相続税の申告が必要なケース|申告の流れと必要書類、申告書の書き方

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相続税の申告が必要なケース|申告の流れと必要書類、申告書の書き方

相続税の申告を怠ると、加算税や延滞税のペナルティーを受けることになります。申告手続きの流れを正しく理解して、適切に相続税の申告を行いましょう。

1. 相続税の申告が必要になるケース

相続税の申告が必要になるのは、主に以下のケースです。

(1)課税対象財産が基礎控除額を超える場合

相続税には基礎控除が設けられています。課税対象財産が基礎控除額を超えない場合は、相続税が課されず、相続税の申告も原則として不要です。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

※相続放棄をした人も、法定相続人の数に含めます。
※養子については、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人の数に含めます。

これに対して、課税対象財産が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要となります。

相続税の課税対象財産には、相続財産、みなし相続財産(死亡保険金や死亡退職金など)、相続開始前7年以内に受けた贈与、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与などが含まれます。

(2)小規模宅地等の特例を利用する場合

相続または遺贈によって取得した土地が一定の要件を満たす場合は、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることで、課税対象財産の額を減らせます。

小規模宅地等の特例の適用を受ける場合は、相続税の申告をしなければなりません。

(参考:「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(国税庁))

(3)配偶者の税額の軽減を受ける場合

配偶者が取得する財産については、「配偶者の税額の軽減」を受けることで、以下のうちどちらか多い金額までは非課税となります。

  1. 1億6000万円
  2. 配偶者の法定相続分相当額

配偶者の税額の軽減を受ける場合も、相続税の申告が必要です。

(参考:「No.4158 配偶者の税額の軽減」(国税庁))

2. 相続税申告までに行うべき手続きの流れ

相続税の申告を完了するまでに、相続人が行うべき手続きの流れを解説します。

(1)相続財産と相続人の把握

相続手続きを進めるための前提として、まずは相続財産と相続人を把握する必要があります。

相続財産については、被相続人から生前に聞いていた情報や、遺品などを手がかりにして漏れなく把握しましょう。

相続人については、戸籍謄本類を取得して確認します。戸籍謄本類の読み方が分かりにくい場合は、弁護士にアドバイスを求めましょう。

(2)限定承認・相続放棄

亡くなった被相続人が多額の債務を負っている場合などには、限定承認または相続放棄を検討しましょう。

  • 限定承認:財産を相続しつつ、財産額の限度でのみ債務を相続します。限定承認はすべての相続人が共同して行う必要があります。
  • 相続放棄:財産と債務の相続を一切放棄します。相続放棄は各相続人が単独で行うことができます。

限定承認および相続放棄の期間は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内です。期間を過ぎると認められないおそれがあるので、早めに手続きを行いましょう。

(3)所得税の準確定申告

被相続人が亡くなった年の所得については、毎年の確定申告と同様の要領で、所得税の準確定申告を行う必要があります。

所得税の準確定申告の期限は、相続の開始を知った時から4か月以内です。

(4)遺産分割

各相続人が負担すべき相続税の金額は、実際の相続分に応じて決まります。そのため、相続税の申告を行うのに先立って、遺産分割を完了しなければなりません。

遺産分割は協議によって行うのが原則ですが、協議がまとまらなければ家庭裁判所の調停や審判を通じて行います。

なお、相続税の申告期限までに遺産分割が完了しないときは、暫定的に法定相続分に応じた税額を申告した上で、後に修正申告や更正の請求によって税額を修正します。

(5)相続税の計算・申告

実際の遺産分割の結果を踏まえて、相続税額の計算を行った上で申告書を作成し、税務署に提出します。

3. 相続税申告の必要書類

相続税の申告にあたっては、さまざまな書類を提出する必要があります。

必要書類は相続の内容によって異なります。以下に一例を挙げますが、これら以外にも書類の提出を要する場合があります。

<共通>

  • 相続税申告書
  • 被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本(相続開始の日から10日経過後に作成されたもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本(相続開始の日から10日経過後に作成されたもの)
  • 申告者の住民票
  • 申告者の個人番号確認書類
  • 申告者の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポート・医療保険の被保険者証など)

<遺言書がある場合>

  • 遺言書の写し
  • 検認証明書(公正証書遺言および法務局で保管されている自筆証書遺言については不要

<遺産分割協議をした場合>

  • 遺産分割協議書の写し
  • 相続人全員の印鑑証明書

<遺産分割調停が成立した場合>

  • 調停調書の謄本

<遺産分割審判がなされた場合>

  • 審判書の謄本
  • 確定証明書

<不動産を相続した場合>

  • 全部事項証明書
  • 固定資産税評価証明書
  • 名寄帳

など

<預貯金を相続した場合>

  • 預金残高証明書
  • 通帳のコピー

など

<生前贈与を受けた場合>

  • 贈与税申告書
  • 贈与契約書

など

相続税の申告書類の詳しい作成方法については、国税庁のウェブサイトなどをご参照ください。

(参考:「相続税・贈与税関係」(国税庁))

4. 相続税の申告に関する注意点

相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った時から10か月以内です。期限内に申告を行わないと、無申告加算税・重加算税・延滞税などのペナルティーを受けるおそれがあります。

税率
無申告加算税 納付すべき税額に対して5~40%
※納付すべき税額、申告のタイミング、過去に加算税を課されたことの有無によって税率が変わります。
重加算税(無申告時) 納付すべき税額に対して40%~50%
※過去に加算税を課されたことの有無によって税率が変わります。
延滞税 延滞税額に対して以下の割合による金額
納期限の翌日から2か月を経過するまで:年2.4%
納期限の翌日から2か月を経過した日以後:年8.7%

申告期限に間に合わなさそうな場合は、速やかに税理士へ相談しましょう。相続に関する経験が豊富な税理士に相談すれば、短期間でも適切に相続税の申告を行ってもらえます。

相続税の申告方法が分からず悩んでいる方は、税理士にご相談ください。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年08月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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