【安倍元首相銃撃事件】山上徹也被告「減刑署名」の“効果” 弁護士の見方は?
山上徹也被告が殺人と銃刀法違反の罪で起訴された1月13日、その減刑を求める1万1000筆以上もの署名が、市民グループによって検察庁などに提出された。
その量刑を巡っては、識者が各所で「死刑か、無期懲役か」など、さまざまな見解を示している。一方、事件の背景にある「旧統一教会」の問題が審理に与える影響にも注目が集まっているのが現状だ。
果たして減刑を求める一般市民の声が、山上被告の量刑に影響を与える可能性はあるのか。ベリーベスト法律事務所 奈良オフィスの吉﨑眞人弁護士に聞いた。
弁護士「重い判決が予想」だけど…
吉﨑弁護士は、山上被告の公判が「裁判員裁判」として審理されることから「まず裁判員裁判においても、量刑の判断に際しては『犯情』である犯行動機、犯行行為態様、被害結果等の犯罪の事実が、もっとも重要となります」と指摘する。
その上で、山上被告のケースではどうか。
「報道等で伝えられる限りでは、
①犯行が計画的
②事前に殺害の動機が明らか
③銃器類という殺傷能力が高い武器を用いて殺害行為に及んだ
④死亡という結果が生じた
のですから、量刑判断の中心である『犯情』では極めて重い判決が予想されます」(吉﨑弁護士)
「ただし」と吉﨑弁護士は続ける。
「量刑判断では、たしかに『犯情』で大枠が定まるのですが、それでも、まだ一定程度の判断に幅があり、その幅を調整するものとして『一般情状』があります」(吉﨑弁護士)
一般情状とは、被告人の反省、被害弁償の有無、再犯可能性の有無等、被告人の犯行後の態度等による更生の可能性に関する事情のことだ。これを踏まえて、減刑署名が山上被告の今後の量刑にどの程度影響を及ぼすかについて、吉﨑弁護士は以下の見解を示す。
「まず、検察が今後減刑署名に影響されて求刑を再検討することは考えにくいと思います。
次に裁判所の判断ですが、前提として、弁護人側から減刑署名を証拠として提出するのかどうかという点があります。仮に提出された場合は『一般情状』で、山上被告の社会での受け入れ態勢など、今後の被告人の更生面で積極方向に評価され、刑罰の幅の調整にプラスの影響を与える可能性も考えられると思います。
とはいっても、言うまでもなく、刑事裁判の中心は『客観的な事実を法に当てはめて量刑を判断するもの』です。減刑署名等、他者の多数決的な意思をもっぱら量刑判断に関与させるものではありません。
以上のことから、山上被告の裁判においても、減刑署名が展開・提出されてきた事実は、量刑を決める際の一般情状の中で『参考とされる程度』ではないかと考えます。といいつつも、もちろん、裁判員に減刑署名を印象付けるという事実上の影響はあるのではないかと思います」(吉﨑弁護士)
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