リベンジポルノは何罪? 法律上の刑罰や被害者のための対処法を解説
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1. リベンジポルノとは
リベンジポルノとは、どのようなものなのでしょうか。以下では、リベンジポルノの定義・特徴、深刻化する背景などについて説明します。
(1)リベンジポルノの定義
リベンジポルノとは、元交際相手や元配偶者などが性的な写真や動画をインターネット上で公開する行為をいいます。元交際相手や元配偶者への復讐や嫌がらせ目的で行われることが多いことから、「リベンジポルノ」と呼ばれています。
リベンジポルノ防止法では、「私密な性的な画像記録」を不特定または多数人に向けて公表する行為を規制しています。「私密な性的な画像記録」とは、以下のような画像や動画を記録した媒体になります。
- 性交または性交類似行為に関する姿態
- 他人が人の性器などを触る行為に関する姿態
- 性的な部位が露出された裸の姿態
なお、リベンジポルノには、元交際相手や元配偶者といった面識のある人だけでなく、まったく面識のない第三者に対する行為でも成立します。
(2)リベンジポルノが深刻化する背景
リベンジポルノの被害者は、自分の裸の写真や性行為の動画など絶対に他人には見られたくないものが、不特定多数の人に見られてしまうので、非常に大きな精神的苦痛を被ります。
特に、リベンジポルノはその性質上、拡散されてしまうケースが多いです。一度インターネット上に公開されてしまうと半永久的に情報が残り、被害者は一生消えない傷を負ってしまいます。
このようにリベンジポルノは、他のインターネット上での誹謗中傷とは比べ物にならないくらい深刻な被害をもたらすため、早期に適切な対応をとることが重要になります。
2. リベンジポルノで問われる刑罰
以下では、リベンジポルノの加害者が問われる可能性のある刑罰と被害者が刑事告訴をする場合の手続きの流れについて説明します。
(1)加害者の刑事責任
リベンジポルノに関する罪を犯した加害者は、以下のような刑罰が科される可能性があります。
①リベンジポルノ防止法
リベンジポルノ防止法では、第三者に公開することを承諾していない、性的な動画や画像をインターネット上に公開するなどの行為を禁止しています。
- 誰にも見せないという約束で撮影を許可した性的な写真や動画
- 恋人だけに見せるつもりで撮影した自分の裸の写真
- 第三者による性的な盗撮動画 など
これらをインターネット上で公開すると「公表罪」が成立し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
また、上記の動画や画像を拡散する目的で第三者に提供した場合には「公表目的提供罪」が成立し、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。
②名誉毀損罪
わいせつ画像や動画をインターネット上で公開されると、被害者の社会的評価が著しく低下してしまうため、名誉毀損罪が成立します(刑法230条1項)。
名誉毀損罪が成立した場合、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられます。
③児童ポルノ公然陳列罪
動画や画像の撮影対象者が18歳未満であった場合、児童ポルノに該当し、その動画や画像をインターネット上で公開すると、児童ポルノ公然陳列罪が成立します。
児童ポルノ公然陳列罪が成立した場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられます(併科あり)。
④わいせつ物頒布罪
わいせつな動画や画像をSNSなどで拡散すると、わいせつ物頒布罪が成立します(刑法175条)。リベンジポルノ防止法では、第三者が閲覧することについて撮影対象者が承諾したものであれば公開しても犯罪にはなりません。
それに対し、わいせつ物頒布罪では、公開した動画や画像がわいせつなものであれば本人の承諾があったとしても犯罪が成立します。
わいせつ物頒布罪が成立した場合、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは過料に処せられます(懲役と罰金の併科あり)。
⑤脅迫罪・強要罪・不同意性交等罪
裸の画像や性行為の動画があることを理由に相手を脅すと脅迫罪が成立し、脅して義務のない行為をさせた場合には強要罪が成立します。また、相手を脅迫して性行為を強要した場合は、不同意性交等罪が成立します。
それぞれの犯罪の法定刑は、以下のとおりです。
- 脅迫罪……2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 強要罪……3年以下の懲役
- 不同意性交等罪……5年以上の有期拘禁刑
(2)刑事告訴の手続きの流れ
リベンジポルノの被害に遭った場合、被害者としては刑事告訴をすることで犯人を処罰してもらうことができます。
①告訴の手続き
リベンジポルノ防止法の公表罪や公表目的提供罪は、親告罪であり、犯人を処罰してもらうためには被害者による告訴が必要になります。
刑事告訴は、以下のような手続きで行います。
- 告訴状を作成
- 告訴状を警察署に提出する
なお、告訴は口頭でもできるとされていますが、確実に受理してもらうためには告訴状を準備した方がよいでしょう。
②告訴後の流れ
警察に告訴状を提出し、受理されると警察による捜査が開始します。
警察は、リベンジポルノの公表などを行った犯人を特定し、逃亡・証拠隠滅のおそれがある場合には、犯人が逮捕されます。
そして、検察官が事件を起訴するかどうかを判断します。起訴されれば刑事裁判により有罪・無罪、有罪の場合の量刑が審理されます。
③公訴時効に注意
公訴時効とは、検察官が事件を起訴できる期間をいいます。リベンジポルノ防止法違反の公訴時効は、3年です。リベンジポルノがインターネット上で公開されたときから3年を経過してしまうと、犯人を処罰することができなくなるため注意しましょう。
また、リベンジポルノ防止法違反にあたる罪は、親告罪のため、犯人を知った日から6か月を経過すると告訴ができなくなってしまいます。
3. リベンジポルノの被害に遭った場合の対処法
リベンジポルノの被害に遭ってしまったときは、すぐに以下のような対処法をとりましょう。
(1)警察やセーファーインターネット協会へ相談する
リベンジポルノは犯罪です。インターネット上に自分の裸の画像や性行為の動画などがアップロードされていることに気づいたときは、すぐに警察に相談をしましょう。また、警察だけでなくセーファーインターネット協会に相談することも有効です。
セーファーインターネット協会は、インターネット上で拡散されているリベンジポルノ画像や動画の削除請求を行ってくれます。費用は無料なので、被害を最小限に抑えるためにも早めに削除を行ってもらいましょう。
リベンジポルノの相談窓口は?| 警察・弁護士・人権相談の対応
(2)刑事告訴をする
リベンジポルノ防止法違反にあたる罪は親告罪のため、犯人を処罰してもらうには刑事告訴が必要になります。警察に相談しただけでは捜査に動いてくれないので、必ず告訴状を提出するようにしましょう。
もっとも、告訴状の作成は一般の方では難しく、専門的な知識が必要になります。その後の捜査への対応も含めて弁護士に依頼するとよいでしょう。
(3)弁護士による法的措置を検討する
リベンジポルノの被害に遭ったときは、すぐに弁護士に依頼しましょう。弁護士に依頼をすれば、以下のような法的措置により被害を最小限に抑え、被害の回復に向けて動いてくれます。
①削除請求をする
リベンジポルノがインターネット上で公開されたときは、すぐに削除をしなければなりません。ただし、投稿者への責任追及を考えている場合、発信者情報開示請求や刑事告訴に備えて証拠を保全しておくことも重要です。
弁護士に依頼をすれば迅速に削除請求をするとともに、投稿者への責任追及に備えて、確実に証拠を保全してくれます。
②慰謝料請求をする
リベンジポルノが匿名の投稿であった場合、投稿者への責任追及のためには、まずは投稿者を特定しなければなりません。弁護士に依頼すれば、発信者情報開示請求により、リベンジポルノの投稿者を特定し、当該投稿者に対して、慰謝料を請求していくことができます。
発信者情報開示請求は、仮処分や訴訟などの裁判手続きが必要になりますが、専門家である弁護士に任せればスムーズに手続きを進めてもらうことができます。
なお、慰謝料請求には、3年の時効があるため、慰謝料請求をお考えの方は早めに行動するようにしてください。
③リベンジポルノに強い弁護士の選び方
リベンジポルノの事件を弁護士に依頼するなら、リベンジポルノに強い弁護士に依頼すべきです。弁護士によって得意分野が異なることから、リベンジポルノの経験が乏しい弁護士だと適切な対応は期待できず、対応が遅れてしまうリスクもあります。
そのため、リベンジポルノを弁護士に依頼するなら以下のような視点で弁護士を選ぶとよいでしょう。
- 法律事務所のホームページにリベンジポルノの解決実績が掲載されている
- 法律事務所のホームページにリベンジポルノに関するコラムが掲載されている
- 相談時にリベンジポルノの経験の有無などを尋ねる
- 相談時にリベンジポルノに関する質問をしてすぐに回答してくれる
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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