「落ちたら死ぬぞ!」氷結した山中湖でジャンプ、ダンス…危険行為が多発 氷が割れた場合、“救助費用”は本人負担になる?
富士山のふもとにある山中湖(山梨県)は、冬になると湖面が凍結することが多い。氷が薄く割れて落ちるなど事故の危険性があることから、湖を管理する立場にある山中湖村は凍った湖面への立ち入りを禁止している。
しかし、最近では写真撮影などのために湖面に入る観光客が相次いでおり、危険行為も多発しているという。
石を氷に投げる観光客も…
山中湖の氷は一見すると一面が凍結しているように見えるものの、厚さは5センチ程度にとどまるとされる。気温が上昇すれば氷はさらに脆くなり、人の体重や衝撃で割れる危険性が高まる。
万が一、氷が割れて湖に転落した場合、冷水による急激な体温低下で心停止(心臓まひ)を起こすおそれがある。氷の下に入り込めば脱出できず、命を落としかねない。
2008年には富士五湖の一つである河口湖で、凍結した湖で遊んでいた当時8歳の男児が氷が割れて転落し、死亡した事故が発生している。
それにもかかわらず、最近のテレビ報道では、立ち入り禁止の看板を見落としたまま湖面に入る観光客や「他の人が撮影していたから大丈夫だと思った」と答える観光客の姿が伝えられている。
さらには、湖面でダンスする男性やジャンプする女性、はては大きな石を氷に投げる男性の姿までもがテレビカメラに映されていた。
事故を未然に防ぐため、山中湖村の地元住民らは毎朝パトロールを行い、観光客に対して声をかけ、注意を促している。報道ではパトロール中の男性が「氷から上がれ」「落ちたら死ぬぞ!」と大声で呼びかける場面も伝えられていた。
また、2月5日、山中湖観光協会は「危険を犯してまで凍った湖の上に立ち入りたいですか?動画や写真を撮りたいのでしょうか?特に早朝、このような行為をたくさん見かけますが、薄く危険な氷の上は落ちたら命を落とします」(※原文ママ)と呼びかける投稿をXで行っている。
危険を犯してまで凍った湖の上に立ち入りたいですか?
— 山中湖観光協会【公式】 (@yamanakakokanko) February 5, 2026
動画や写真を撮りたいのでしょうか?
特に早朝、このような行為をたくさん見かけますが、薄く危険な氷の上は落ちたら命を落とします。
⚠️在湖上禁止入内⚠️ https://t.co/rugG8GT7cZ
もし氷が割れて落ちたら…救助費用を負担するのは?
もし観光客が湖に落ちて、命を落とす前に救助された場合、その救助にかかった費用はだれが負担するのか。
荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)によると、原則として、事故を起こした本人が救助費用を負担することはないという。
基本的に、山中湖のような「内水面」(海に面していない湖や川)で事故が起こった場合、救助の主体となるのは警察、または市町村の消防だ。そして救護活動は前者は警察官職務執行法、後者は消防法に基づいて行われるが、これらの法律には救助の対象者に救助費用を請求できる旨の規定はない。したがって、無償とするしかない。
「あくまでも、観光客を含む一般市民が危難に遭った場合に消防が救護活動をすることは、法律上当然の業務だと考えられているからです」(荒川弁護士)
しかし、前述したように、禁止されているのに湖面に立ち入るどころか、ダンスをしたり石を投げたりする観光客までいる始末だ。このような明らかな危険行為を行った人が事故に遭った場合には「自業自得」として、費用の負担を求めるべきではないのだろうか。
荒川弁護士は「たしかに、救助活動が、法律の想定する本来の業務の範囲を超え、過大な負担となった場合に限り、救助対象者に救助費用等の負担を求める制度設計は、あり得ます」と指摘する。
その場合、どのような問題が生じるのか。
「対象者に費用を自己負担させるには、法律や地方公共団体の条例による根拠が必要です。日本はあくまでも法治国家だからです。
その場合、まず、国民の予測可能性を確保する見地から、負担させるケースの要件を定めなければなりません。そうでなければ『けしからんから払わせろ』ということになりかねないからです。
また、支払わせるための手続きを、詳細かつ明確に定めなければなりません」(荒川弁護士)
どのような人であれ、一般市民が遭難した場合には、消防や警察は業務上、その人を救護する法的義務を負っている。その建前を崩すことは難しい。
しかし、残念ながら、その建前を逸脱する人がいることも確かである。そこで、法律・条例に明確かつ詳細な定めを設けることで、費用負担という形で一定の自己責任を負わせることは、法治主義の観点から許容される、ということのようだ。
取材協力弁護士
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