デマの拡散は逮捕される? 犯罪の対象となるケースや対処法を解説
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特定の企業に対する誹謗中傷、個人に対する根拠のない噂の拡散、事件や事故に関する虚偽情報の拡散などで世間を騒がすことがあります。このようなデマの拡散をすると、刑事事件として罪に問われるだけでなく、民事上の責任を問われる可能性もあります。
デマを拡散させるリスクを理解して、そのような行為は絶対にしないようにしましょう。
本コラムでは、デマの拡散が名誉毀損罪などの刑事犯罪に当たるケースや、デマを拡散してしまった場合の対処法を解説します。
1. デマの拡散で犯罪になるケースもある
悪ふざけでデマを拡散する人もいますが、デマの拡散は犯罪になるケースもあるため注意が必要です。
(1)犯罪の対象となるデマ拡散の事例
犯罪の対象となり得るデマの拡散には、以下のようなものがあります。
①特定の企業に対する誹謗中傷
- ○○社は食品の産地偽装をしていて、外国産を国産と偽っている
- ○○社は賞味期限の改ざんをして、賞味期限切れの商品を提供している
このような特定の企業に対する根拠のないデマを掲示板やSNSなどで拡散すると、名誉毀損罪や信用毀損罪などの犯罪が成立する可能性があります。
②個人に対する根拠のない噂の拡散
- 芸能人の○○は覚せい剤を常習的に使用している
- ○○は職場の女性と不倫関係にある
このような個人に対する根拠のないデマを掲示板やSNSなどで拡散すると、名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪が成立する可能性があります。
③事件や事故に関する虚偽情報の拡散
- 地震が起きて家屋の下敷きになっている、助けてほしい!
- 地震により動物園からライオンが逃げ出して、市街地を歩いている
このような事件や事故に関する虚偽の情報を掲示板やSNSなどで拡散すると、偽計業務妨害罪などの犯罪が成立する可能性があります。
(2)デマを後から削除しても罪に問われる
掲示板やSNSなどでデマを発信しても簡単に削除できることから、「後から削除すれば大丈夫だろう」と考える人もいるかもしれません。
しかし、デマを流したことで成立する犯罪の多くが、現実に被害が発生していなくても、拡散時点で犯罪が成立します。後から投稿を削除しても、犯罪の成否には影響はないのです。
また、匿名で投稿をしたとしても、IPアドレスやプロバイダなどから投稿者を特定することは可能なため、安易に書き込むのは禁物です。
(3)流しただけでなくリポストや「いいね」だけでも犯罪になる
SNSでは、投稿に共感・賛同する「いいね」機能や情報を拡散するための「リポスト」機能などが設けられています。
デマの拡散は、自ら投稿した書き込みだけでなく、違法なデマを内容とする投稿の「リポスト」や「いいね」をしただけでも罪に問われる可能性があり、注意が必要です。
2. デマの拡散で問われる刑事犯罪
デマの拡散により問われる可能性のある罪には、以下のようなものがあります。
(1)信用毀損罪
信用毀損罪とは、虚偽の風説の流布または偽計を用いて、人の信用を毀損したときに成立する犯罪です(刑法233条)。
- ○○社の商品はすぐに壊れる粗悪品だと掲示板に書き込む
- 飲食店の料理に虫を入れて撮影し、SNSに投稿する
このような企業や商品の評判を落とすデマの拡散をすると信用毀損罪が成立し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
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(2)偽計業務妨害罪・威力業務妨害罪
「偽計業務妨害罪」とは、虚偽の風説の流布または偽計を用いて人の業務を妨害したときに成立する犯罪です(刑法233条)。
また、「威力業務妨害罪」とは、威力を用いて人の業務を妨害したときに成立する犯罪です(刑法234条)。
- 地震で近くの動物園からライオンが逃げ出したとSNSに投稿する(偽計業務妨害罪)
- イベント会場に爆弾を設置したと掲示板に書き込む(威力業務妨害罪)
このような業務を妨害するデマ拡散をすると偽計業務妨害罪または威力業務妨害罪が成立し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。
(3)名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示して、人の社会的評価を低下させたときに成立する犯罪です(刑法230条1項)。
- ○○は職場の女性と不倫をしているとSNSに投稿する
- ○○は過去に性犯罪で逮捕された経歴があると掲示板に投稿する
このような個人の名誉を傷つけるデマ拡散をすると名誉毀損罪が成立し、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられます。
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(4)金融商品取引法違反
インターネット上の掲示板やSNSなどで企業の業績や商品に関するデマを書き込み、株価のつり上げを図るなどの行為をすると金融商品取引法違反となり、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられます(併科あり)。
また、株価操作を目的としたデマ拡散をした人には、刑事罰だけでなく行政罰として、課徴金の納付が命じられることもあります。
(5)侮辱罪
侮辱罪とは、事実を摘示することなく公然と他人を侮辱した場合に成立する犯罪です(刑法231条)。
名誉毀損罪と侮辱罪とは、事実の摘示の有無により区別されます。
- ○○は仕事ができず役に立たないとSNSに投稿する
- ○○はデブと掲示板に書き込む
このような特定の人物を公然と侮辱するデマ拡散をすると、以下の刑に処せられます。
【侮辱罪の刑罰】
- 1年以下の懲役または禁錮
- 30万円以下の罰金
- 拘留
- 科料
(6)その他の罪
軽犯罪法では、「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」に対して、拘留または科料に処する旨定めています(軽犯罪法1条31号)。
災害時に虚偽の救助要請などのデマを拡散すると、軽犯罪法違反になる可能性があります。
このように具体的なデマ拡散の態様によっては、刑法以外の法律に違反する可能性もあるため注意が必要です。
3. 刑事責任だけでなく民事責任も問われる
デマを拡散すると前述のような犯罪が成立し、逮捕や刑事罰などの刑事責任を問われるリスクがあります。
しかし、それだけでなくデマ拡散により他人に損害を与えた場合には、損害賠償という民事責任を問われる可能性があります。
掲示板やSNSを利用して匿名でデマを拡散したとしても、被害者が発信者情報開示請求をすれば、IPアドレスやプロバイダなどから投稿した本人が特定されてしまいます。
本人が特定されれば、被害者や代理人弁護士から内容証明郵便が届き、損害賠償請求が行われ、交渉で解決しないときは損害賠償請求訴訟を提起される可能性もあります。
4. デマ拡散をしないために
デマを拡散すると刑事責任や民事責任を問われるリスクがありますので、そのようなリスクを回避するには、デマを拡散しないための対策を講じておくことが大切です。デマを拡散しないためにできることとしては、さまざまなものがありますが、おもな対策としては、以下のようなものが考えられます。
【デマを拡散しないためのおもな対策】
- 情報源の確認
- 情報の信憑性を見極める
- 感情的な行動を控える
- 拡散前に立ち止まって考える
情報を発信する際には、デマである可能性も考慮して慎重に行動するようにしましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月10日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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