ワンワン(11)ワン(1)!「犬の日」に知りたい、ペットを守る動物愛護管理法のこと

弁護士JP編集部

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ワンワン(11)ワン(1)!「犬の日」に知りたい、ペットを守る動物愛護管理法のこと
YAMATO / PIXTA(ピクスタ)

11月1日は、犬の鳴き声「ワンワン(11)ワン(1)」にちなんで「犬の日」とされています。ペットフードの製造・販売に携わる企業で構成される一般社団法人ペットフード協会により、1987年に制定されました。

ところで、犬をはじめとするペットたちも、法律で守られていることをご存じでしょうか。「虐待してはならない」「適正な飼育ができなくなるような繁殖は防止しなければならない」「ペットによる感染症の知識を持たなければならない」といった飼い主の責任は、「動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護管理法)」という法律で義務付けられています。

犬の日をきっかけに、ペットとの楽しい暮らしについて改めて考えるべく、自身も動物を愛する小泉将司弁護士に話を聞きました。

動物愛護管理法は、いつ、どのような経緯で制定されたのでしょうか?

1973年に、動物愛護管理法の前身である「動物の保護及び管理に関する法律」が制定されました。それ以前にも「動物虐待法(案)」(1951年)、「動物保護法(案)」(1970年)が作成されてはいたのですが、前者は国会提出に至らず、後者は国会に提出されたものの不成立となり、法律として制定されることはありませんでした。

しかしその後、署名運動の活発化などを受け、ついに立法に至ったのです。この頃、イギリスの新聞で「日本では犬の虐待が横行している」というショッキングな報道がされたことも、立法に少なからず影響しているのではないかと思います。

動物愛護管理法が制定される前は、ペットを守る法律はなかったのですか?

動物に関する法律でいうと、明治時代には「狩猟法」「家畜伝染病予防法」などがありました。また昭和時代になると「飼い犬を繋ぐ義務」(都令)や「狂犬病予防法」といったペットに特化した法令も登場します。

これらの法令と、動物愛護管理法の違いを教えてください。

もっとも大きな違いは、その目的です。動物愛護管理法ができる以前の法令は、いずれも「人」を動物から守るというところに重きが置かれていました。しかし動物愛護管理法の誕生によって、「動物」の命を尊重し、人と動物が共生する社会の実現に目が向けられるようになったのです。

動物愛護管理法は、制定から四度の改正を経て今に至っています。2019年6月に改正された現行法は、それまでと何が違うのでしょうか。

これまでの改正に「神戸連続児童殺傷事件」「インターネットの普及」「東日本大震災」などといった社会的な出来事が影響を与えてきたように、今回は「動画コンテンツの活発化」が改正を後押しする大きな要因となったのではないかと思います。動物を虐待する痛ましい動画がたびたび配信されている事実は、大変な社会問題となっていますよね。

一向に減少しない動物虐待に対し、今回の改正では動物殺傷罪、動物虐待罪が厳罰化されたことが大きいでしょう。法定刑が大幅に重くなり、最大で「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」(動物殺傷罪)を求刑できるようになりました。

また、「虐待」の態様が一部明文化され、エサや水を与えない「ネグレクト」を動物虐待罪として立件できるようになったのです。

最後に、動物を愛する一人の弁護士として「犬の日」に思うことはありますか?

縄文時代の遺跡に犬を大切に埋葬した跡が残っているように、犬は古来、人とともに暮らしてきました。動物愛護管理法は、これまで何度かの改正を経てきましたが、大きな流れでいえば、これは動物を、人間が趣味嗜好の一つとして所有する、もののような存在から、社会の中で人間とともに生きる、意思や個性を持った存在として尊重していこうという理念が広まってきた過程ともいえます。

だから、犬が好きな人はもちろん、そうでない人も、この機会に、人間とともに社会に生きる存在として犬や猫、その他の動物に対する福祉について考えていただければ幸いです。

取材協力弁護士

小泉 将司 弁護士
小泉 将司 弁護士

学生時代、寮内に住み着いていた猫を、廃寮・転居時に連れ出し一緒に暮らし始めたのをきっかけに、猫保護団体(ボランティア)に所属し保護活動に従事。現在も自ら保護した猫とともに暮らしています。

所属: ベリーベスト法律事務所 京都オフィス

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