対物賠償保険とは?対象となるケース、補償内容と加入の必要性
- 交通事故
対物賠償保険は、対人賠償保険と並んで、自動車の運転者が加入すべき任意保険です。交通事故による損害賠償責任のリスクを正しく理解した上で、対人賠償保険とともに対物賠償保険にも必ず加入しましょう。
1.対物賠償保険とは?加入しなければならない理由
「対物賠償保険(対物賠償責任保険)」とは、交通事故の相手方が被った物的損害(物損)について、被保険者が負う損害賠償責任をカバーする保険です。
自動車を運行する際には、自賠責保険への加入が義務付けられています(自動車損害賠償保障法5条)。
しかし自賠責保険では、物損は一切補償されません。したがって、対物賠償保険に加入していないと、交通事故の相手の物損全額を賠償する責任を負ってしまいます。
交通事故の損害賠償は、物損に限定してもきわめて高額になるケースがあります。
<高額の損害賠償が認められた判決例>
- 神戸地裁1994年7月19日判決
→呉服・洋服・毛皮などの積荷に被害発生、認定総損害額2億6135万円 - 東京地裁1996年7月17日判決
→パチンコ店の店舗に被害発生、認定総損害額1億3450万円 - 福岡地裁1980年7月18日判決
→電車・線路・家屋に被害発生、認定総損害額1億2036万円 - 大阪地裁2011年12月7日判決
→トレーラーに被害発生、認定総損害額1億1798万円 - 千葉地裁1998年10月26日判決
→電車に被害発生、認定総損害額1億1347万円
上記の例のように、一生かけても払いきれないほどの損害賠償責任を負うリスクも否定できません。自動車を運行する際には絶対に、対人賠償保険と併せて対物賠償保険へ加入しましょう。
2.対物賠償保険の被保険者の範囲
対物賠償保険の被保険者(=交通事故を起こした際に、補償を受けられる人)の範囲は、保険契約の定めに従います。
一般的な対物賠償保険の被保険者の範囲は、以下のとおりです。
①記名被保険者(=契約車を主に運転する人)
②契約車を使用または管理している、以下のいずれかに該当する人
(a)記名被保険者の配偶者
(b)記名被保険者またはその配偶者の、同居の親族
(c)記名被保険者またはその配偶者の、別居かつ未婚の子
(d)(a)~(c)に当たる人が責任無能力者である場合、その親権者および監督義務者等
(e)記名被保険者の使用者(契約車を使用者の業務に使用している場合に限る)
3.対物賠償保険がカバーする損害の範囲
対物賠償保険によってカバーされるのは、交通事故の相手方に生じた物的損害のうち、事故との間に社会通念上相当な因果関係が認められるものです。限度額を設けることも可能ですが、無制限とすることが推奨されます。
なお、相手方に過失がある場合は、過失相殺によって補償額が減額されます。
(1)対物賠償保険によって補償される損害の例
対物賠償保険によって補償される損害としては、以下の例が挙げられます。
①積極損害
事故によって車両・積載物・建物・構造物などが破損した場合に、実際に支出した以下の費用などが補償されます。
- レッカー代
- 修理費用
- 買替費用(同車種、同年式、同タイプが原則)
- 建替費用
- 代車費用
- ペットの治療費
など
②消極損害
事故によって被害者が得られなくなった利益として、以下の項目などが補償されます。
- 休車損害
- 休業損害(店舗が休業した場合など)
- 評価損(事故車となったことにより、中古車市場での評価額が下落した場合)
なお物損事故では、精神的損害の賠償金である慰謝料は発生しません。
ただし、ペットが死亡しまたは重篤な障害を負った場合などには、例外的に慰謝料が発生し、対物賠償保険による補償の対象になることがあります。
(2)対物賠償保険の限度額|無制限に設定すべき
対物賠償保険には、保険契約の定めによって限度額を設定することができます。ただし、対物賠償保険の限度額は「無制限」とすることが強く推奨されます。
限度額を設定するメリットは、保険料の負担を抑えられることです。ただし、実際に交通事故が発生した場合には、限度額までしか保険金が支払われなくなります。
前掲のとおり、交通事故によって発生する物的損害は、1億円以上の高額に及ぶケースがあります。対物賠償保険の限度額を低く設定していると、それを超える部分が自己負担となり、一生かけても支払いきれないような損害賠償責任を負ってしまうかもしれません。
このようなリスクを避けるため、対物賠償保険の限度額は「無制限」としておきましょう。
(3)対物賠償保険には過失相殺が適用される
対物賠償保険によって補償されるのは、交通事故の被害者が受けた物的損害のうち、被保険者の過失割合に対応する部分に限られています。
たとえば、被害者に500万円の物的損害が発生した一方で、被害者に2割の過失が認められるとします。
この場合、被害者が受け取れる損害賠償額は、実際の損害額に対して8割に相当する400万円です。対物賠償保険から支払われる保険金額も、過失相殺による減額後の400万円までとなります。
対物賠償保険によって物損全額が補償される場合は、過失割合についても保険会社が被害者との間で示談交渉を行って取り決めるので、自分で何らかの対応をする必要はありません。
ただし、対物賠償保険に加入していなかった場合や、対物賠償保険の限度額を超える損害が発生した場合には、過失割合が重要な論点になり得ることにご留意ください。
交通事故の過失割合とは? 決め方と相手方との交渉等のポイント
4.物損事故を起こした場合に弁護士へ相談するメリット
対物賠償保険に加入していれば、物損事故の損害賠償に関する対応は、原則として保険会社に一任して構いません。ただし、保険会社の対応に何らかの不満がある場合には、弁護士に相談すれば対処法についてアドバイスを受けられます。
一方、対物賠償保険に加入していなかった場合は、物損を受けた被害者との間で、直接示談交渉などを行うことになります。対物賠償保険に限度額を設定しており、限度額を超える物損が発生してしまった場合も同様です。
これらの場合には、できるだけ早めに弁護士へ相談しましょう。弁護士のサポートを受けることにより、不相当に高額な損害賠償を強いられるリスクを避けられます。
交通事故を起こしてしまい、どのように対応すればよいか分からないときは、弁護士に相談するのが安心です。「弁護士JP」などのポータルサイトを活用して、交通事故に注力する弁護士を探して相談しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年10月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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