- (更新:2022年11月28日)
- 裁判・法的手続
子どもが無断で高額契約! 契約を取り消す「未成年者取消権」とは?
令和4年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられることになりました。成年年齢が引き下げられたことにより、18歳以上の方であれば親の同意がなかったとしても、契約をすることが可能になります。
しかし、若年者の方は取引の経験や知識が乏しく、悪質な業者との間で不当に高額な契約をさせられることがあります。そのような場合には、未成年者であれば、未成年者取消権を行使することによって、契約の取り消しが可能となる場合もあります。
今回は、未成年者がした契約を取り消す方法について解説します。
1. 未成年者取消権とは
民法では、未成年者が親の同意を得ずに契約をした場合は、原則として、その契約を取り消すことができるとされています。これを「未成年者取消権」といいます。
未成年者は、成年者に比べて取引に関する知識や経験が不足していることから、悪徳業者などのターゲットにされやすい存在といえます。そのような未成年者を悪徳商法などから保護するための規定が未成年者取消権なのです。
未成年者が親の同意を得ることなく契約をした場合には、その契約が正当なものであるか不当なものであるかを問わず、未成年者取消権を行使することによって契約が初めから無効であったことになります。それにより、商品を購入した未成年者は、商品を返還しなければならず、商品を販売した業者は、代金を返還しなければなりません。
2. 未成年者取消権が無効となる条件
未成年者が親の同意を得ることなく契約をした場合には、未成年者取消権を行使することによって契約を取り消すことができますが、一定の条件を満たしていると未成年者取消権を行使することができなくなります。
未成年者取消権が無効になる条件としては、以下のものが挙げられます。
(1)18歳・19歳の方が契約をした場合
これまでは未成年者というと20歳未満の方でしたので、18歳・19歳の方が契約をしたとしても、未成年者取消権を行使することができました。
しかし、令和4年4月1日から成年年齢が引き下げられ、未成年者は従来の20歳未満から18歳未満に変更になりました。令和4年4月1日以降は、18歳・19歳の方がした契約に対しては未成年者取消権を行使することはできません。
したがって、今後は、18歳・19歳の方の財産を守るために、あらかじめ、信託、成年後見などを行う必要があると言えるでしょう。
また、18歳・19歳の方が、多額の負債を負った場合には、破産などを検討せざるを得なくなります。いずれにしても、弁護士や裁判所に早めにご相談をされたほうがいいでしょう。
なお、令和4年3月31日以前に18歳・19歳の方が契約をしていた場合には、成年年齢引き下げ後も未成年者取消権を行使することができます。
(2)詐術により契約をした場合
未成年者が自分を成年者であると偽ったり、親の同意を得ていると偽った結果、相手が誤信して取引を行った場合には、未成年者取消権を行使することはできません。これは、詐術を行った未成年者よりもだまされた相手方を保護する必要があるからです。
(3)取消権が時効になっている場合
未成年者取消権は、未成年者が成年になったときから5年または契約のときから20年を経過すると時効によって権利が消滅します。
(4)未成年者が婚姻をしている場合
未成年者が婚姻をしている場合には、法律上は成年とみなされることになりますので、未成年者取消権を行使することはできません。
3. 未成年者が契約を取り消すための手続き
未成年者取消権を行使して契約を取り消すことができるのは、法定代理人である親権者だけでなく未成年者本人でも可能です。
未成年者取消権を行使する方法については、法律上特別な決まりはありませんので、契約の相手方に対して、未成年者取消権を行使する旨の意思表示をすれば足ります。
しかし、口頭での意思表示では後日権利行使の有無をめぐってトラブルになることがありますので、配達証明付きの内容証明郵便を利用して書面による方法で行うようにしましょう。
未成年者取消権の行使によって、契約は取り消されますので、代金を支払う義務はなくなります。既に代金を支払ってしまっている場合には、相手方に対して代金の返還を求め、商品を受け取っている場合には、返品をします。
4. 消費者トラブルに遭った場合の相談先
未成年者の消費者被害などのトラブルに遭った場合には、以下の相談先があります。
(1)消費生活センター
消費生活センターでは、消費者と事業者との間の消費者トラブルについて、専門の相談員が相談を受け付けています。消費者トラブルに遭った場合には、消費生活センターに相談をすることによって、相談員から具体的な解決方法についてのアドバイスを受けることができます。
相談料は無料ですので気軽に相談をしてみるとよいでしょう。
(2)弁護士
弁護士は、消費者被害に遭った被害者の代理人として事業者と交渉をすることができます。単に未成年者取消権を行使するだけで問題が解決すればよいですが、事業者が代金の返還に応じない場合には、裁判などの法的手続きをとらなければならないこともあります。
このような専門的な手続きは、個人では適切に行うことが難しいといえますので、専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2022年11月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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