相続対策における3つの課題とは

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部
相続対策における3つの課題とは

生前にできる相続対策にはさまざまなものがありますが、大きく分けると「相続争い(争族)の防止」、「相続税の節税」、「相続税の納税資金確保」という3つに分類できます。高齢になってくるとできる対策も少なくなってしまいますので、相続対策をお考えの方は、早めに行動することが大切です。


本コラムでは、相続対策における3つの課題についてわかりやすく解説します。

1. 相続の問題点は大きく3つ

相続が開始すると亡くなった方の遺産は、相続人に引き継がれることになります。事前に何も対策をしていないと、高額な相続税が課税されることや、相続人同士で争いが生じることもありますので、生前にしっかりと対策をしておくことが大切です。

生前にできる相続対策としては、「相続争い(争族)の防止」、「相続税の節税」、「相続税の納税資金確保」がありますので、この3つの視点から適切な相続対策を考えていきましょう。

2. 相続対策その1:相続争い(争族)の防止

相続対策の1つ目は、「相続争い(争族)の防止」です。以下では、具体的にどのようなことができるのかみていきましょう。

(1)遺産分割時の争族対策の重要性

遺言書がなければ、被相続人の遺産は、相続人による遺産分割協議によって分割方法などを決めていきます。

しかし、生前に多額の贈与を受けた相続人がいたり、被相続人の介護に尽力した相続人がいたりするようなケースでは、法定相続分どおりの遺産分割では不満が出ることもあります。また、遺産が分配しやすい現金や預貯金であればよいですが、不動産がメインとなると分割方法をめぐって相続人同士で争いになることもあります。

このような相続争いが生じてしまうと、仲の良かった相続人同士の関係性が悪化してしまうことや、期限までに相続税申告ができないことで小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減の制度を利用できないなどのデメリットが生じます。遺産分割時の争族によるデメリットを回避するためにも、しっかりと対策を講じておくことが重要です。

(2)争族対策でできること

相続対策としてできることとしては、おもに以下の2つが挙げられます。

①財産をできる限り分割しやすい形にしておく

不動産など分割しにくい財産が多いと、争族が発生しやすくなります。そのため、生前に財産をできる限り分割しやすい形に変えておくことが有効な対策となります。

具体的な対策としては、以下のような方法が考えられます。

  • 不要な不動産を売却して、現金化する
  • 生前贈与によりあらかじめ相続人に渡しておく
  • 年金や保険商品を活用して、代償分割の際に代償金を確保する

これはあくまでも一例ですので、専門家と相談しながら具体的な状況に応じた対策を考えていくとよいでしょう。

②遺言を残す

自宅の土地・建物や自社株式などは、生前に手放すことができません。このような不可分で大きな財産がある場合には、遺言書を作成しておくことが有効な対策となります。

遺言書を作成しておけば、相続人による遺産分割協議よりも優先されますので、遺言書の内容に従った遺産分割を実現できます。これにより相続人同士の話が不要になるため、争族を回避することが可能になります。

ただし、相続人には、法律上「遺留分」が保障されていますので、遺言書を作成する際には、遺留分にも配慮した内容にすることが必要です。

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3. 相続対策その2:相続税の節税

相続対策の1つ目は、「相続税の節税」です。以下では、具体的にどのようなことができるのかみていきましょう。

(1)相続税の基礎控除とは

相続税の課税対象となるのは、相続財産の総額が相続税の基礎控除額を超える場合です。

相続税の基礎控除額は、以下のように計算をします。

相続税の基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

たとえば、父親が亡くなり、母親と長男・長女の3人が相続人になるというケースでは、相続税の基礎控除額は4800万円となります。すなわち、相続財産の総額が4800万円以下であれば、相続税が課税されることはありません。

(2)相続財産を減らす

相続税の負担を軽減するためには、相続財産を減らすことが有効な対策となります。相続税は、相続財産の金額に基づいて算定されますので、相続財産を減らすことができれば、相続税の負担も抑えることができます。

相続財産を減らす具体的な対策としては、以下のような方法が考えられます。

  • 生前贈与により子どもや孫に財産を移す
  • 生命保険の契約をして保険料の支払いで相続財産を減らし、相続開始時には「500万円×相続人の数」の死亡保険金の非課税枠を利用する

なお、生前贈与をすると贈与税が課税されますが、年間110万円までの贈与であれば非課税となります(暦年贈与)。そのため、長期的に暦年贈与を行うことで、効果的に相続財産を減らすことができます。また、相続時精算課税制度を利用すれば、2500万円まで贈与税の負担なく贈与できます。

(3)相続財産の評価額を引き下げる

相続財産を減らすのではなく、相続財産の評価額を引き下げることも相続税対策として有効な方法です。

たとえば、自宅の敷地など一定の要件を満たす土地であれば、「小規模宅地等の特例」の適用を受けることで、評価額を最大で80%も減額することが可能です。

また、不動産は、現金や預貯金に比べると相続税の評価額が低くなる傾向がありますので、現金や預貯金で相続財産を残すよりも、不動産という形で残しておく方が相続税の負担は少なくなります。

ただし、不動産を残す場合には争族(相続における家族同士の争い)対策との調整も必要になりますので、専門家である弁護士と相談しながら適切な対策を考えていくとよいでしょう。

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4. 相続対策その3:相続税の納税資金確保

相続対策の3つ目は、「相続税の納税資金確保」です。以下では、具体的にどのようなことができるのかみていきましょう。

(1)相続税の納税資金確保の必要性

相続財産の総額によっては、相続税対策を講じていたとしても相続税が発生するケースもあります。そのような場合は、遺産を相続した相続人が相続税の納税を行わなければなりません。

しかし、相続税の納税は、現金での一括納付が基本となりますので、相続財産が不動産などすぐに現金化できないものだった場合、相続税の納税資金が足りずに困ってしまうこともあります。

そのため、残された相続人が相続税の納税で困ることがないようにするためにも、あらかじめ相続税の納税資金確保の対策を講じておくことが重要です。

(2)相続税の納税資金を確保する方法

生前に相続税の納税資金を確保する方法としては、以下のような方法が考えられます。

  • 生前贈与の活用
  • 生命保険の活用
  • 退職金の活用
  • 現金化に時間のかかる不動産を事前に処分する

また、遺産を相続した相続人は、以下のような方法で納税資金を確保することもできます。

  • 資産を売却する
  • 相続財産を担保にして金融機関から借入をする
  • 金庫株の活用

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年08月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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