ドクターハラスメントとは? 被害に遭った場合の相談窓口を紹介
このコラムでわかること
- ドクターハラスメントの具体例
- ドクターハラスメントがどのような罪になる可能性があるか
- ドクターハラスメントの相談先
病気やけがなどで苦しんでいる患者にとって、頼るべき医師からひどい対応を受けるのは非常にショッキングなことです。医師が患者に対して行う不快な言動のことをドクターハラスメント(ドクハラ)といいます。
本記事では、このドクハラの概要、具体例、対応方法などをわかりやすく解説します。
1. ドクターハラスメント(ドクハラ)とは
まずはドクハラの定義と具体例を確認しておきましょう。
(1)ドクハラの定義
「ドクターハラスメント(ドクハラ)」とは、医療従事者、特に医師や看護師から患者に対して行われる、精神的苦痛を伴う不適切な言動です。医師がその専門的知識や地位を利用して、患者を不快にさせる、侮辱する、差別するなどの行為が含まれます。
具体的にどのような行為がドクハラにあたるのかは、患者の主観にもよるため一概には言えません。ただ、広義の意味では、主観的に患者が不適切であると感じる言動全般がドクハラに含まれる可能性があります。そこで、医師の患者に対する言葉の選び方、態度、対応の早さ、情報開示の透明性など、さまざまな面からドクハラ問題にアプローチすることが可能です。
(2)ドクハラの例
ドクハラの例としては、以下のようにさまざまなものが挙げられます。
- 治療方針について不十分な説明しかしない
- 検査結果などの医療情報を故意に隠す
- 患者の意見を無視したり軽視したりする
- 患者の人格を否定する言動をする
- 病状などについて配慮に欠けた言動をする
- 治療にかこつけてセクハラをする
具体的には、患者ががんの進行状況や痛みについて医師に問い合わせたときに、「もう手遅れだ」と絶望をあおるだけで何も具体的な対応をしないのはドクハラです。こうした言動は患者の心情を無視しており、患者の安心や前向きな治療につながりません。
また、「うつ病だからといって甘えるな」といった言葉も、患者の病状を理解しようとせず、感情的に非難するドクハラ行為です。医師からのこうした心ない言葉は、患者の心を傷つけ、病状をより悪化させかねません。
2. ドクターハラスメント(ドクハラ)の問題点
適切な治療を行うために、時に医師は患者が不快に思うことでも指示したり行ったりしなければいけません。たとえば、嫌がる子どもに注射を打つことなどは典型的です。
何がドクハラかは患者の主観によるところが大きいとはいえ、こうした行為がドクハラと非難されることも、法的な責任を問われることも通常はありません。なぜなら、それは適切な医療行為のためには必要なことだからです。
ドクハラの問題は、医療行為上の必要性が乏しいばかりか、むしろ悪影響を及ぼしかねない点にあります。たとえば、うつ病患者に対して「甘えだ」と責めることは治療上の必要性は乏しく、むしろ患者をいたずらに追い詰めて病状を悪化させかねない言動です。
(1)ドクハラが該当する可能性のある法律違反、罪
こうしたドクハラは、職業倫理的に不適切であるだけではなく、法的な問題にも関わります。一例として、医師は患者に対して適切な医療を行うために必要な注意を払う法的な義務(注意義務)を負います。
この点、うつ病患者に対する先の発言例は、うつ病という患者の病状への基本的な見識や、その言葉を受けて患者がどう感じるかという配慮が抜け落ちており、医師へ一般的に求められる注意義務を満たしているとはいえません。そのため、もしもその発言のせいで患者が実際に病状を悪化させることがあれば、注意義務違反で患者に訴えられる恐れがあります。
医師の不適切な言動によって罰せられる可能性は他にもあります。たとえば、医師が患者のカルテ情報を許可なく公開した場合、これは「秘密漏示罪」に該当する可能性があります。これは患者のプライバシーの侵害であり、医師として厳に慎まなければいけないことです。
(2)ドクハラに関する実際の裁判例
実際に、ドクハラによって患者が精神的な苦痛を受け、その結果損害賠償を求めた裁判例も存在します。たとえば、自律神経失調症で休職していた人が、会社の産業医から「それは病気ではない」「薬では治らない」「甘えだ」などと詰問口調で言われた事例です。
この産業医の言葉に傷ついた原告は、心身のバランスを著しく崩してしまい、復職時期も当初の予定より遅れてしまいました。裁判所は、産業医との面談が原告の病状悪化に影響した因果関係を認め、復職の遅れに対する損害賠償と精神的苦痛への慰謝料として、産業医に約60万円の支払いを命じました。
3. ドクターハラスメント(ドクハラ)への対処と相談窓口
ドクハラに遭遇したとき、または遭遇しないようにするためには、以下の対策をおすすめします。
(1)対策法
まずは、「セカンドオピニオン」を活用することです。これは他の医師の意見を聞くことで、自分の病状や治療方針を客観的に理解し、不適切な対応がないか確認する方法です。また、重要な説明を受けるときは録音する、医療従事者によるハラスメントが続く場合は病院を変えるといった対策もあります。
これらの行動は自身の権利を守り、安心した医療を受けるためにも重要な対策です。
(2)相談窓口の例
ドクハラに悩んでいる場合は、一人で抱え込むのではなく、以下のような相談窓口を利用してみてください。
まず、各都道府県には、医療に関する電話相談窓口が設置されており、医療に関するさまざまな問題を相談できます。また、日本全国に設置されている「医療安全支援センター」では、医療の安全確保を目指して医療に関する相談や苦情を受け付けています。
そして、ハラスメント問題に実績のある弁護士に相談するのもおすすめです。医療における問題は複雑で、個々の事例によって適切な対応が異なるため、専門家の助けがあれば非常に役立ちます。自身の権利を守るためにも、これらの支援を活用してください。
ドクハラは場合によっては法的な責任も問うことができる深刻な問題です。ここで紹介した対処法などを参考に、状況の改善に取り組んでみることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年10月02日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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