監護者性交等罪とは? 成立要件・弁護士にできることを解説

監護者性交等罪とは? 成立要件・弁護士にできることを解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

監護者性交等罪の概要や罰則、成立要件、逮捕後に弁護士ができることについて解説します。この罪に該当するかもしれないと悩んでいる方は、今後より良い選択をするためにも、本コラムの内容を参考にしてください。

1. 監護者性交等罪とは

監護者性交等罪とは、監護者という地位を悪用し、18歳未満の者と性行為をした場合に成立する罪です。ここでの「性行為」に該当するのは、膣(ちつ)への男性器の挿入を指す性交だけでなく、肛門や口腔(こうくう)を用いた性行為も含まれます。なお、性器を手で触るなど、これ以外の性行為は監護者わいせつ罪が適用されます。

「監護者」とは、基本的に18歳未満の者と生計を共にし、養育する立場にある人です。代表的な例は、父母や養父母などです。場合によっては、戸籍上では関係のない内縁の夫なども該当します。監護者は通常、精神的にも経済的にも被害者に対して強い影響力を持ちます。監護者がその影響力を行使した場合、被害者がそれを拒むのは非常に困難です。

監護者性交等罪が、非常に悪質な犯罪とみなされるのはこのような点にあります。監護者性交等罪が成立した際の罰則は、5年以上20年以下の懲役刑です。

(1)監護者性交等罪の新設理由と強制性交罪との違い

監護者性交等罪は2017年に新設された、比較的新しい罪状です。不法な性行為に対する罪は、すでに強制性交罪や準強制性交罪(2023年に不同意性交罪に統合)などが設けられています。それにもかかわらず、新たに監護者性交等罪が設置されたのは「18歳未満の者と監護者」という特殊な関係において、強制性交罪では考えにくい状況での性行為も起こりうるためです。

強制性交罪で罪に問われるケースは「本人の了承を得ない状態で行われる性行為」です。暴力や脅迫などにより、本人の意思に反して強要した性行為はもちろん、酩酊(めいてい)状態などによって本人が同意の意思を示せない状況下での性行為もこれに含まれます。いずれにしても、強制性交罪では「被害者本人の意思」や「加害者による強制」がキーポイントです。

一方、監護者性交等罪では「監護者がその立場を悪用すること」が重要視されます。たとえば、親が性知識の乏しい幼い子どもに対して「これは普通のことだ」という誤った知識を植え付けて性行為に及んだとすれば、子ども本人が性行為に同意している状況が成立しうるため、強制性交罪に問うことは困難です。

しかし、監護者性交等罪であれば「加害者が監護者の立場を悪用した」という点を指摘して、罪に問うことが可能です。

このように、監護者性交等罪は、18歳未満の者と監護者という特殊な関係における悪質な行為に対しても刑法で処罰できるように新設されました。刑罰に関してもその悪質性を鑑みて、強制性交罪または準強制性交罪と同等の重さである「5年以上20年以下の懲役刑」と設定されています。これは、子どもへの性行為に対して青少年保護条例や、児童福祉法がこれまで科していた処罰と比較して、かなり厳しい内容です。

2. 監護者性交等罪の成立要件

前項で述べた点を踏まえて、監護者性交等罪が成立する要件を整理してみると、以下の3つに該当するかどうかがポイントになります。

(1)加害者が「現に監護する者」である

具体的には、罪を犯した時点において「被害者と生活を共にしている」「生活費を払っている」「被害者に関する諸手続きをしている」などの要素が総合的に考慮されます。そのため、実親であっても、離婚して別居しているなどの状況では監護者に該当しません。

(2)監護者であることによる影響力を利用する

自分が監護者に対して経済的にも精神的にも優位にあることを悪用するケースです。たとえば、「性交しないと暴力を振るうまたは食事を与えない」「性行為に対する無知につけこむ」など、さまざまなケースが考えられます。

(3)被害者が18歳未満である

被害者の性別が男女のどちらであっても罪に問われます。

3. 監護者性交等罪で弁護士ができること

監護者性交等罪に問われる際、相談すべきなのは法律に精通している弁護士です。法律に関して詳しいだけでなく、これまで扱ってきた案件で得た経験も踏まえながら、不起訴処分や減軽を目指して加害者をサポートします。なお、状況によって弁護士にできることは変わります。

(1)加害者が犯行を認めない場合

監護者性交等罪は非親告罪です。つまり、被害者やその親が告訴しなくても、警察や検察は独自に捜査・起訴することが可能です。このような特性は、被害者本人が被害の声を出しにくい性犯罪において重要なことですが、冤罪(えんざい)につながるおそれもあります。

このケースで弁護士ができることは、冤罪であることを示す証拠の収集、検察の証拠資料の不足や矛盾の指摘などです。これらを行い、不起訴処分を目指します。

(2)加害者が犯行を認める場合

加害者が犯行を認める場合には、被害者との示談交渉をサポートするほか、配偶者との離婚や親権に関する手続き、減軽を目的とした法廷戦略など、さまざまな面で加害者を援助することが可能です。

いずれにしても、監護者性交等罪を犯してしまったのであれば、早めの段階で弁護士に相談することをおすすめします。監護者性交等罪は非常に悪質な犯罪であるとみなされ、有罪となった際の刑罰は非常に重いものです。しかし、弁護士のサポートがあれば不起訴処分や減軽も見込めます。悩みを抱えている方は、弁護士へお問い合わせください。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2024年01月12日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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