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「自死しかねない攻撃」N国党ポスターで性的デマ拡散、被害女性が現・前参院議員ら5人に“1375万円賠償請求”の理由

「自死しかねない攻撃」N国党ポスターで性的デマ拡散、被害女性が現・前参院議員ら5人に“1375万円賠償請求”の理由
記者会見する大津綾香氏(8月31日 東京都内/弁護士JPニュース編集部)

政治団体「みんなでつくる党」代表の大津綾香氏が、8月24日~27日に、政治団体「NHKから国民を守る党」(N国党)の齊藤健一郎参議院議員や元参議院議員の浜田聡氏ら5名に対し、名誉毀損による損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所などに提起した。

訴状によると、2024年7月7日に投開票された東京都知事選挙において、N国党から立候補した山田信一氏と、「石丸幸人党」から立候補した石丸幸人氏らが、自身に割り当てられた選挙ポスター掲示板の掲示枠に、大津氏に関する性的な虚偽事実を含むアニメーション動画へ誘導するQRコードが記載されたポスターを掲示したとしている。

あわせて、SNS上で同動画のリンクを拡散した齊藤氏と浜田氏、および、動画を自身のYouTubeチャンネル上で公開した「中本店長」を名乗る人物が提訴の対象となっている。

なお、同様のポスター掲示をめぐっては、2026年6月、上記都知事選のN国党の立候補者であった福永活也弁護士が先行して提訴されており、今回の5名を加えて提訴対象者は合計6名となる。

都知事選で拡散された「事実無根の性的虚偽事実」

本件の発端は、2024年の東京都知事選挙にある。この選挙でN国党は関連団体等からの立候補も含め24名の候補者を擁立し、都内各所に設置されたポスター掲示板を利用した。

選挙期間中、大津氏の顔写真が無断で使用され、QRコードが印刷されたポスターが、都内に少なくとも2500枚以上掲示された。このQRコードを読み込むと、「中本店長」が運営するYouTubeチャンネルのアニメーション動画に繋がる仕組みになっていた。

動画の冒頭約2分には、大津氏が「SMプレイを内容とする政治資金パーティーを開き、その模様がYouTubeにおいて動画公開された」という、事実無根の性的虚偽事実が描かれていた。訴状によれば、大津氏は政治資金パーティーを開催した事実はなく、動画内容は全て虚偽である。

このポスター掲示行為については、2025年2月20日の東京地方裁判所の判決(N国党が原告となって大津氏を訴えた訴訟の裁判)において、「真実相当性のない名誉毀損行為」であり、大津氏に対する「人身攻撃・人格攻撃」であると明確に認定され、この判決は確定している。

5名の被告を個別に提訴

大津氏は、行為の態様に応じて5名を個別に提訴している。訴状によれば、各被告の行為と請求内容は以下の通りである。

(1)齊藤健一郎氏(現参議院議員)、浜田聡氏(元参議院議員)
2024年6月23日、両氏はそれぞれが管理するX(旧Twitter)アカウントで、問題の動画がまだ正式公開されていない段階でそのリンク先を投稿し、不特定多数の視聴者を動画閲覧に誘引したとされる。この拡散行為が名誉毀損にあたるとして、連帯して330万円の損害賠償を支払うよう求めている。

(2)山田信一氏(N国党党員)
東京都知事選挙の候補者として、自身のポスター掲示枠に問題のポスターが掲示されることを許容しただけでなく、ポスターを掲示する作業にも積極的に関与していたとされる。請求額は330万円。

(3)石丸幸人氏(弁護士)
山田氏と同様に都知事選候補者としてポスター掲示枠の利用を許容したことに加え、自身が運営するYouTubeチャンネルにおいて、問題のポスターを複数回映し出し、QRコードを大写しにするなどして動画の拡散を続けたとされる。請求額は合計385万円。他の被告らと同じ330万円にYouTubeでの拡散行為による損害等の55万円を加えたもの。

(4)中本店長(動画公開者、ハンドルネーム)
問題となった事実無根の性的虚偽事実を含む動画を制作し、YouTubeにアップロードしたとされる。請求額は330万円。

なお、齋藤氏・浜田氏・山田氏・石丸氏に対する提訴は東京地裁に行われ、「中本店長」に対する訴訟だけがその住所地を管轄する広島地裁に提起されている。その理由について原告側は、「中本店長」が東京で応訴することが経済的に苦しいと言ってきたためと明らかにした。

「自死しても構わないという卑劣な行為」

提訴後に行われた記者会見で、大津氏の代理人を務める石森雄一郎弁護士は、今回の提訴に至った背景について次のように語った。

石森雄一郎弁護士(8月31日 東京都内/弁護士JPニュース編集部)

石森弁護士:「大津氏に関し、根も葉もない性的虚偽事実をばらまいている。これは公人に対する批判とはいえない。きわめて悪質なものだと思っている」

さらに、一連の行為の背景には、当時、立花氏らがN国党の代表権をめぐり大津氏と対立していた状況があったことを指摘する。

立花氏は大津氏の自宅をYouTubeの動画で晒して住所が特定できるようにし、その直後から大津氏の自宅にパンフレットや代引き商品が送り付けられるようになった。また、N国党の関係者が大津氏の自宅の間取りをSNSで晒すなど、嫌がらせが激化していた。

そのような状況の中で、選挙ポスターにQRコードを付して掲示ないしは拡散する行為は、大津氏を精神的に追い詰める目的があったとの見方を示した。

石森弁護士:「被告らは、大津氏がSMプレイを内容とした政治資金パーティーを開いた事実などないことを知っていながら、動画を引用している。そういうことをすれば、やられた側がどういうことになるか、よく分かっていたはずだ。

人によっては最悪、自死してもおかしくないレベルでの誹謗中傷だ」

原告である大津氏は、提訴の意図について以下のように説明した。

大津氏:「選挙の場を利用して、デマや誹謗中傷が流布されるということが日に日にひどくなっている。今回の訴訟によって、こういった行為に歯止めをかける結果につながることを願って提訴した。

現参議院議員と前参議院議員、弁護士事務所を経営している弁護士、そういった人物が人格攻撃に加担していたという事実を、裁判所は重く見てほしい。今後繰り返されないためには、誰かが訴えなければいけないと考えた」

争点は、動画の内容を「真実と信じるにつき相当の理由」があったか

一般に名誉毀損は、内容が真実かどうかにかかわらず、他者の社会的評価を低下させる具体的な事実を公に示すことで成立する。大津氏のような公人に関する表現であっても、公人であることだけで免責されるわけではない。

摘示した事実が公共の利害に関し、専ら公益を図る目的で行われ、真実であることが証明されれば違法性が否定される。また、真実であると信じる相当の理由が認められる場合には、故意・過失が否定され、不法行為が成立しないことがある。

したがって、被告らが法的責任を免れるためには、自身が動画の内容を「真実と信じる相当の理由があった」ことを主張立証しなければならない。

ただし、本件動画については、上述した通り、既にN国党が大津氏を提訴した裁判において「真実相当性のない名誉毀損行為」であり、大津氏に対する「人身攻撃・人格攻撃」であると明確に認定する判決が行われ、確定している。

つまり、N国党が原告となった訴訟においてさえ、「事実の真実性」ないしは「真実と信じる相当の理由があったこと」の主張立証は、裁判所の採用するところとはならなかった。

そうであるにもかかわらず、被告らは「自分には、動画の内容が真実と信じるにつき相当の理由があった」との主張を裏付けるためにどのような立証活動を展開するのか。注目される。

立花氏への提訴は「いったん見送り」だが…

一連の名誉毀損行為の主導者とみられる立花孝志氏については、今回は提訴が見送られた。

石森雄一郎弁護士はその理由について、立花氏が今年3月11日に破産開始決定を受けており、訴訟を提起しても手続きが中断することになるためと説明した。

ただし、立花氏の破産管財人から訴訟を引き継ぐ意向が示されており、今後、大津氏と協議の上で提訴を検討するとしている。

また、都知事選でN国党から立候補した他の候補者についても、今後、訴訟提起を検討していることが明らかにされた。現状、それらの候補者らから大津氏に対する謝罪等は行われていないという。

  • この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいて執筆しております。

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