国会議員に「弁護士」何人いる? 米山隆一氏「あらゆる場面で経験が役に立つ」

弁護士JP編集部

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国会議員に「弁護士」何人いる? 米山隆一氏「あらゆる場面で経験が役に立つ」
召集中の通常国会は6月21日までを会期とし、論戦が交わされる(弁護士JP編集部)

23日に通常国会が召集されたが、国会議員の定員713人のうち、約5%が弁護士の肩書きを持つことをご存じだろうか。

「弁護士白書 2022年版」によると、2022年10月1日の時点で弁護士登録している国会議員は35人。稲田朋美氏(元防衛大臣)、枝野幸雄氏(元立憲民主党党首)、福島みずほ氏(社民党党首)、山口那津男氏(公明党党首)、米山隆一氏(元新潟県知事)ら、元閣僚や政党党首、自治体首長を務めた人物も名を連ねている。

弁護士登録をしている国会議員(日本弁護士連合会「弁護士白書 2022年版」〈https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/publication/whitepaper.html〉より) ※2022年10月1日現在

国会議員に「弁護士」なぜ多い?

立法機関である国会では、法律の専門家としての経験が少なからず生きるのではないだろうか。元新潟県知事で衆議院議員の米山隆一氏に、実務を通して感じていることを聞いた。

国会議員の仕事で「弁護士の経験が役立った」と思う瞬間があれば教えてください。

米山氏:国会議員の仕事は、基本「法律案の審議」ですので、出てきた法律を読み込むことができ、かつ、行政における運用―トラブル(問題点)―民事的解決―司法的解決の一連の流れをリアルに想像できるので、ほとんどあらゆる場面で役に立ちます。

また私は、野党側なので否決され廃案にはなりましたが、侮辱罪厳罰化法案の対案として「加害目的誹謗等罪」の法律案を、ほぼ独力で作りました。この時は、弁護士としての経験のみならず、司法試験を受けた際の「法学」の勉強が役に立ったと思います。

さらに、国会の委員会の質疑は一問一答形式で、特に大臣の責任追及の際などは尋問の経験は大いに役に立ち、昨年辞任された葉梨康弘法務大臣の更迭を総理が決めたのは、私の委員会質疑が決定打になったと、「風の噂」で聞いております。

国会議員に弁護士登録をされている方が比較的多い理由について、どのようにお考えでしょうか?

米山氏:まず国会議員の仕事は「法律案の審議」ですので、法律の専門家として知識・経験が役に立ち、かつ即戦力として国会内で活躍しやすい(プレゼンスを示しやすい)ことがあると思います。

求められる資質は微妙に異なりますが、対人交渉的な要素が大きいことは共通だと思いますし、比較的時間に融通の利く自営業であり、仕事を一定程度続けて経済的基盤を保ちながら当選前の選挙活動をできることも、大きな要素です。

また、候補者選定の段階で、「弁護士」はかつてほどではないとはいえ、やはり「名士」「エリート」として扱われ、有利になることもかなり影響していると思います。

【米山氏略歴】
1992年 東京大学医学部卒業。同大学院進学後、医師として働く
2011年 弁護士登録
2016年 新潟県知事に就任(2018年4月辞職)
2021年 衆議院議員に初当選

元閣僚や政党党首の略歴は?

今回は、弁護士登録している国会議員35人(2022年10月1日時点)のうち、元閣僚や政党党首にも焦点をあて、弁護士として活躍してから政界入りするまでの簡単な足跡について調べてみた(五十音順、敬称略)。

稲田朋美

大学4年生のとき「一番困難なことに挑戦しよう」と、弁護士になることを決意。当時政治にはまったく興味がなく、司法試験に合格後、弁護士となった。出産後は家事や育児に専念していたが、夫が購読していた新聞や雑誌を読むようになり、投稿を始めたところ、「南京大虐殺」の名誉棄損裁判(※1)を担当していた弁護士の目に留まり、同裁判の原告代理人となる。

2005年、当時自民党幹事長だった安倍晋三氏の依頼により、自民党の勉強会で裁判について講演をした。これがきっかけで、安倍氏から衆院選への出馬を打診され、政治の道へ進むことになった。

(※1)日中戦争の際、「2人の日本人将校が、戦地・南京で、どちらが先に敵兵を“百人斬り”できるか競っている」と報道された内容が、戦意高揚のための「虚偽」だったとして、第二次世界大戦後に処刑された将校2人の遺族が名誉棄損を訴えた裁判。稲田氏は遺族の代理人を務めた。

【稲田氏略歴】
1981年 早稲田大学法学部卒業
1985年 弁護士登録、弁護士として働く
2005年 衆議院議員に初当選
2016年 防衛大臣に就任(2017年辞任)

枝野幸男

自身の名前が、幕末生まれの政治家で「議会政治の父」とも言われる尾崎行雄に由来していることから、幼い頃より政治家を志していたという。大学卒業後に弁護士となり、3年後、日本新党が行った国内初の候補者公募に応募・合格し、同年の衆院選で初当選。当選後は「薬害エイズ問題」について国から原告への謝罪、和解の実現にも尽力した。

【枝野氏略歴】
1987年 東北大学法学部卒業
1990年 弁護士登録、弁護士として働く
1993年 衆議院議員に初当選
2017年 立憲民主党を設立、代表に就任(2021年辞任)

福島みずほ

大学卒業後に弁護士となり、夫婦別姓選択制、婚外子差別問題などに取り組む。日本弁護士連合会では「両性の平等に関する委員会」委員、「川崎市男女平等推進協議会」会長、「東京都エイズ専門家会議」委員などを歴任した。弁護士として11年働いた後、参院選に出馬し初当選した。

【福島氏略歴】
1980年 東京大学法学部卒業
1987年 弁護士登録
1998年 参院選議員に初当選
2003年 社民党党首に就任
2009年 内閣府特命担当大臣に就任
2020年 社民党党首に再任

山口那津男

弁護士を目指して大学法学部に進学し、26歳で司法試験に合格。司法修習を経て弁護士となった。都内の法律事務所で7年働いた後、日本弁護士連合会へ出向。庶民の生活に即した法律を政治家が作る必要性を感じていたところ、公明党からの衆院選出馬要請により立候補し、初当選した。

【山口氏略歴】
1978年 東京大学法学部卒業
1982年 弁護士登録
1990年 衆議院議員に初当選
2001年 参議院議員に初当選
2009年 公明党代表に就任

「法律の専門家」ならではの活躍を期待

弁護士登録している国会議員の経歴を調べてみると、政治家を目指す過程で弁護士になった人もいれば、弁護士の仕事をするうちに、政治家としての道が開かれた人もいた。

物価高、社会保障費の負担増、増税など、庶民の生活が深刻に圧迫されている今こそ、「法の専門家」たちが、法の力で状況を打開してくれることを期待する。

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