グローバルダイニングと都の裁判、異例のスピード結審。裁判長「今判断することに意味がある」

弁護士JP編集部

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グローバルダイニングと都の裁判、異例のスピード結審。裁判長「今判断することに意味がある」
結審後、記者会見に臨む長谷川耕造社長(左から2番目)と弁護団(3月14日 霞が関/弁護士JP編集部)

「モンスーンカフェ」など人気飲食店を展開する飲食チェーン、グローバルダイニングが時短命令を巡り、東京都に損害賠償を求めていた裁判が、3月14日に東京地裁で結審した。判決は5月16日15時より東京地裁526号法廷で言い渡される予定。

小池百合子都知事の「命令」が引き金に

争いの発端となったのは、2021年3月18日に小池百合子都知事が発出した「命令」。この頃、首都圏1都3県は二度目の緊急事態宣言下にあり、飲食店などに対して時短営業の「要請」が出されていた。都は要請に従っていなかった店舗に対して、新型インフルエンザ等特別措置法(以下、特措法)第45条第3項に基づき営業時間を短縮するよう命令。対象となった27店舗中26店舗が、グローバルダイニングの展開する飲食店だった。

グローバルダイニングは命令に従ったものの、憲法で保障された「営業の自由」の侵害だとして2021年3月22日に東京都を提訴した。また、都が同社への命令の理由として「(同社が)緊急事態措置に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発するおそれがある」などとしたことも指摘。いわば“見せしめ”の措置であり、表現の自由や法の下の平等も侵害されたとして、違憲性を争っていた。

これまでの裁判経緯は以下。

  • 2021年3月18日
    東京都からグローバルダイニングに対し時短命令
  • 2021年3月22日
    グローバルダイニングが東京都を提訴
  • 2021年5月21日~2022年2月7日
    第1~6回期日(口頭弁論、証人尋問など)
  • 2022年3月14日
    結審
  • 2022年5月16日
    判決予定

わずか1年で結審、異例のスピード工程のワケ

今回の訴訟は提訴から結審まで約1年という異例のスピードで進んだ。これについて、原告弁護団の水野泰孝弁護士は結審後の記者会見で、裁判長が「この事件は今判断することに意味がある」と発言していたことを明らかにし、判決への期待をのぞかせた。

また訴訟の争点について、同じく原告弁護団の倉持麟太郎弁護士は改めて以下2点を指摘。

  • ①特措法が憲法に適合しているのか(法令違憲)
  • ②2021年3月18日に発出された時短命令が違憲・違法か

このうち②については、表現の自由や法の下の平等が関わってくる問題として「(判決で)一歩踏み込んでくれたらなと思っていますが、そこは裁判所としても難しいのかなと思ってます」と見解を示した。

ただし今回の判決が出れば、都が時短命令の根拠とした特措法第45条第3項について、唯一かつ初めての司法判断になると指摘。特に、

  • 正当な理由がないのに(中略)要請に応じないとき
  • 特に必要があると認めるときに限り

に対する解釈は「今後の命令の発出にも非常にインパクトのある判決となるのでは」と期待を寄せた。

赤線部分が特措法第45条第3項(e-Gov法令検索より。一部加工)

グローバルダイニング・長谷川耕造社長は判決を前に、「(自身は)法律に対してはまったくの素人だったが、表現の自由、法の下の平等といったところで看過できないと思い裁判に進みました。(どんな判決が出るのか)非常に興味を持って2ヶ月待ちたいと思います」と語った。

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