は黒くなるにも関わらず、1年2か月後にみそタンクから見つかった犯行着衣の血には赤みが残っていた」とねつ造の疑いも併せて主張。袴田さんでない何者かが衣類をタンクに入れたことの証明のため、あらめて専門家に見解を聞いていた。

検察側は専門家の見解をもとに「タンク内のみその色が淡い色であったことなどから、血痕の赤みを失わせるような化学反応が進行していたとは認められない。赤みが残っても不自然ではない」などと主張していた。

今回、弁護団は前回検察官が提出した専門家の聴取報告書に対し、「ヘモグロビンの変性・分解・酸化等の化学的機序についての鑑定書」、「メイラード反応についての意見書」を提出。

法医学やメイラード反応の専門家ら複数の意見を集め、実証実験などにより「血液がみそ漬けの環境下におかれた場合、血液の赤みの原因であるヘモグロビンの酸化、血液とみそ成分によるメイラード反応が加わり、黒色化が進行する」というメカニズムの専門的知見を得て、「衣類は直前に入れられたという捏造の疑いが高まった。袴田さんの犯人性は完全に否定されたといえる」としている。

弁護士団が行ったみそ漬け実験(白みそにつけて28日経過)

これまで袴田事件をめぐっては、捜査機関の思い込みで作成された疑いのある自白調書(浜田教授)や、証拠とされるみそタンクから発見された犯行時の着衣など、多数の不自然な点においてえん罪の可能性が高いと指摘されている。

今回提出した鑑定書・意見書について弁護団は、「弁護団として再審開始を一歩進める重要な資料を準備できた。新しい判断、動かない知見だと考えている。今回の鑑定で裁判所の再審をすみやかに進行させてくれると考えている」(間光洋弁護士)と述べた。

11月22日にあらためて三者協議が行われる。

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