肖像権とは? 肖像権侵害の判断基準と具体的行為を解説
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1. 肖像権とは
「肖像権」とは、容貌(姿)などの肖像に関する権利です。他人の写真を勝手にインターネット上へアップする行為は、肖像権侵害にあたる可能性があります。
(1)肖像権の種類|人格権とパブリシティ権
肖像権には、「人格権」と「パブリシティ権」の2種類があります。
①人格権
自己の容貌などをみだりに撮影されず、またはその写真や映像をみだりに公表されない権利です。プライバシー権と同様に、本人のプライバシーを保護する観点から認められています。人格権は、一般の方も含めた幅広い人について問題になり得ます。
②パブリシティ権
氏名や肖像などが持つ顧客誘引力を商業的に利用する権利(財産権)です。主に著名人やインフルエンサーなどについて問題となります。
人格権またはパブリシティ権を侵害した者は、被害者に生じた損害を賠償する責任を負います(民法第709条)。
(2)人格権侵害の要件・判断基準
肖像権のうち人格権の侵害にあたるかどうかは、撮影による人格的利益の侵害が、社会通念上受忍の限度を超えるものといえるかどうかによって判断されます(最高裁平成17年11月10日判決)。
人格権侵害の成否を判断する際の考慮要素として、最高裁は以下の事項を挙げています。
- 被撮影者の社会的地位
- 撮影された被撮影者の活動内容
- 撮影の場所
- 撮影の目的
- 撮影の態様
- 撮影の必要性
など
(3)パブリシティ権侵害の要件・判断基準
パブリシティ権侵害は、専ら肖像等の有する雇用吸引力の利用を目的として、その肖像等を無断で使用する行為について成立します(最高裁平成24年2月2日判決)。
最高裁は、「専ら肖像等の有する雇用吸引力の利用を目的」としているケースとして、以下の例を挙げています。
- 肖像等それ自体を、独立して鑑賞の対象となる商品等として使用している
- 商品等の差別化を図る目的で、肖像等を商品に付している
- 肖像等を商品の広告として使用している
(4)肖像権侵害にあたるケース・あたらないケース
たとえば、以下のようなケースは肖像権侵害に該当すると考えられます。
<人格権侵害にあたるケース>
・著名人などではない一般人のプライベートな写真を勝手に撮影して、悪意のある加工をしてインターネット上にアップした。
<パブリシティ権侵害にあたるケース>
・著名人の写真を商品パッケージに付した上で、本人の許諾を得ずにその商品を販売した。
これに対して、以下のようなケースは肖像権侵害に該当しないと考えられます。
<人格権侵害にあたらないケース>
・著名人が公の場に登場した際の写真を無許可で撮影して、そのままの状態でインターネット上にアップした。
<パブリシティ権侵害にあたらないケース>
・商業目的ではなく、収益化もしていないウェブサイトに著名人の写真を無許可で掲載した。
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2. 肖像権を侵害された場合の対処法
インターネット上の投稿により、自分の肖像権が侵害されていることを発見したら、以下の方法によって対処しましょう。
(1)被害状況の把握・証拠保全
まずは、肖像権侵害にあたる投稿の内容を把握し、その証拠を保全しましょう。
証拠保全は、日付とURLを表示させた上でスクリーンショットを撮影するなどの方法により行います。投稿に用いられたアカウントの情報についても、記録・保存しておきましょう。
(2)管理者に対する削除依頼
肖像権侵害にあたる投稿については、投稿先のサイト管理者に対して速やかに削除するよう求めましょう。
SNSや匿名掲示板の場合は、サイト上に設置されたフォームから削除依頼を行うのが一般的です。ウェブサイトの場合は、管理者の連絡先や問い合わせフォームが掲載されていれば、そこから削除依頼を行いましょう。
削除依頼のフォームなどが設置されていない場合は、管理者の住所宛てに内容証明郵便を送付することも考えられます。
サイト管理者が削除に応じない場合は、裁判所に対して投稿削除の仮処分を申し立てることも検討すべきです。
(3)投稿者の特定・損害賠償請求
肖像権侵害によって具体的な損害を被っている場合は、投稿者に対して損害賠償を請求しましょう。
投稿者が匿名である場合は、損害賠償請求に先立って投稿者の特定が必要です。裁判所に対して発信者情報開示請求の仮処分申立てや、発信者情報開示命令の申立てを行うと、匿名投稿者を特定できる可能性があります。
(4)弁護士への相談
肖像権侵害への対応にあたっては、弁護士のアドバイスを受けるのが安心です。弁護士の役割や弁護士に相談するメリットについては、以下の記事をご参照ください。
3. 他人の肖像権を侵害しないための注意点
他人の肖像権を侵害しないようにするためには、他人の写真や動画を無断で撮影したり、その写真や動画を無断で公開したりすることを避けるべきです。
著名人に限らず、すべての人に肖像権が認められていることを踏まえて、写真・動画の撮影や公開にあたっては節度を守りましょう。
また、著名人やインフルエンサーなどの肖像を勝手に商品化したり、商品パッケージに載せたりすることは、パブリシティ権侵害にあたる可能性があります。
パブリシティ権侵害で訴えられると多額の損害賠償責任を負うことがあるので、他人の肖像を商用利用する際には必ず事前に許諾を得ましょう。
4. 肖像権に関するQ&A
(1)ネット上に自分の裸が載せられている場合も、肖像権侵害?
他人の裸の写真を無断で掲載する行為は、肖像権侵害に該当するほか、プライバシー権侵害・リベンジポルノ防止法違反・性的姿態等影像送信罪などにも該当します。重大な犯罪行為ですので、警察に相談しながら対応しましょう。
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(2)SNSのアイコンに自分の顔写真が使用されている場合も、肖像権侵害?
SNSのアイコンとして他人の顔写真を無断で使用する行為も、肖像権侵害にあたる可能性があります。
また、単に顔写真を使用するだけにとどまらず、本人になりすます意図がある場合には、その他の犯罪にも該当することがあります。弁護士や警察に相談しながら対応しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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