強制認知の方法と手順。認知させて養育費をもらうには?
子どもができていながらも、交際相手の男性が結婚や子どもの認知を拒むことがあります。たとえ一人で育てていこうと決意しても、子育てには予想以上のお金がかかります。そんなとき強制認知という方法をとれば、相手に認知してもらい、養育費を請求することが可能です。
以下では、強制認知の方法や手続きの流れを解説します。
1. 強制認知とは
婚姻関係にない相手男性との間に子どもが生まれた場合、父親と子どもとの間で法律上の父子関係を設定するためには「認知」が必要です。
まずは、認知の種類と強制認知がどういったものかについて解説します。
(1)認知の種類
認知の方法には、以下の通りいくつかの種類があります。
- 胎児認知:子どもが生まれる前に認知すること。手続きには母親の同意が必要。
- 任意認知:子どもの出生後、父親が自発的に認知すること。父子関係にあることを証明する証しなどは不要。
- 遺言認知:任意認知のうち遺言による認知のこと。父親の死後に認知の効果が発揮される。
- 強制認知(裁判認知):父親の意思に関わらず、調停や裁判所の決定などによって強制される認知のこと。
- 死後認知:父親から生前に認知されなかった場合において、子どもが父親の死後に請求する認知のこと。
(2)強制認知とはどのような制度か
強制認知は前述の通り、父親が子どもを認知しない場合にとる法的手段のことです。
婚姻関係にある両親の間に生まれた子どもは、戸籍上父親の子どもと扱われますが、婚外子の場合、戸籍の上での父親とのつながりは確認できません。そのため、父親が認知しなかったり何も手続きをしなかったりした場合は、子どもの父親は「不明」のままの状態になってしまいます。
中には「結婚したくない」「既婚なので家族にばれたくない」など、勝手な事情から相手が子どもの認知を拒否するケースもあります。このような場合に、強制認知を行うことで、生まれてきた子どもが父親の都合だけで父のいない子どもとなるのを防ぎ、子どもの福祉を守ることができます。
(3)強制認知が必要な場合とは
強制認知を行うことで、父親には子どもに対して「親としての義務」が発生します。以下のようなケースでは、特に強制認知の手続きをおすすめします。
①養育費がほしい場合
父親に養育費を支払ってほしい場合に、強制認知を行い親子関係が成立すると、父親と子どもの間には「扶養義務」が発生するため、強制認知は非常に有効な手段となります。
「扶養義務」とは民法第877条に定められた、親族がお互いの生活を支え合う義務のことです。特に親から子どもに対する扶養義務は、親の生活の余力に関わらず自分と同レベルの生活を保障するという強い義務を意味します。
そのため、強制認知を行うと養育費の請求が可能になります。養育費をどこまでさかのぼって請求するかは基本的に両親の合意の上で決定することができますが、合意が成立しない場合は調停を申し立てた時点までさかのぼるのが一般的です。
②子どもに父親の財産を相続させたい場合
将来的に子どもに父親の財産を相続させたい場合も、強制認知の手続きをとっておくとよいでしょう。
法律上の親子間では「相続」が生じます。相続は、親が亡くなったときに一定割合の遺産を引き継ぐ制度のことですが、裏を返せば、父子関係が成立していれば自然と相続できるということでもあります。
ただし、相続する遺産には、現金や不動産のほかに借金やローンなどの「負の遺産」と呼ばれるものも含まれるため注意が必要です。父親が借金まみれであるといった場合は、父親が成人した子どもに扶養を求めてくるなど、子どもに余計な負担がかかってしまうので、強制認知は避けたほうがよいでしょう。
2. 強制認知までの流れ
子どもと父親の関係を証明し、相手男性に親としての最低限の責任を果たさせるためにも、事前に大まかな流れや強制認知成功のポイントを把握しておくのは大切なことです。
強制認知に至るまでの過程は、「認知調停申し立て」と「認知の訴え」の2段階に分けられます。
(1)認知調停申し立て
認知調停とは、父親に認知を求める手続きのことです。
いくら父親が認知してくれないからといって、いきなり訴訟を起こすことはできません。まずは、父親の住所を管轄する家庭裁判所か、父親と母親で決めた家庭裁判所に申し立てをして「認知調停」を行う必要があります。
認知調停を申し立てる際には、以下の必要書類を家庭裁判所に提出します。
- 認知調停の申立書
(参考:「認知調停」(裁判所)) - 子と父の戸籍謄本
- 1200円分の収入印紙
- 連絡用の郵便切手
子どもと父の戸籍謄本が申し立て前に取得不可能な場合は、申し立て後の追加提出でも構いません。また、連絡用の郵便切手は各裁判所によって必要額が異なるため、事前に問い合わせましょう。
住所管轄外の家庭裁判所に申し立てを行う場合は、上記に加え「管轄に関する合意書(父親と母親が押印したもの)」も提出します。
申し立て後、1か月程度で初回調停の期日が決まります。期日には、調停委員が申立人の次に相手方という順に双方の主張を聞く方法で、話し合いが進められます。1回の調停にかかる時間は約2時間です。
その後は、1~1か月半に1回程度のペースで新たな期日が設けられます。提出した証拠や双方の主張内容によって解決までの回数は異なりますが、おおよそ3~6回(3~8か月)かかる場合が多いでしょう。
調停で合意が得られた場合、裁判所から受け取る「審判書謄本」「確定証明書」と「認知届」を役所に提出することになりますが、合意に至らなければ、裁判所に認知の訴えを起こすことになります。
(2)認知の訴え
調停がまとまらなかった場合、裁判に移り裁判官の判断を仰ぎます。訴訟を申し立てる際は、訴状のほかにも以下の費用が必要です。
- 手数料1万3000円程度
- 郵便切手代
- DNA鑑定代(必要な場合のみ)
DNA鑑定は確実な証拠となるため行われるケースが多いですが、費用が10万円ほど必要になります。これらの費用は原則として申立人が負担し、裁判に勝った場合は相手方に請求することになります。
このほかにも、必要に応じて弁護士費用が発生します。費用を抑えるために全て自分で行うこともできますが、法的な知識が必要な場面が多く、弁護士に任せることが一般的です。
裁判が行われるペースは調停と同じく1~1か月半に1回程度ですが、長期戦になることを覚悟しておきましょう。
裁判を経て強制認知に成功した後は、「判決謄本」「確定証明書」を裁判所から取り寄せたうえで、「認知届」とあわせて役所に提出します。
(3)強制認知を成功させるために
強制認知を成功させるには、生物学的な見地から父子関係を立証することがなにより効果的です。
基本的にはDNA鑑定にて子どもと父の親子関係を調べますが、DNA鑑定することが不可能な場合、これまでの経緯や交際中のやり取り等に関する母親の陳述、証人尋問などで証明していきます。ただし、DNA鑑定に協力しない態度こそが父子関係を認定する証拠として捉えられることもあります。
強制認知は、認知を拒否する父親に「親としての責務」を果たさせ、子どもの福祉を守るための手段です。認知調停や訴訟は自分でもできますが、法律の専門知識が必要なため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2023年07月06日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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